MT

ドビュッシー。
1曲目はRomance

最初は全部In tempoで通しました。
これは、何とも味わいがなく、各フレーズのテンポ設定を説明しました。

しかし根本的には、歌手のイメージによるところ大です。
各フレーズの言葉の意味と、そのイメージを考えた時に、書かれている音楽を勘案して自由にテンポの緩急をつけるべきです。
そうしないと、そういうイメージそのものが演奏に表現されて、お客さんのハートに届かないです。

つまり音楽と歌詞が織りなすイメージがあるかないか?ということに尽きるわけです。

ヴェルレーヌの3つの詩は「海は伽藍よりも美しい」から。
冒頭から厚みのあるフォルテの声で大変魅力的な演奏でした。
しかし、彼にとっては、やや低めの音域で声を張るせいか?中音域のピッチが少し低くなって声の明るさが時として失われる感じがありました。
これは理由としては、弱声になったときに息漏れ傾向のある声になることではないでしょうか?

弱声で歌う時も、必ず息漏れをなくしてきれいに声帯をトレースした声を心がけてください。

2曲目の「角笛の音は森に嘆く」
低音で始まる朗唱風のフレーズ、これも低音であるがゆえに息漏れが出やすいですが、なるべく息もれの無い声で、むしろ癖のある表現を意識してほしいです。
詩の内容にある、一種独特の気味の悪さを表していると思うからです。

そして徐々に音楽が高まり、後半で雪が降るイメージになったときの声の扱いや、ドビュッシー固有の転調による、不思議なフレーズの味わいを
明解に声で意識して表現するために、言葉のイメージ「雪」「血」「秋のためいき」「モノトーンの夕べ」などなど、イメージをしっかり作ってください。

3曲目「垣の列」
テンポが速すぎたので、遅めました。
若馬の活き活きとした動きにしても、海の白波の列にしても、どちらかというと遠景のように思えます。
テンポが速すぎると、ややリアルすぎますね。

この曲、前奏の音域の高さのせいか?声もポジションが高すぎて子供っぽい声になってしまいました。
男性は、ピアノのト音記号より1オクターブ低いことを思い出して、その音をイメージして声を出してください。

これで俄然、良い声になりました。
高音が一見出しづらいですが、実はその出しづらさの中に、彼の本当に良い高音発声の鍵が眠っていると思います。
ポジションを低くしたことで、声の幅が広がり低音まで滑らかにつながる声になったと思いました。