AS

発声練習は、ブレス時に喉奥を開ける、いわばあくびの状態を作ることを忘れないようにしてください。
そして、声の響き自体は、特に中低音では、声の響きを口の前に出すように意識した方が良いでしょう。
喉を開けようとするあまり、声の響きをいわゆる飲み込んでしまう状態になり勝ちだからです。
声がこもってしまうわけです。
この辺りの声の響き加減については、特に中低音域で飲み込まないように注意してください。
2点Eくらいから、この感覚は違う方向になると思います。

曲はフォーレの歌曲を中心に練習しました。

「リディア」「夢の後に」「河のほとり」3曲を練習しました。
声のことに及ぶ以前に、発音の訂正で終始しました。
語尾がEで終わる場合のあいまいな発音ですが、Eとは発音しないでその前のシラブルの口の形のまま、
舌が緩んで、結果的にあいまいな母音になるということです。

後は、子音のRとLの違いは明快にしてください。
Rは巻き舌になります。ただ、語中のRは、それほど巻く必要はないですが、Lとの違いは明快に意識して発音するように
してください。
あとは、FとVなど、下唇を噛む子音も明快にしてください。

外国語の発音は、とっかかりとしては歌詞にルビを振るのを否定はしませんが、
なるべく発音記号を読めるようになって、辞書で読みを把握できるようになってください。
譜面の歌詞にルビを振りますと、間違いが多発して、それを直せば直すほど、見た目が汚くなり、
訳が判らなくなると思います。
そういう状態では、歌にも集中しにくいと思います。

また子音発音の面でも、カナとアルファベットでは、意味が劇的に変わってしまいます。
カナ文字だと子音発声がおろそかになると思われます。
特にFやVなど、アルファベット文字固有の子音は、日本人のもっとも苦手とする所です。
これらの習得の面でも、カナでルビを振ることの弊害があり得るでしょう。

言葉は音楽の付属面ですから、その意味でも外国語を読むことの大切さを、くれぐれも理解して
勉強されるように努力して下さい。

TN

体験後の初レッスンでした。
全体に音程が良く心地よい声色であり、何ら問題の無い音楽的な声を持っています。
ただ、少し喉を必要以上に下げて発声することと、そのためか息漏れの傾向が少しあります。
そのため、声質が今一歩倍音がない響きで、通りが悪いのではないか?と思いました。
また、ブレスも持ちにくいと思いました。

ハミングを中心にした練習をしました。
ハミングで芯のある響きで、かつ音程の良い状態を作り、そこから母音に換えて発声練習をしました。
これだけでも、かなり明るい響きになりますし、息漏れも出ない発声になりました。

曲は、シューマンの「女の愛と生涯」から「彼は誰よりも素晴らしい人」で始めました。
全体に、冒頭に書いたように良い声で音程も悪くないのですが、声質がすこしこもって感じられます。
そのため、ピッチが微妙に低めなのだと思いました。

そこで、母音をIにして、Iの単母音で歌う練習をして、その響きをなるべく変えないで、
歌詞発音での歌唱練習に移行しました。
この曲は、確か?ホ調でロ音から始まりましたか。上側の主音の2点Eを出してから、ロ音で始まる
フレーズを歌い出すと、ピッチが高くなりクリアな声になりました。
また、フレーズで低音に降りる際にも、あまり声の響きを変えないように意識することで、平均的にピッチの高い
明るい声質で歌い通せました。

これとは逆に、フォーレのLes berceauxでは、ピッチを和音の下側の音から取りました。
音域が低いことと、調性がマイナーであることが、ピッチを下から取った理由です。
下から取る方が、肉厚な低音が出やすいですし、暗い雰囲気には合うと思います。

あとはフランス語の発音、特に単語語尾のEのあいまい母音の出し方、語尾のtを読まないことや、LとRの区別等々。
発音は、最初が肝心です。
それから、歌っている時に、発音のせいで、下顎を降ろしますが、このために軟口蓋が上がらないで、
喉が下がる方向だけの声になるために、響きが暗くこもることがあります。
なるべく、下顎を降ろさないで、舌を柔軟に使うこと、唇や頬もうごかすことで、軟口蓋が上がります。
このことを、母音の発音に使えるようになって下さい。

TC

久しぶりでした。
良く響く声と云うのは、やはり弦楽器でも同じですが、弓をしっかり弦に当てて、
良く響かせるように、声も良く鳴らすためには、この良いポジションを見つけて当てることが大切です。

ただ、このために音程を下からずり上げるアタック(アインザッツ)が多用されますと、
音楽の表現に偏りが感じられますので、注意が必要と思います。

今回練習した曲では、例えばプーランクのLes chemins qui vont a la Merの中間部の
ワルツ部分のCheminsと跳躍する所など、少ししつこい感じがしてしまいます。

また次に練習をした、フォーレのNotre amourのカデンツの2点Aに昇る部分。
これも、良い当った響きで高音発声するために、少しずり上げる要素があります。
これも一概に悪くないですが、やや目立ちますので、すり上げるとしても、処理を速くすることで
目立たなくすることが、これらの歌曲の品の良さに貢献すると思います。

ちょっとしたポイントなので、この当て具合を変えてしまうと、途端に調子が悪くなることも
ありますので、無理に変えなくても良いですが、音楽表現の一つになりますので、その扱いには
注意されて下さい。

フォーレの月の光は、細く鋭い声の色があって、とても良かったです。
2点G辺り、例えばToute en chantantの高音の声など、柔らかく歌い廻せた時の表現に
フランス歌曲らしい優美さが感じられることがあります。
張った声だけではない、高音発声も研究される価値はあるのではないでしょうか?

そのことで声の表現に大きな幅が生まれると思います。