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全体に声に抑制感が出てきたために、音程、発音が明瞭になりました。
また声が軽やかなので、リズム感も良い歌になって来ています。
これに加えて、音楽の構成感や言葉の表現に絡めた、テンポの緩急を更に付けて行くと、演奏がより立体的なものになります。

プーランクの「ガルシア・ロルカの3つの唄」から始めました。
全体にテンポがもったりとなっていたので、その点を整理整頓となりました。

理由は、歌もピアノも、両方で寄りかかる傾向があるのかもしれません。

歌がテンポを歌い進む、と云うのは意外と難しい物で、無意識でピアノの音楽に寄りかかってテンポが重くなることもありますし、
ピアノが、歌に遠慮しているとピアノが歌に着いて行こうとするために、どんどん遅くなってしまうこともあります。

一番良いのは、勿論両者でテンポを決めますが、演奏に入ったら、なるべくお互いに、気にしないで、
マイペースでどんどん歌い進んで行くことです。
しかし、基本はピアノ伴奏だと思います。ピアノが確実にIn tempoで弾くことでしょう。それが基本であり、
その上で、歌手の力量に応じて、揺らぎが必要になりますが、主導権はピアノでしょう。

1曲目は、淡々と歌って遅くルバートな演奏に絶対にならないようにしてください。
2曲目は、民謡のリズムなので、テンポ指示通り、In tempoで軽快に歌うべきです。
3曲目は、テンポ感が良かったです。
出だしのBucherontのyの半母音は、口を開けて、広い響きにすると、フォルテの声が生きます。

同じくプーランク、ティレジアスの乳房は、全体に音楽がすっきりし、声も音程感が良く発音もかなりクリアになりました。
ここまで来たら、最初のテンポをもう少し速めて緊張感を出して始めたほうがよいでしょう。
また、狭いサロンで演奏するのであれば、テンポの緩急ももっと付けて、立体的な演奏をしないと、退屈してしまうでしょう。

高音が、時々落ちた響きで叫んでしまうところは、徹底して改善してください。
恐らく、ブレスの配分が上手く行ってないのではないでしょうか。

シャブリエのL’etoileのクプレ2曲、狂言回し的な愉快な曲です。これも、テンポの緩急の使い方で、演劇性が出るので
メリハリを充分付けると、更に面白い演奏になると思いました。

ファウストのテュレの王は、これもテンポのメリハリを充分つけてください。
出だしのレシタティーヴォは、少し神秘的な雰囲気で、真っすぐでビブラートのあまり出ない弱声で始めると良いでしょう。
テーマの伴奏が終わってからの、糸巻きの歌の部分は、糸巻きのテンポ感で、声を戻して明るくしっかり歌い込んで下さい。
諸所に出て来る、我に返って語る部分は、素早く語り、再び糸巻きの歌との対比をしっかり出して下さい。

宝石の歌も、テンポの緩急は大事です。出だしの伴奏から興奮したマルガリーテの様子は、テンポで良く出ますが、
途中でふっと我に返る感じなど、テンポの間合いを取って、歌うと、立体感が出て、お客さんが惹きつけられます。

ファウスト、もう一つのアリア「糸紡ぎの歌」は、内なる情熱が徐々に出て来る音楽が良いのですが、中音域の声が、
まだ口の締まりが硬いために、独特のPops的な声色になる点が気になります。
発声が喉で押さない声になって来たので、それは良い傾向ですが、上あごや唇を使った顔面上半分に響いを意識出来ると良いです。
喉の深さと上あごから上の響きとのバランスです。喉を押さないで脱力するあまり、浅くなっているかもしれません。
地声が絶対混ざらないように、と思い過ぎない方が良いかもしれません。