UKさん

今日はイの母音で中低音を中心に軽く声を温める程度にして、早速新しいアリアを聞かせてもらった。
ドニゼッティの「アンナ・ボレーナ」から「私の生まれたあのお城」アリア部分だけ。
これはほとんど言うことがなかった。
というか、今日は褒めるばかりで教えることがなかった。
それくらい、彼女の良いところばかりが目立つレッスンだった。

彼女は低音~中音域も大分声が聞こえるようになってきたのである。

完璧という意味ではなく、彼女が今持つ良いところだけが浮き出るようである。
なるほどソプラノならこれで良いや、というくらい、良いところに共鳴が出て
中低音域も今日の曲なら仕方ないくらいの響きである。

彼女の声の乗りは2点G~bにかけてあるのだが、良い共鳴が付くと、大きな波のような揺れが響きに出てくる。
ビブラートではなく、波、である。
これが、心地よい響きを生み出している。

芳しさ、女性らしさ、美しさ、ソプラノの美しさはこういうところにあるのだな、と感心した。
こちらが勉強させてもらうようである。

次は、La traviataからAddio del passatoを。
これは、強く在るべき所の強さは、彼女には少し荷が重い感じもあるが、メッザヴォーチェで出だす最初の有名な旋律も綺麗に美しく歌えている。

テバルディの古いLPレコードを一緒に聴いてみた。
当たり前だけど素晴らしすぎて、比較しようがないが、オペラアリア特有の歌いまわしは勉強になる。
しかも聴いてから歌ってみると確かにこれが良い影響を与えるから不思議なものである。
だからといって、聴けば良いというものではないことも論を待たないので注意が必要だ。

曲の終わりの長く引くイの母音は細く糸のようにという意味である。Un fil di voceとは。

メッザヴォーチェ、PPの声の響き、フォルテの強さ、これらを良く使いこなせる声の幅が欲しい。
それでも、彼女なりに充分表していて好ましい。

時間が余ったので、イタリア古典からGia il sole dal Gange
とPaisielleのIl mio ben quando verraこちらは初めてである。
良い曲で、これも勉強させてもらった。

以前の彼女は確かに2点G以上の声にようやく響きが付いて笛のように綺麗だったが、
そこから下のバランスが悪くて、どうもイメージがもう一つであった。
しかし、今日の彼女の声はその域をはるかに超えて下の領域も上手くバランスよく響いて、全体に滑らかでソプラノレッジェロらしい良い声を会得しつつある確かな実感を得られた。

いつの間にか急激に成長した感じである。特に中低音が声が奥まって引っ込まないのが大きい。
声量はなくても響き構えに出てくればそれだけで良いのである。
高音は今の声を伸ばして欲しい。
とても良くなったよ。おめでとう。