MT

声を温める程度に発声練習をして、早速伴奏付きでプーランクのBanaliteを練習。
1曲目の「オルクニーズの門」は、テンポ、声は良い。
表現として、ト書きの部分と門番、乞食、荷車引きの3者のキャラクターの違いをイメージした。
少なくとも門番は、荷車引きや乞食より、一見偉そうであること。
そしてト書きは、明快に喋ること。
乞食や、荷車引きには哀れさが漂う。

「ホテル」は、指示より遅いくらいゆったり感を大切に。
歌は、とても良い、ポルタメントを上手く取り入れている。
最後のJe veux fumerは、ゆったりと終わろう。

ヴァロニーの沼地は、テンポは指示通りが良い。ピアノ伴奏はフレーズを長く取ることと、滑らかに十分ペダルを駆使すること。
テンポ感良く喋るということは、爽やかで明快な表現の音楽、と思うべきであろう。

「パリへの旅」これも上手に歌えた。よく表現していて積極的であった。伴奏はシャンソン伝統のミュゼットなので早くてもカッチリ弾けるテンポで留めるべきだろう。

「すすり泣き」これはアンサンブルの組み立てを丁寧に。
基本テンポは良いので、最後のパートである、ainsi vont toutes chosesからのテンポは重く、切なく歌ってほしい。

全体に良く歌えているが、少し喉の開きが小さい印象がある。喉そのものの使い方は上手いので、
もう少し気道とか軟口蓋とか、開いて共鳴を持たせる意識を発声に利用してみてはどうだろう?

WH

彼女も声は出来上がっていたので、発声は軽くやって直ぐに終わった。

曲の練習は、以前取り上げて未完成だったToscaのVissi d’arteとLa bohemeのDonde lietaを。
Vissi d’arteは、高音がクリアにすっきりして良くなった。
以前は、高音の発声でチェンジを意識しすぎ、いわゆるVoce bianca「白い声」になる傾向があったのだが、それがすっかり改善された。
確かに喉を使うといえばイメージ悪いが、最初から絶対使わないで、と思うと、息も弱くなるし、下あごを悪く使うし、良い癖がつかないと思う。
まずは使ってから、悪いところを削って行っても、こちらがきっちり見ていれば喉は絶対悪くしないので、安心してもらいたい。

中間部の間奏のテンポ、そして歌の入りには要注意。
彼女は、次のDonde lietaもそうだが、高音のチェンジ前後の2点F前後で、声が浅くなるので、良く喉を開いて息をしっかり使って声を前に出すように。
引いてしまわないように。彼女では練習しなかったが、今度はハミングでこの辺りを練習したい。

Donde lietaは、テンポの動きが判りにくいので、基本テンポを抑えておくことから、徐々に動かして考えるべきだろう。
なんとなく録音を聴いて音を取ると、ピアノ伴奏と合わせにくいことになるから、録音勉強は、面倒でも音とり程度に考えるべきである。
リズムはなるべく自分できっちり取れるようになってほしい。
これも高音発声はとても明快で良くなった。

最後に「サムソンとデリラ」のMon coeur s’ouvre a ta voixを一通り通した。
Samsonは、フランス語だとMの発音がなくなる。
明快にメゾの曲だが、この曲でも満遍なく声が出るところは美点だと思う。
それがもしかすると高音でチェンジが大きくなり易い原因かもしれないが、その逆であれば中低音が出ずに悩むことになるので、結果は同じことだと思う。
悪いことではないので、練習次第で弱いところを伸ばしていくことが大切だろう。

発声だが、白い声は改善されたが、下あごを出す癖は改善した方が良いと思う。
上あごを上げること、下あごは下ろし過ぎないこと、を一つの目標に考えてもらいたいと思う。

HN

呼吸の練習を軽く、胸を気持ち良く開いてゆったりと深く吸い込む練習から始めた。
その後、発声練習を30分ほど行った。
母音で下降形から始めて、最終的にはハミングで高音へのチェンジの発声をした。

高音へのチェンジ近辺は、息の支えがなくなってファルセットになりやすい。
そこで、ハミングで響きを前に集めるようにして、なるべく高音まで持ち上げて行く練習をする。
ハミングなので、母音発声ほど喉を締めないで済むし、またファルセットかそうでないか?という区別もつきやすい。

音程を気にすると、喉が上がってファルセットになり易いから、下あごを下げるようにすると、喉が上がりにくい。
また、姿勢で顎を引いていることも良いだろう。
要するに、喉側で声帯を下に引っ張り、軟口蓋側で声帯を上に引っ張ることで、伸ばすわけである。
この練習による発声で、なるべくファルセットにせず、かつ胸声だけの声にならない中間の当たりの声、がレッスンのテーマとなった。

歌は続けて練習しているVittoria mio coreから。
ここでも、やはり高音のブレスが長いところでは、声がファルセットになり易い。
ブレスが足りないようであれば、ブレスを入れても良いから、ファルセットにならないように。
中間部の高音さえ、力み過ぎないでブレスを上手く使い回せれば、ほぼ出来上がりで良いと思う。
息が足りなくなるのは、単にブレスの入れ方だけではなく、喉が上がってしまう発声のせいが大きいので、喉が上がらないようにブレス、発声というところも良く検証してほしい。

最後にStar vicinoを練習して終りにした。こちらもまったく同じ内容。ハミングで前に集める響きで、かつピッチが良いこと。それを作ってから、母音、そして歌詞でという具合。
声は今は抑えないで、この響きの質とピッチだけで出来ること、そしてブレスが自然に入って持つことが両立できれば、目的は達成と思って良いだろう。