UM

シュトラウスのスプリング・ソングを持って来たので、とにかく通して聴かせてもらいました。
特に高音域がもろに太く当ってしまい、絶叫になってしまいます。
頭声は出ているのですが、頭声の上にかぶさるように中声区の当りが出てしまい、結果的に苦しくなります。
音程も♭気味になってしまいます。

それでファルセットを練習しました。
これがとても苦労して、なかなか理想通りに行きません。
どうしても、喉の、ある部分の使い方に癖があり、太く当ってしまいます。
小さな声でハミングの練習をしますが、声を出そうと思うだけで、喉に力が入ってしまうようです。

しかし、最終的にはハミングで軟口蓋から声を出だすような出し方が出来ました。
ただ、まだ定着はしていないようです。
ちょっとの違いで、元に戻ります。

ファルセットを練習する意味は、声帯を細く鋭く当てた、声の出し始めが出来るようになることにあります。
ファルセットそのものが目的というわけではないのです。
現状では、声の出し始めで太すぎる当りが出てしまうため、息も強く使わないと出せない結果になっています。

今日は、ここに至るまでだけで1時間かかりました。
自身で練習する時も、音程の正しさを頼りに、なるべく喉で当てない、鼻腔から軟口蓋だけで小さな音程の良い響きが出せることを目指して下さい。
また、それがうまく行くと、お腹の力で息を流すことでフレーズを作れるでしょう。
本当はお腹を意識しなくても良いですが、喉の力を抜くために、わざとお腹の力で息を流すように歌うと良いのです。

TSS

発声練習は、スタッカートも交えて練習しましたが、安定していました。

声のチェンジのさせ方は間違っていませんが、声質というものの特質を捉えて欲しいのです。
発声に関わりますが、口を横開きにすると、確かに出し易さはありますが、声の響きが浅くキンキンした響きになり勝ちです。
特にチェンジ近辺はこの点を注意して下さい。
ただ、口を立て開きに、というと、皆さん下顎を出して喉を掘ってしまい勝ちなので、この点は注意してください。
むしろ上唇を持ちあげるように、口を開けると自然に縦の口の開き方になるでしょう。

モーツアルトAve verum corps
2点Fの響きで喉が上がるため、フレーズの滑らかさが軽減してしまいます。
2点Fはチェンジポイントなので、発声に注意してください。
特に喉を上げないようにするため、響きを前に出さないで後頭部に廻すように発声することが、フレーズを滑らかにするコツになるでしょう。
特にA~Veの跳躍です。他の所でも応用が効くでしょう。

最後のImmortisの長いフレーズは、伴奏次第で、一息で歌えるレベルになりました。
発声としては、これも2点Fのチェンジポイントなので、2点Fに跳躍したmoの発声が決まれば、自然にクレッシェンドして一息で終われるように出来ていると思います。この2点Fの発声で息を吐いてしまう発声は、一見良さそうですが、間違いです。

ヘンデルDank sein Dir Herr
ドイツ語の発音は、しっかりすることと、ほどほどにすることのバランスが大切です。
出し易いことに気を付けること。出したつもりが出てないことが多い事。特に語尾の子音は、大切にしましょう。
声は良いと思いました。

Bist du bei mir
ソプラノがこの曲を歌う場合、チェンジ近辺が多いので、声の響きがキンキンしないように跳躍する際に気をつけて下さい。
それから、この曲のドイツ語も同様に、母音のIで、口を横開きにしないでください。
口を丸くして発音するのがコツです。

モーツアルトの「ハレルヤ」は、良く歌えていると思いますが、本人は不満のようでした。
細かい音符のメリスマは、チェンジから上は、声帯が開き過ぎた発声だと息漏れが多いために、支えが感じられず、歌い難く感じると思います。
彼女の場合は、声帯が開いた発声なので、共鳴腔の拡がりをコントロールした発音を心がけることで、共鳴を誘う発声が出来ると思っています。これが出来ればメリスマももっと楽に出来るようになるでしょう。以前、Rejoice greatelyを練習した時に、方法は教えたと思います。

TK

発声練習で気づいたのは、Jajajajaを下顎を動かさないで練習すると、喉に来ることでした。
これは、やはりまだ喉を使った発声になっている証拠なのです。
喉が温まっていない時は、この発声をすると、スカスカ響きになるくらいの喉の使い方がちょうど良いのです。

Hahnの歌曲、2曲を母音で譜読み、そしてフランス語の発音を練習しました。
1曲目は、Paysage
フランス語は、リエゾンは語尾の読まない子音が、次の単語の語頭が母音になると、読まれるようになる、ということは覚えてください。
ただし、これも例外がありますが、今は例外は覚えなくて良いです。
フランス語の読み方は、原則を覚えておいて、例外は後廻しで良いです。

リエゾンの特徴は、鼻母音の場合、リエゾンしなければ鼻母音ですが、次の単語の語頭に母音がくると、これもリエゾンしますが、
Nからリエゾンするため、鼻母音がほぼ消えること。
例えば、Que+On+entendは、コナンタンとなりますが、この場合、鼻母音発音になるのあ、一番最後のシラブルだけ、ということです。
要するにリエゾンとは、母音が重なれば単母音化し、無声子音+母音は有声子音化し、鼻母音はNの発音が発生化する、ということになります。

最後にMaiを練習しました。
リエゾンですが、母音で挟まれる場合は、濁ります。Depuis un moisなどは良い例ですね。
Depuisのsは、単体では読まれませんが、リエゾンするために読みます。しかしその場合、母音にはさまれるのでSが濁ってZになります。
FleuriやSeulは、発音記号がoeであり、思ったより広い母音の形です。ただし、seulementは、狭くなります。

WN

今日は、前回と近い日程だったせいか?抜群の効果が出て、恐らく今までの中では最高の出来となりました。
今まで積み上げて来た訓練が、ここで一気に開花した感じです。

前回、厳しく指示した下顎を良く降ろして発音する発声方が功を奏し、ようやく喉が自然に下がった発声が出来るようになりました。

そして、最初は本人も感じたように、特に低音域では、やや気息的な響きにはなります。
ただ、そのデメリットよりも、喉がリラックスして良い緩み方をする点が、メリットになります。

そしてこの中低音での喉のリラックスした発声のせいで、高音域の響きが一段と力強くなりました。
これもメリットになります。

中低音での気息的になる響きは、鼻腔に声の響きを入れるように意識するだけで、かなり良くなります。
また、喉を締める癖を矯正するために、下顎を良く降ろして発音していますが、喉のポジションの意味が判れば、それは姿勢を正しく保つことと、軟口蓋の使い方で出来ますので、口先を開けなくいことで鼻腔共鳴に誘導しやすくなるでしょう。

ただ、まだ喉のフォームは定着していないので、今日の発声のフォームは続けて練習してください。

曲はショーソンのColibriから。
これも、例えば出だしのLeは、下顎を良く降ろして開口母音のように発声することで、喉を緩めますし、低音の響きも出し易いでしょう。
ただ、上述のようにこの発声に慣れたら、口先を開けないで発音出来れば理想です。
そのために、鼻腔に響きを入れることを教えました。

後、特にCoを発音するための、子音Kは、口先でやらないで、軟口蓋で作ること。
日本語のカキクケコの意識をなくした方が、発声には良いでしょう。

ドビュッシーの「星の夜」では、高音が冴えていました。何も指示していませんが、中低音の発声の影響が大きいことは火を見るよりも明らかです。フレーズの終わりが下がっている形が多いので、下降形のフレーズの仕方に注意して下さい。
声のフォームを絶対に変えないで静かに降りるようにしてください。

MM

発声練習は、低音から高音まで、ほぼ理論通りの声の展開が定着して来ました。
単純なレベルでの理屈と実行が伴うようになったと思います。

後は、実際の歌の中で、歌詞発音も含めて、この発声の基本を理解して応用できるか?という点にかかっています。
今日は、そのことを実感しました。

ヘンデルを歌ってもらう中で、傍に立って発声を良く観察すると、どうも下顎の動きと、姿勢の緩さのせいで、喉が不安定になる傾向です。
不安定と言うよりも、音域の移動と歌詞発音のせいで、喉のフォームがぐらぐらと動いてしまっている、ということです。
発声法で俗に言う「喉を下げろ」とか「喉を上げない」という意味は、このことです。
また、軟口蓋を上げる、という意味も、まったく同じことなのです。
このことは、悪く云えば固定的ですが、喉を固定する、という意味は大いにあるのです。

特に音程の上下、で声の響きと喉の状態を、調節する意識と共に、姿勢を意識することは大切なのです。
また、声量の出し具合も、当然あります。

彼女の発声を見ていると、喉が疲れて上がって来るのは、チェンジ直前で声帯を開いてしまうことが、間接的な原因のように思います。
あくまで推測ですが、喉を使うことを無意識に厭うことで、喉から離れようとすることが、かえって疲れる原因になると思います。
それは、必要以上に息を使うことも関係あるでしょう。
少ない息で、より効果的に響きを出そうと意識する時、どのような発声フォームになるでしょうか?

マダム・バタフライの最後の高音は、2点bです。半音の違いで、難しくなりますが、以前より安定して来ましたし、音程も良くなってきました。
あとは勢いで、喉で押さないようにするために、下顎を良く降ろし、軟口蓋も上げる、という口の開け方です。
前のL’aで、充分に開けた発声をして準備し、SpettaのSpeのEをAのつもりで発声すれば、まず喉に来ない発声が出来るでしょう。