OM

ヴェルディの歌曲から。
La zingaraは、声に関しては彼女の現在の声以上のものは必要をあまり感じないです。
むしろ、楽譜に忠実に修飾音符を表し、ダイナミックの幅を表現することが大事だと思いました。
声質自体を特にイタリア的に、と思う必要ないでしょう。
声の楽器としての基本がしっかりあれば良いです。
また、音楽のイメージを持つことも大事でしょう。

私であれば、これはリアルな人間よりも、西洋人形や古典的な西洋のの操り人形で、衣装はスペイン風なイメージが浮かびました。
人形の可愛らしい衣装と風景の世界が浮かべば、この曲の詩情は表現できると思います。
可愛らしいイメージですね。

2曲目のAd una stellaは、これも楽譜に忠実に、スタッカートやマルカートの記号を表現することと、イタリア語の発音が明快に出ることが重要だと思います。
1曲目と同様に声を意識して変える必要はまったく感じません。
とても良い声が出ています。

ただ、換声点を過ぎると、時として喉が高すぎて上ずったような声が出るのが気になります。
換声点を過ぎたら喉が上がり過ぎないように、共鳴を深くして発声するために、下あごを良く降ろして口を縦に開けた発声にもトライしてみてください。

ドビュッシーは、La romance d’Arielから。
彼女のイメージで綺麗な歌いまわしでした。
特に後半の高音のメリスマがコロラトゥーラらしい、可愛らしい美しさに溢れていました。

これに比すると意外と難しいのが、Romance です。
確かにメッザヴォーチェは大切ですが、口先で小さくならないように気を付けてください。
また、中音域は発声のせいでか?母音のIが、広く聞こえる癖が出ています。
これも時と場合によってですが、Silenceの語頭のSiは、明快に聴こえないとおかしなことになります。
彼女の声の場合は、この曲は、もう少し深みのある声で歌う線を狙った方が良いと思います。
また、中間部もしっかりリリックに歌いこむことも必要です。

それは、次のRegretも同じです。
アンニュイな雰囲気は、中低音ではメゾ的な深みのある響きが似つかわしいでしょう。
そういう声をイメージして歌作り、音楽作りをしてみてください。
結局、表現の根源は、音楽そのものよりも、歌詞にありますし、歌詞の背景の文化などに依拠するのだと思います。

最後に「椿姫」のアリア「花から花へ」
後半の元気なパッセージ、高音の歌いまわしはとてもエキサイティングで良い声が出て素晴らしいと思います。
むしろ、前半の表現では、高音発声が時として浅く、深みに欠けていることが気になりました。

Croceなどの言葉の意味と共に、良く喉を開けた高音発声を心がけてください。
この違いは、場面による演劇的な意味表現の違い、と関係してくるように思います。

最後に、レッスンで話したことですが、今はイタリア物だからフランス物だから、という意識で声を使い分ける必要はありません。
発声の基本はまったく同じです。
違うのは、音楽表現のスタイルの違いと、言語の違いです。発声的にはディテールであって、本質ではないと思います。
バイオリンを、イタリアの音楽とフランスの音楽で使い分けることはないでしょう。同じことです。
そのこと自体がはっきり抑えてあるなら、どんな国の音楽でも言葉でも、自由自在に出来るはず、という正論を守ってください。