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初めての方。
フランス歌曲が歌いたいとのことで、レッスンしましたが、発声は見事に出来上がっていました。
本来の持ち声に加えて基礎と訓練がしっかりしていたのでしょう。
声は、歌い回しも声質も完全にイタリアの発声で、ほぼ完ぺきにアクートした声が2点Aまで出せています。

学生時代、イタリアもののアリアの勉強をたくさんされたようで、歌のスタイルが、イタリアのアリアのある種の
歌唱スタイルが出来ており、ドビュッシーの歌曲でも、どこかイタリアのアリアに聞こえてしまう点において課題を起こしました。

Romanceから歌ってもらいましたが、冒頭の低音の声の響きは綺麗に出せていますが、微妙にピッチが低目で、
歌い方がどこかイタリア・アリア調のため、何か暗い情念のような雰囲気が出て来ます。

表現としては明るく、幸福感に包まれていることが基本だと思います。
そのため、ピッチを高く明るい声で、特に出だしのフレーズはなるべくノンビブラートを意識してください。

その他は、音程跳躍の際に、音程をずりあげて声をひっかける癖はこの曲ではあまり出すべきではないでしょう。。
単純にアタックする方が、この曲には良いと思います。
それから、声を際立たせるためのテンポの恣意的な動かしも、楽譜に書いていないことは基本的にやらないこと。
In tempoで演奏することで、声に偏らないようにすることで、ドビュッシーの意図した本来の姿が出て来ると思います。

あとは、フォーレのMandolineを歌ってもらいましたが、これはとても良く歌えていました。
彼女の声の持つ要素と違和感がないのだ、と思います。また、音域も良い所にあるのでしょう。
強いて言えば、PPやPの表現を工夫してほしいと思います。

良く響かせる、という声の基本をしっかり抑えた発声を既に持っていますから、
後は、そこから引き算する発想で、表現の幅を拡げてほしいです。

YT

発声練習でのトピックは、声帯の合わせ具合。良く前に響く声ですが、細くとがった印象です。
この声を聴くと、調子に左右されやすいというのは判るような気がしました。
もう少し角を丸くしても良いが、その分低い共鳴成分の出る声を目指しました。

一言で言えば、声帯を強く合わせないで、むしろ少し緩く出す感じです。
息漏れと言うと悪くなってしまうので、柔らかさ、です。
低音は、緊張させると出なくなりますから、少し緩める感じです。
昔は息を混ぜて・・という言い方をしましたが、これが悪くする原因なのかもしれません。

しかし、やはり今日は調子が出せませんでした。
低音になるにつれ、喉の奥側を開けて行くような感覚にしていくと、しぜんと低音の響きが
出てくるはずです。
これからも、トライしてみましょう。

曲はドナウディのO del mio amato benから。
イタリア語にして歌ったのが初めてでしたので、少し苦労しました。
声は徐々に調子を上げて、終わる頃には元通り、良い調子でした。

自分の声の調子はなかなか客観的に判らないもの。
少し緩めに、力まないで響かせる程度を、常に意識して歌うようにしてください。