IA

ドビュッシーの「忘れられた小唄」から「そはやるせなき心地」
軽快な音楽ですが、さすがにこの曲としては軽過ぎる感じがしました。
ブレスが持たないのは、声の出だしで息漏れが多いためと思われます。

伴奏も、特に前奏が何とはなしに無機的な印象でした。
Lent et caressantと書いてありますが「ゆったりと優しく」という直訳でしょうか?
Caressantの意味を良く考えてもらえると良いです。
前奏が決まれば、歌の出だしも決まるでしょう。歌の始まりにもreveusementと書いてあります。

「木馬」ピアノ伴奏が爽快な響きとリズム感でまず魅せられました。
歌声は、IAさんそのもので、無理にがならない美しい歌声で歌えています。
強く言う箇所、柔らかく言う箇所のうち、強く言う箇所の発声を工夫してください。
元気の良さを声でどう表すか?

シャミナードの軽快な歌曲「愛のとりこ」
これも軽快で洒落た曲調です。
私がイメージしたのは、どちらか?といえば、カフェ・コンセールの歌の雰囲気です。
コケットでちょっと品がない感じでしょうか?

サティのJe te veuxとか、「エンパイアの歌姫」イタリアだとちょっと古くてIl bacioとか?
具体的には、もっと歌詞の発音や、歌詞の語り口調が醸し出すアーティキュレーションを強調した歌い方が良いと思いました。
悪く言えば泥臭く、良く言えば日本人離れした饒舌で濃い歌に仕立てるのも面白いと思います。

「愛のとりこ」ラフマニノフ「夜の神秘な静けさのなか」
これは、ラフマニノフらしい重さと暗さの味わいが持つ美しさが、良く表現された歌になっていました。
低音域でドラマティックに下に返した強い声が、彼女の歌声からすると意外でしが、その声が使えるのであれば、逆に高音も同じように力強い声を使おうとしても良いのではないか?
そういう箇所もあるのでは?という話をしました。

MYM

今日の声楽レッスンは、やはり換声点の換声の発声が主要な課題になりました。
Rの巻き舌による練習が、感覚的に新鮮な影響があったようでした。

喉仏を触ると、明らかに換声点発声で声が野太く音程が♭になるとき、あごの奥の部分〈おとがい、と呼ばれる場所〉が下に向けて膨らむ様相を見せていました。
私が良く言う、舌根を固くして出そうとすることが、高音発声に妨げになっているのでしょう。
あるいは、逆に見ると、軟口蓋を使う発声を阻害する要因になってしまう、とも言えるわけです。

舌根筋は下あごを使えば使う筋肉ですから、使ってはいけないということはないはずですが、その使い方によって、音程を出すための喉頭の引き上げ筋が働き難くなっているとしか思えません。

これらのことは、単に生理学的な理屈ですが、歌うという行為の中では、ブレスのことも含めた一体の作業になります。
実際、彼女に聴いてみると、肩から胸にかけて、ものすごく力が入っている、との申告でした。

イタリア古典歌曲集のLasciar d’amarti
そして、Ombra mai fuのアリア、Caro mio ben
ベッリーニのMalinconia

これらの曲は、音域が低く換声点の発声の課題は大きな影響は無いとはいえ、まったく無いわけではないにも関わらず、非常に上手く美しく歌えていたのは、意外な発見でした。
再び原点に戻ったと言うか、当初の彼女の歌声が持つ素質を感じさせてくれました。

それは、メロディに対する愛着というか、メロディを慈しんで歌おうとする、心持が素直に歌声に出る良さ、です。
換声点から5点Gにかけては、まだ力で押してしまいますが、音程が悪いわけではなく、あまり気になりませんでした。

やはり、人それぞれの身に付いた音楽性を大切にした発声訓練の課題を与えることが大切なことなのだ、と彼女を指導して思いました。
音楽表現としての歌声を、これらの曲で発声を少しずつ伸ばしていければと思いました。

TF

声楽レッスンでは、発表会のプログラムを中心に指導しました。
シューマンの「間奏曲」
出だしの声のピッチが決まらないのですが、ブレス時のお腹の支えをしっかり意識してもらうと改善しました。
今回のレッスンでは、この方法が全体に効果を見せていました。

同じくシューマン「詩人の恋」から「美しの五月に」
前述の点を気を付けながら歌うと、フレーズの入りの音程と声の響きがきれいに決まるようでした。
残るは最高音の声質。
ファルセット傾向が強く、細すぎることと音程感が希薄になる点が、課題でした。
これは、最後に歌ったドナウディの高音の強声発声が参考になるでしょう。

モーツアルト「すみれ」全体に喉が高い印象でした。
音程を気にして軟口蓋だけ意識すると、このように喉が高くなって声が細くなりすぎます。
低い声は、喉をゆったりさせて音程を意識し過ぎないで、みぞおちから出すように。
音程の一番の問題は、高い方の換声点の問題につながることなので、むしろ5点b以下は、声が横隔膜の上に乗っている感覚を忘れないように。

そして、ドナウディの「限りなく美しい絵姿」
こちらも、良く歌えるようになりましたが、一点だけ、高音発声が、やはりファルセット傾向が強く、音程感が逆になくなってしまいます。
これは、以前もやりましたが、頭声だけにならないよう、喉の下の鎖骨中央のくぼみに一瞬で当てるようにしてみてください。
そのためには、フレーズの途上で、目的の最高音の前から、喉を開けた発声を意識したほうが良いでしょう。
2番は母音がOになりますが、母音の形を意識しない方が上手く行くと思います。