今回は、まとめてレッスン上で課題になったことについて書いておきます。

日本語の歌に限らず、言葉を歌うことは、音楽的なリズム感と同時に、その言葉が意味する表現が内包されています。

たとえば、活力のある生き生きとした言葉とリズム感であれば、言葉の発音タイミングが微妙に遅いのは、表現として生き生きとしないことになってしまいます。

日本語を発音する普段は、子音を意識することはないですが、歌を歌うとき、その歌詞を語るときは、子音と母音を明解に意識しましょう。

音楽的にはリズムの拍が打たれるほんの微妙な寸前に発音されていないと、遅れて聞こえます。

これらのことは、総合的に考えれば、一種の演技力として捉えられるでしょう。
歌詞を朗読したときに、すでにここに書いたことは、表現力の中に入ってくるからです。
歌になったとたんに、メロディやリズムに素直に従っているだけだと、生き生きとした表現力が出てこないのです。

練習方法は、日本語を読むときも子音をしっかり意識することです。
まずこのことが出来た上で、リズムで読みます。
4拍子だったら、拍を手拍子にして、歌詞をリズムで呼んで見ます。
その時に、子音の発語タイミングを、ほんの少し早めに出すように努力してみます。

これが出来たら、実際の歌でやってみましょう。

特に外国語の歌は、とにかくまず子音を出すことを努力してください。
それがなければ、先に進めないからです。
確かに子音だけを一所懸命発音する歌も、幼稚なものですが、だからといってやらなければ始まりません。
子音を出せない人は、まず子音をしっかり出す癖をつけてください。

MやB、Pなどの破裂子音は、唇をしっかり合わせる。
VとFは、しっかり唇を噛んでから息を意識して出す。
T,D,L,Nなどは、舌をしっかり硬口蓋に擦る。
Kは軟口蓋にしっかり擦り付けることです。

フランス語の場合、鼻母音は時間をかけてしっかり響かせてください。

喉開けは、中高音域、特に女性であれば5点C~Eくらいの範囲で、開きやすくなります。
換声点の一歩手前になります。
ここで、喉を開けると歌いやすいですが、歌声が暗くなりますし、声質が冷たい感じになります。

歌を歌うときに、イメージとして息を太い筒を通るように出す人がいますが、これが開きやすい発声を招く原因になっています。
息を筒に通すイメージは、ほとんどフルートのイメージですが、これが声楽的にはあまり良くありません。

なるべく息を使うイメージではなく、声帯を合わせることで響きが出るというイメージに発想を転換してください。

もう一点は、喉を上げてしまうこと。
喉開けと喉を下げることは、原理的には一致しますが、前述の悪い喉開けは、大概が舌根で喉を下げることに起因することが多いようです。

顔を前に出さない姿勢を堅持することと、唇で発声する意識を持つことが、良い意味での喉を下げることが出来る発声を実現させることが出来るでしょう。

唇だけを少し突き出すような基本のフォームを身に着けてください。
それだけで、喉が上がらない発声になります。

特に前述の5点C~Eあたりの音域が連続して続くフレーズを歌う際に、とても有効になります。

母音のAは、声の響きが奥に引っ込みやすいです。
舌先に注意を向けて、むしろ舌先に少し力が入るくらいにしていると、声が前に出てきます。
これだけ、声が暗い人はかなり明るいAの母音になるでしょう。
子音を出すことが声を前に出すことにつながることも言い添えておきたいです。

本番で上がりやすい人は、まずは声が雑になっても良いから、大声でしっかり歌うことを癖にしてください。
それが出来るようになってから、発声や発音を意識してください。

上がり症の人は、なるべく集中することをひとつに絞ることで、集中力を増すことを考えると良いです。