TSS

コンコーネの8番から。
前回、ひっかかった中低音のメリスマがきれいに処理できるようになりました。
惜しいのは再現部につながる5点Dが♭気味であることと、これも中間換声点の4点hで、特に下降形の場合♭になりやすい点です。
クリア出来るので、上がりにしました。

新曲として、プッチーニのトゥーランドットから「氷のような姫君の心も」を取り上げました。
本質的には、彼女の声には重いと思いますが、最初から無理をして重い声を狙う必要はありません。
口を開けない発声をすることで、息の方向を変えて頭部から後頭部に引き込むように、高音発声を指導して、かなり楽になりました。

ラクメのアリアは音域が広く難しい曲ですが、喉を開けて軟口蓋を上げるという対の行為を、より確実に実行できるようにすることに尽きます。
何度も指摘していますが、冒頭のレシタティーヴォ風のヴォカリーズは、音符通りに歌わないで、自分の息に余裕のある範囲でフレーズすることです。
常に息が足りないで次のフレーズに入っていると、最後の最高音発声が上手く出来なくなります。
最高音は、そのための発声だけではなく、そこに至る過程の状態に大きく影響されます。

また、全体に最高音発声が硬すぎます。
ちょっと疲れてくると、響きが喉に落ちてきます。

練習方法として、部分部分をもっとゆっくり練習して、必ず喉を開けて高くアタックする、ということを再確認して、部分から全体練習に移ってください。
最初から速いテンポで歌うと、ブレスや喉開けへの集中が削がれてしまうからです。

MR

改めて発声の課題について、話をし課題点を徹底練習しました。
課題そのものもありますが、何よりもレッスンで出来たことを必ず復習して身体に覚え込ませる事。
そのためにも、発声そのものに興味を持って、毎回必ず発声練習を徹底することを話しました。

若いころであれば、直観的に歌いこんだり人まねでも、本番を重ねて上手くなることがありますが、
大人になってから、課題を抱える人は、直観的に歌うだけでは上手になれないことを話しました。

実際の発声の課題点ですが、中音域で頭声と胸声のバランスが悪い状態です。
この、胸声からか頭声からか?どちらから作るか?ということを今まで見てきましたが、彼女の場合は中音域から低音に降りる練習をしてから、
高音まで少しずつ昇って行く発声練習が良さそうです。

母音はAではなく、Iを使ったほうが良いでしょう。
つまり、口を開けない発声方法ということです。
発音の際に、不用意に下あごを使わないで、上顎の奥で母音を作ることです。

ヘンデルのPiangero la sorte miaでは、この発声方法を徹底して練習してみました。
息の流れる強さも大いに関係あるでしょう。
現状は出し過ぎか?抑え過ぎか?どちらかに偏ってしまいます。

喉は想像以上に繊細で、些細なことで声質は大きく変わります。
大きな声、というイメージを捨ててください。
大きな声ではなく、楽器を扱うことをイメージしてください。

たとえば、小中学校でやるブロックフレーテです。
適度な呼気で吹くことで、きれいな響きになります。

喉も同じです。
このためには腹筋の意識が必要です。
適度に息を出して最大限の美しい響きを得る、あるいはほんの少しだけ出して息もれの無いPの声を出す。
いずれも、呼気のコントロールが必要だし、喉の意識も必要でしょう。

最後にVadoro pupille
いつもそうですが、この曲を歌う頃には喉も温まり、発声の課題も訓練されているためもあり、スムーズに歌い通せています。
音域も、今の彼女には歌い易い音域であることを考えると、やはり頭声優位の発声が良いのでしょう。
そのためにも、口の開け方、特に下あごの開け方には注意が必要だと思います。

TNA

発声練習は、いつもの細い頭声ではなく、真のあるしっかりした歌声でした。
そして、実際の歌でも高音まで良く響く充実した声で、発声の進歩が良く判る結果となりました。

歌ったのは、フォーレの「月の光」とドビュッシーの「月あかり」
両方とも同じヴェルレーヌの詩です。

フォーレの方は、伴奏のリズムにシンコペーションがあり、リズムを間違いやすい所があるので、注意です。
特に中間部のAu calme clair de luneのところです。
伴奏形がここでアルペジオに代わるので、間違えやすいのです。

ドビュッシーの方が、歌い易いでしょう。
フランス語はよく読めていました。

ロッシーニのUna voce
これも特に高音がとても良く明るく響いて、ほぼ問題ないくらいでした。
前半の部分は、ゆっくりしたりユーモラスに歌う部分を考えると、テンポは少し速め良いでしょう。
高音は、どこも明快に気持ちよく歌えています。

FT

低音発声に難が出ていて、声帯が太く合わさらない状態になっていました。
どうも風邪を引いた後、アレルギーのように咳が止まらなかったらしく、そのために声帯が炎症を起こしているのか?と思いましたが、
低音発声を訓練したところ治ったので、多分、喉をかばいすぎていたのではないか?と見ています。

低音の復活練習は、母音のIを使って、まずは声を合わせることから始めて、低音のGに向かって降りる練習をして、低域の胸声区のれ開発をしました。
その後に、母音のAにして練習しました。
これは簡単に治りました。

そして歌は、トスカの「妙なる調和」
現状は、喉で歌っても何とか歌い通せる程度に、喉の耐性が出来ています。

しかし、聴いていて苦しいし本人も苦しいはずです。

改めて発声を徹底してもらいました。

大事なことは、やはり喉を開けることです。
舌をなるべく力ませないため、母音発声時は舌先を前の下歯に軽く付けるようにすると良いでしょう。

そして大事なことはブレスの時に、横隔膜を拡げるように意識して腹部を拡げることと、軟口蓋を高く上げることです。
このとき、自然に喉の気道を拡げる感覚が生まれればよいですが、軟口蓋だけが上がってしまうのは×です。

まず、曲中の後半に出て来た中高音の4点Dで始まる”Ma nel ritrar costei”の発声で喉が開けられるか?が試金石でした。
口を縦に良く開けたハミングでピッチを確実にしたうえで、下顎を絶対に動かさずにハミングから母音に変換します。
この時に、ピッチが決まった明るいが喉が下がった声の良い響きが出せれば、合格だったのです。

このような状態で常にフレーズの入りを処理できるようになれば、更に高音の発声も応用が効くはずなのです。