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彼女もこちらに来て、ほぼ1年目になりました。
そしてタイミングよく、彼女の発声の課題と方向性が明快になり、改善の端緒が見えてきました。
正直言って、難しい喉でしたが、結局、中低音の課題は地声発声をいかに排しながら、響を作っていくか?という1点に収斂されました。
また、後は放っておいても出ていた高音発声に関しては、実は喉をもっと開けると、より良い声が出ることが判りました。
ここでも、喉に依存した発声をしていたわけです。

ただ、高音に関しては絶妙な形で使われているため、いくらでも上に伸びる発声になっていますので、換声点直後くらいまではなるべく開けて、
さらに上に行くときは現状維持で良いかと思いました。

今日の練習の主眼は、母音Aでいかに地声にならずに低音発声をするか?という点になりました。
地声自体を出さないようにするには、母音のIは選ばないこと、声を勢いよく出さないように気をつけること、この2点が要になります。

地声自体が悪いのではなく、彼女の場合は地声と頭声が入り混じってしまい、声の響きがひび割れたようになる現象が出るからです。
それから、地声にしても頭声にしても、低音域の、特に4点C~Fにかけては、音程を保つ部分が未開発で、音程がかなり低く出やすくなっています。

低音ほど息を高く上げ、それを保持する意識が必要です。それが、軟口蓋への意識ということになります。
これを訓練するために、口を開けたハミングを練習します。

イタリア古典からSe tu m’amiを練習しました。
一通りイタリア語で練習しましたが、特に低音の地声に変わりやすい音域での訓練がメインでした。
これは、今回の特訓で解決しましたので、次回引き続きこれが出来ていれば上がりにします。
大きかったのが、伴奏無しでピッチを崩さずに歌い通せたこと。
これは、発声のある面での大きな進歩です。

そして、シューベルトのズライカは、イタリア歌曲での特訓が功を奏して、だいぶん安定感の良い歌になりました。
やはり低音域の下降形のフレーズで音程が怪しくなりますので、くれぐれも注意してください。
ドイツ語でもイタリア語でも、口の中を広く感じるように発音出来るためにはどうすれば良いか?
最後にそのとっかかりとして、指をくわえた状態で歌う練習をしました。

どの母音でも口の中に空間があるような意識で発音・発声出来るようになることを練習してください。
口の奥にピンポン玉をくわえたまま発音・発声するイメージです。