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この「変身」は、3曲で構成された歌曲集です。
詩の内容は抽象的ですが、その代わりイメージ力の強いものです。
プーランクは、ヴィルモランという詩人の人柄とその詩をとてもよく理解していたので、この作品を産み出したのです。
プーランクの理解、音楽の中からつかみ出して演奏としてまとめ上げることが大切です。

音楽をよく観察すると、3曲のテンポ感の違いが判るでしょう。
これをしっかり出すことが重要。
そして下手なオペラアリアみたいに声自慢の演奏にならないように、強弱、メリハリを何より大切にしてください。
1曲目」軽快に切れ味良く。2曲目ゆったりとしたときの流れ。3曲目は言葉のトランポリンです。

1曲目「かもめの女王」
軽快さ、歯切れの良さは、ピアノ伴奏と共に表現しなければなりません。
港に行くと餌を頬り投げてくれるから、カモメがひゅんひゅんと低空飛行しているでしょう?
あんな港の塩の匂いと風、カモメの軽快な飛翔をイメージしましょう。

具体的には、後打ちのピアノの和音のリズムを感じて、遅れないように素早く発音しながらも音程良くメロディラインを良く出すこと。
その中にも、レガートで美しいフレーズが時々出てきますので、これを良く表現すること。
当たり前ですが、音符で歌っているとなかなか表現しづらいリズム感になるでしょう。
全体にハッピーな気分を表現した曲です。

2曲目「君はそんな風だから」は、1930~40年代に流行ったブルースが基底にある曲ですね。
私は、淡谷のり子の「別れのブルース」を思い出しました(笑)

彼女は意外に低音が出ますので、低音の響きを良く出すことと、中間部のVoilaから始まる弱声による美しい表現を大切に。
また後半のEt je veux te l’ecrire pour que la nuitのフレーズ力強さもピアノと共に良く出してください。

3曲目パガニーニ。
曲名通り、一つの超絶技巧風な表現。
コンクールでも良く歌われますが、これテンポ通りに歌うだけで技巧的とはとても言えません。
どこが問題か?
声の強弱と音高との関係が、トランポリンの上下運動をイメージしてメリハリを付けることです。
ピアノ伴奏を弾いてみると、とても美しい和音の響きが感じられるところがあります。
当然、美しいレガートで歌わなければならないでしょう。