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遠路はるばるレッスンに来てくれた。
オンライン・レッスン歴はもう5年になる。
今回のレッスンで痛切に感じたのは、そのオンラインレッスンにおける声の良し悪しを判定する難しさだった。
彼女との対面レッスンは確か去年の6月以来だったと思う。
去年の声は、声量が足りないがピッチの良い声であった。
また声に生声が残っている感じで、それを一回のレッスンで解決しないまま、私の病気のせいでオンライン指導してきた。
結果的に共鳴のある頭声発声というか鼻腔発声になっていたのだが、今度は大事な胸声が消えてしまっていた。
つまり基本的な声量状態では、声の芯が感じられない状態になってしまっていた。
そのため、今回のレッスンで行った声の矯正練習方法は歌詞を朗読することとなった。
そしてその朗読した後に、その発声(発語)感覚をなるべく変えないで歌うことである。
ここでぶつかる課題は、胸声傾向の発声でいかにピッチを良く合わせるか?という部分の難しさにある。
言葉で指導するのが難物なのだが、平たく言えば言葉を喋るように歌う時に子音でピッチを出すように子音発語するということ。
逆に言い換えれば子音発語で音程を出すように、ということである。
たとえば、PurcelのAngevening hymnの出だしは5点D。
歌詞はNowで始まる。
つまりNの子音の発語時点で5点Dの音程を出す緊張感を喉に与えるということ。
NowのNの子音は舌先が上の歯の後ろにしっかりつけるようにして、その瞬間に同時に喉が緊張していること。
この時に子音が明快に意識されないと、母音でピッチの良い声を出す目的意識が強いため声の芯がない声になりがちなのである。これは5点Dの話。
その後で出てくる、Dear などはDをしっかり舌を使って当てるようにすること。
その当てる強さは音程に依拠することになる。
このやり方は横隔膜の支えのレベルに比例するので、高音に上がるに連れて、出す瞬間の腹筋の力のいれ具合に意味がある。
結果的に歌詞発音の明解な歌声になるわけである。
An evening hymnは、キーが高いため上記の練習でほぼ課題をこなす結果となれた。
しかしながらHahnのSi mes vers avaient des ailesは、メゾソプラノ用の低いキーのため、違った意味での難しさがあった。
それは、音域が低いからである。
音域が低いのは、おおむね4点A以下と理解してほしい。
この領域では、子音発語はしっかりするが、腹筋を強く締めないでおいて息をゆったりと入れること。
このことで低音に特化した緩んだ声帯を正しい音程感で歌えるようになるのである。
しかしゆったりとしたブレスであっても、歌っている間は腹筋を緩めないように。
低音の声の響きを保つように、お腹を支えることである。
もう一点大事なことだが、中高音~低音に降りるフレーズでは、フレーズの声の出し始めが中高音あるいは高音のため、
低音までは音程で切り替えないようにすること。
音程感を切り替えると、ピッチが下がってしまうのである。