彼女ももうすぐ2年近くなるのかな。
当初来た頃よりも全体に声がよく出るようになった。
歌う表情も良くなって、硬さが取れてとても良くなったと思う。
高音も伸びてきた印象がある。
一番難しいところが、やはり最後に残って、これからどれだけそこをクリア出来るか?
という状況ではないだろうか。

彼女自身が、そのことにようやく自覚が出てきた、あるいは実感が沸いてくるようになった、という点が成長だと思う。
本人が思わなければ、こちらがいくらヤイヤイ言ってもなかなか難しいところがある、と言い訳したいのである。

難しいのは、喉で力んでしまうところだろうか。

特に中高音から喉から顎にかけて力みが出て、声がチェンジしてから上になると、今度は声がかすってしまって、響きが薄くなってしまう癖。
色々考え方があるだろうけど、どちらかというとメゾソプラノ的な中低音~中高音域の出し方とも言えるかもしれない。
また、根本的な発声の持ち方、それは特に姿勢が関係するだろうと思う。
中低音も、出す、という感覚よりは喉を開いて高く響かせるという基本的なところをもう一度再点検したいところ。

姿勢だけど、顎が微妙に出ている方が、一見喉は楽な感じがすると思う。
中低音だと、声帯が響いて出しやすい感じもあると思う。
ところが、これ、実は声帯の開きが足りないからそのまま上がっていくと、そのまま押して高音を出す結果になる。
ところが、声はチェンジするが喉がそれほど強くないので、勢いかすってしまう、という感じだろうか。

顎が前に出ないで出すポイントの方が、自然に声帯が開くから、しっかりお腹を使えば響いた声が頭部に入りやすいだろう。
また中低音は、それなりの胸声区の響きが混ざるけども、その響きはやはり息と共に頭部に響くのでピッチが良いし、喉にも負担が少ないはずだ。

曲はパーセルのMusic for a whileから。
しかしパーセルは良いね。気品があって個性がある。現代的で古びてない。賢くて俊敏なイメージ。
ロマン派やモーツアルトよりも現代的なイメージがあるのはなぜだろう?

ウの母音、口をすぼめて深くし過ぎだと思う。
深くし過ぎるから軟口蓋が上がらなく、倍音の出る明るい声にならない。
喉を少し浅めに意識しても良いから、響きを高く出すことをどんな母音でも意識して欲しい。

この曲では、後は2点Fを越えるところの響き。
彼女の苦手なところで、響きが薄くなってしまう。
この2点Fを超えるラインは、そこよりも上の響きをそこよりも下の響きより響かせる意識を持って欲しい。
逆に言えば下を響かせすぎる、力むと上が出しづらいだろう。

これは次に歌ったロッシーニの「婚約手形」のFanny役。
レッジェロなキャラクターだけど、中音域が重いので、そこから上に昇るのが一苦労。
レッスンでは顎を押さえて、上顎から上、あるいは軟口蓋を強制的に働かせるようにしてみた。
彼女はこれが上手い具合に働いて、高い響きが上手く頭部に入って良く響くようになる。
下から上がる時に、下を力まないで上に行くほど響かせること。

頭に突き刺すように。
細かいフレーズは楽に滑らかに素早く転がすこと。
そうやって、後はなるべくフレーズを長く取る事。
カンニングブレスが多すぎる。
最初から息が続かないという前提で練習しても、発声の問題、あるいはそのことと大きな関係があるフレージングは解決しないだろう。

しかし今日のレッスンは結構収穫があったと思う。
姿勢を含めて、練習して定着させて欲しい。