発声練習は、アの母音にしてやってみた。
最初は声がまだ温まらず、お腹の付かない声だったので、中低音から意識して深い発声を心がけてもらった。
徐々に温まった頃を見計らって、高音の発声を。
高音に昇るほど、喉を深く開くように。
これが直ぐに効果を表し、息が柱になったような、良い意味で太い高音がしっかりと立ち上ったのには感心!
2点bまでは、確実に良い高音が出せるようになった。
強いて言えば、やや暗くこもる声なのだが、息の力とリンクしているので音楽的な高音の声であることが評価出来るのである。

今日はモーツアルト「フィガロの結婚」のPorgi amorを聞かせてもらった。
これがなかなか立派な歌いっぷりで、初めて来た頃の彼女の歌唱を思って感激であった。
出鼻からクレッシェンドが出来るし、高音も喉が上がらないでしっかり息の力で綺麗に出せている。
全体に、一つの曲、音楽として成立した演奏が出来るようになったのである。
それもこれだけの音域のアリアである。
初めて来た頃は合唱専科でカンニングブレスが多く声に芯が乏しく、ソロを歌うのは厳しいなという印象だった。
実際、合唱曲のパートをレッスンしたのだった。

惜しむらくはブレスが突然切れる癖。
足りないのではなく、切れてしまう、という感じなのである。
クレッシェンドが出来るので、息は声とつながっていると思うのだが、低音に降りる際に急激に息が多く出てしまうようにも感じられる。
中低音の息漏れのない発声、集まった響きを更に研究することが課題だろうか。

勢い良く高音に登って、降りると、その勢いが付いたまま一気に低音までフレージングしようとして、息漏れを急激に起こすのではないだろうか?
高音発声と違って、中低音は喉をあまり深くし過ぎずに、なるべく声帯を閉じるように意識したい。
低音ほど息を吐こうという意識を薄めて、鼻腔に貯めてそこで大事に響かせる意識である。

また良く研究して来てくれるのだろう。次回を楽しみに待っている。

おのさん

発声練習は20分くらいかけたか。発声練習のせいもあるが、結果的に滑らかな良い声に到達した。
彼女ももう2年くらいになるが、回数こそ多くなくても確実に来てくれて確実に良くなった。
来ているから良くなっている、と言いたいのではなく、彼女の堅実で気の長い小さいけれども地道な努力を評価したいだけである。

当初はこちらもどうしようか!?というくらいに、皴声(させい)がひどくて、中低音はひび割れるわ、高音はスカスカになるわで、どう手を就けて良いのか分からなかったくらいである。
それこそ、もう手探りであれもやりこれもやり、正直言って時には投げ出したくなるくらい。
癇癪も起こしたし、怒りもした。投げ出しそうになった。
だけど、本当に良く就いてきてくれた。
音楽が歌が好きなんだな。彼女の情熱もさることながら、明るい性格が幸いして長続きしているんだな。

今日はイタリア古典からLascia ch’io piangaとTu lo saiを練習した。
口を突き出すようにして、高音に上がるフレーズを喉を開いて行くように歌う、ということがテーマになった。
結果的にとてもうまく対処できて、喉に負担なく、また力まないで結構な高音を歌えるようになった。

実は元々彼女の声は2点C以上で声がチェンジすると段差が大きく、喉が上がりやすいので、彼女自身が喉を舌根で下げて発声する癖があった。これを徹底的に排除して、喉を合わせるように練習してきた。
なぜか?というと、物凄い力みで息を胸一杯溜め込んで、その力で喉を下げて一気に発声していたため、なんとも言えない力んだ発声だったからである。
その癖を直すために、結構な時間をかけたが、どうやらある程度自然になってきたのと、喉だけを合わせるだけの発声だと、
高音はどうしても喉を上げてしまうので、喉にも負担である。

今日もLascia ch’io piangaを歌ってもらうと、中音域は良いのだが高音、2点Fを越えようとする辺りで、喉が上がってしまう。
喉もかなり負担に思えた。
唇を良く使って、口を開けないことで、中を良く開くこと、そのことで喉が上がらずに、力まないで高音が出せるポイントが見つかった。
これは大きな発見だったと思う。

前回こちらで選んだTu lo saiは、偶然ではなく、狭母音をきっかけにしたフレージングが出来やすい歌詞なのである。
口先を開けない発声をすることで、顎や喉で力まずに中を開く練習にぴったりである。