MT

久しぶりだった。
フォーレの歌曲を4曲持ってきた。
全体に、やはりフォーレの歌曲は、今の彼の声にぴったり合っているし、基本的な課題を勉強するためにも、打ってつけの曲が多いと思った。

彼の場合基本的な発声というよりも、子音の正確な扱い方を覚えるべきだろう。
特に、VやWなどの唇を噛んで、喉を開くタイプ、あるいはZやJやDなどの舌を使って同様に喉が開くタイプである。
これらの子音をきちっと扱えることで、自然に喉の開いた好い声が出てくるし、当然、語感が付いてくるのである。
ただ、しっかり出せば良いというものではなくて、ニュアンスに応じてということを忘れずに!

En priereは、JやVの子音を大切に。
全体に彼にぴったりの曲である。
Au bord de l’eau
これは、テンポは普通よりもゆっくり目にしておいて、メロディは絶対にビートを打たないように。
2拍のビートを感じて歌うと、子供っぽい歌になってしまう。
丁寧に、真っ直ぐにフレージングして欲しい。
TousとDeuxの発音の違いを気を付けて。

Arpegeは、これも8分音譜系で、ビートで歌わずに、旋律を真っ直ぐに滑らかに歌うべき。
高音は、かぶせないで、高く明るく出す方が綺麗である。

Nellは、テンポの良い曲だが、これを今の状態でテンポ良く歌うと、元気が良すぎて
前述のことがすっ飛んでしまうので、今は少しゆったり目に歌うこと。
必然的に、音譜の扱いも柔らかく、丁寧に、を大切に。

今日のレッスン。
彼にとっては、フォーレの歌曲はやはりフランス歌曲のセンスを醸成することや、フランス語で歌う声楽曲の基礎的なことを
勉強するには、良い教材であると思った。

TT

発声は高音がリラックス出来てとてもよかった。
ただ、実際に曲を歌う際は、リラックスといっても、楽すぎてもいけない。
お腹の抜けた声になってしまう。

Qui la voceでは、冒頭のメロディが声が少し抜けてしまっていた。
出さない、ということではなく、力まない、ということである。
力まないならば、出さない、となるのは、両極端である。

難しいが、常に頃合の声の出し加減を大切にして欲しい。
彼女の場合、中音域で、声を出そうと構えると、やや喉を掘った声になるので、それを注意して欲しい。
要するに微妙に♭な響きになってしまうのである。

高音域の声はとても良く出ている。
特に終わりの2ページは、勢いと最終コーナー目指す競馬馬みたいに、一気呵成に走り抜けて、最後の3点E目掛けて終わって欲しい。

オランピアのシャンソンは、声そのものよりも、機械仕掛けの人形の歌らしく、機械的なリズムをイメージしよう。
特に高音のアルペジョの繰り返しは、間合いがブレスのために伸びたりしないようにすること。
その後の、高音の2点bは、声の響きを大切にしたうえで、機械的な間合い、リタルダンドを大切に。
全体的なテンポで、本人の声の能力が活かされも殺されもするから伴奏合わせが大切になるだろう。

「からたちの花」こちらは、声の扱いが丁寧になって、とても良い。
後は、せっかくの日本語。歌詞のイメージをくれぐれも大切に。
「白い」と歌ったらその白さ、イメージが瞬時に浮かぶような訓練、癖を付けて欲しい。
そのことで、外国語の歌を歌った時に、イメージ無しで歌えなくなるだろう。
そのためにも、日本語で歌うことは大切なことである。

最後にシュトラウスのAmorを一通り歌って終わりにした。

SM

彼女、体格は良いのだが、呼吸は思いのほか浅い。
腰を落として、身体の重心を常に腰骨が下に落ちるように感じて、ブレスをすること。
あるいはそこから声を出すことである。
また脇腹をしっかりさせることで、特に高音の強い声は支えられる。

今日のテーマは、ほとんどこのブレスから声を出す準備に費やした。
そして、このことは歌の中では、リズム、声の出だしのタイミングとも関係してくるのである。

グノーのLe soirも、やはり冒頭の8分音譜で出る、Leのタイミングがどうも今ひとつである。
そして、出しにくい低音ほど、前述のブレスの方法、お腹、腰、脇腹、という身体の使い方をきちんとすることである。
これが、きちんとしないから、声が抜けてしまうし、リズムもはっきりしないのである。
高音は、楽譜どおりに、PPで細く丁寧に出すこと。
必然的に、その前後はテンポが重くなるはずである。

L’absentは、Le soirよりも歌いやすそうである。
こちらも、意外とブレスが長い。
ブレスを無理やり長くしないで、きちんとしたお腹に入るブレスをどの部分でも大切にして欲しい。
そして、発音は勿論、細かく大切に処理すること。

最後にミカエラのアリア。
冒頭の低音などは、やはりブレスと準備次第で、声が決まるか決まらないか?が分かれるだろう。
練習を積み重ねれば、必ずもっと中低音の良い響きが得られると思う。

アリア部の出だしは、大分声が決まってきて良い感じだった。
そして、今まで高音は無理しないでやってきたが、今日は身体の使い方をやったので、重心を低くしてしっかり出すように
お願いしたら、しっかりした良い高音が決まってきた。
この辺り、大分進歩である。

MC

彼女は良いソプラノの資質を持っている。
レッジェロな細いソプラノだろう。
発声から高音をやると、3点C以上は細くなるが、どこまでも上に出そうな感じすらした。
ただ、2点C~Gくらいの間は、注意しないと、芯のない声になりがちであったり、♭になるから気をつけて。

後、癖だが、発声でスケールなどを歌うと、特に2点G以上で、コツコツ当てて歌う傾向。
これも息で廻して滑らかに歌う癖も付けて欲しい。
コツコツ当てるといっても、開いた発声なので、これも芯があまり感じられず、旋律が見え難い声になりがちである。

芯のない声は、歌になると目立つ。
恐らく合唱でアンサンブルすることに慣れているのではないか?
母音をイにして、旋律を歌う練習をしてから、歌詞に転換して応用した。
あたかも、バイオリンなどの弦楽器のように、歌詞が付いても、どの母音もみっちり綺麗に線として繋がるように
歌う方が、彼女の声が活きるだろう。

曲は、ダウランドを3曲。パーセルを2曲練習した。
英語の発音はすこぶる綺麗だし、声質も基本的に良い。
後は、2点C~E当りの声を前述のように、きっちりと線を出して、線で歌うことと、その音程が♭にならないように、気をつけること。
そして、ちょっとしたことだが、子音のアタックをきちっとすることで、母音の響きが速く決まるから、音楽もビシッとする。
特にFine knacks for ladyは、出だしのFやLadyのLなど、しっかりと。

Dear pretty youthは、チャーミングな曲だが、意外と難しい。
彼女の声の傾向から、特に裏拍の旋律の声が抜けがちなのである。
あるいは細かいリズムの声、というべきか。雰囲気と流れだけで歌わないで、リズムをしっかりと声の響きに載せて歌って欲しい。

全体に、今日のレッスンでやった方法は歌う声のためには、とても有効であると確信した。
このことが定着したら、楽譜どおりの音楽的な(歌詞の意味に即した)強弱などのニュアンスをはっきり付けていけば、良いだろう。

KY

発声では、苦手な中高音の練習に集中した。
最初に下降形で2点Dから上がっていったが、これがとてもうまく行った。
かすれて喉が開いてしまう癖がなく、うまい具合に当った声になった。

それで、上向形で、5度とか3度5度とかもやってみたが、発声練習では、懸案の喉っぽい響きは出ずに済んだ。
彼女が苦手なのは、イとエだが、自身が言うように、どうも舌が力むのか、硬いようである。
母音の形をきっちり出す傾向があって、それが彼女のハキハキトした綺麗な喋り方に通じるので、良いのだが歌う場合の
特に高音になると、それが影響するのかもしれない。
母音や、歌詞があいまいになっても良いから、舌先が奥まらないように、少し前に出す感じで、楽に脱力を心がけて欲しい。

そして、特に低音は、しっかり出すと上の方で声がチェンジし難くなるから、低音はスカスカするくらいで、丁度良いのである。
常に高音の声に照準を当てる様に、中音域の出し方には気をつけるほうが良いかもしれない。

前回のリベンジ!ということで、「千の風になって」の練習から始めた。
概ね問題になるのは、2点F前後の声である。
しかし、問題というほどのことはなくて、本人が出し辛かったり、何かひっかかり感じるために、気持ちよく歌えないという実感が問題なのである。
聴いているほうにしてみると、それほど問題は感じない。
概ね、苦手な音は、その前の音の響き、発声に問題がることが多い。
下の声区の出し方で強くなってしまうために、上に上がり難い、といった感じである。
柔らかく、舌を脱力して、ということだろうか。

最後にグノーの歌曲、Envoie de fleurを練習。
こちらの方が音域は全体に高いのだが、全体に高いために、かえって発声が良かった。
彼女らしい優しい軽やかな歌声で、好ましい音楽になっている。
高音も怖がらないで、しっかり出して行って大丈夫だろう。

しばらくレッスンから離れて家事に奔走しているのか、焦りがあるのだろうか。
お稽古事は、普通の社会人〔家庭人〕なら否応なく距離を置かざるを得ない時もあるので、焦りは禁物だ。
焦ってもどうにもならないのである。
長い目で見て、のんびりやること、しかし、間が空いても、確実に長く続けることが、何より大切なことだと思う。