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少し間が空いたが、声の調子も良かったし、進歩があったので、更に突っ込んだレッスンが出来た、と思えたレッスンだった。

今日のトピックは、身体を使って歌うこと、だろうか。

結論から言うと、歌うときに胸を開いて行くようにすること、である。

かなり多くの初心者の方は、大きな声を出そうとするあまり、胸で大きく吸って、声を出す際に、
地面に向けて、あたかもため息を大きくつくように声を出してしまうのである。
瞬間的に大きな声が出るが、その声は瞬間的であり、コントロールできる声にならない。
また、単に瞬間的に大きな声になるだけなので、声楽的な響きを作ることが難しい発声である。

以上のことから、初心者向けによく考えることは、腹式呼吸が難しい場合は、吸気をあまり意識しないことである。
胸全体を上げてしまうので、いくら吸っても発声としてコントロール出来る吸気にならないのである。
それよりも、呼気をコントロールする方法を覚えた方が得策だし、呼気で息を使い切れば、身体が自然に音楽の流れの中、息を上手く吸える方法を見つけてくれるものである。

呼気というのは即ち歌うときであり、3通りの確認方法がある。
一つは、側腹を横に張り出すようにしていくこと。
二つ目は、腰側を膨らますようにしていくこと。
3つ目は、下腹部、いわゆる丹田をへこますこと、である。

どの方法も目的は同じで、横隔膜を伸縮することが出来るようにするため、である。

よくお腹は膨らまして行くのではないですか?と言われるが、下腹部をへこますように歌うことが上手く出来ている場合は、胃の辺りは逆にせり出してくるものである。だから、この通りだとすれば、お腹は膨らますといえるのだが、お腹を膨らまして、というと
不要なところまで力を入れてしまうために、息を吐かないで、息むだけの声になる。これは息をきれいに吐けない発声である。

お腹を凸ますか凹ますのか?という2つの逆の事象は、実は底の方で一つの目的のために繋がっている、ということが、この点でも判るであろう。

後は、高音域になったら、口の開け方を工夫することを教えた。
特にエは喉が絞まりやすいこと、イも横開きにすると声帯が閉じやすいため、馴れない高音になったら、なるべくアに近いように
発音をデフォルメすることも、最初はとっつきやすい方法であろう。

また、下唇を良く使うことで、喉は開きやすいものである。すなわち声帯が閉じないで開きやすいのである。

というようなことを、イタリア古典歌曲から、Lascia ch’io piangaとLe violetteの練習の中で繰り広げた。
最初に歌ったLascia ch’io poangaでは、単に大声で歌うだけに終始したが、Le violetteを歌う中で、
冒頭に書いた、胸を拡げて行くように歌うことを発見して、上手く行くことを確認出来たのであった。

Lascia ch’io piangaは、フレーズの形が重いので、Le violetteと同じように単純に行かないが、声の扱いは同じだと思って良いであろう。やはり高音に入る際には、彼女の場合は力まないでソフトに対処するほうが得策のようである。

Le violetteは、最初はJaJaJaで母音で練習をした。
喉を力ませないで歌うことと、胸を開くように高くなっていくように歌うことを練習するためである。
これが、実はなかなか難しい。
歌いながら身体を柔軟に使う、動かすというのが、難しいものなのだ。
要するに歌声に集中すると、身体が凝り固まってしまうのであろう。

そのため、胸を開いたり高くすることを、いきなりやるよりも、例えば、両腕を上に上げて行くようにしながら歌う、などのように
身体の一部を代償行為として使う方法は、古典的な練習方法である。
よく昔のオペラ歌手の真似をするときに、両腕を拡げるように歌ってみたり、あるいは両手を組んだりするのはそういう意味である。

身体を使って歌うこと、そして喉を調節することのための、口の使い方、この2点を覚えて行って欲しいが、どちらが?と言われれば
先ずは、身体を使うことを覚えて欲しい。
しばらく、発声が定着するまでは、同じ曲で練習して行こうと思う。