歌いながら口を徐々に開けたり、逆に閉じるようにしてみたり、といった口の開度を柔軟に扱う発声が、意外なほど出来ない人が多いです。

これは、発声の際、いかに喉を扱う周辺の筋支配を固定的に扱っているか?と見ることが出来ると良い例だと思うのです。

固定的、と一概に言えないとしても、明らかに発声に課題がある人に、概してこのような例が多く見られると、やはり発声時の口の使い方が固定的だと考えます。

昔から「構えた発声」となどと言われてますが、声楽は身体を楽器にすると言う意味を、身体の状態を固定的な状態にする、と誤解してしまうのでしょう。
この固定的になる大きな原因が、声量過多にあるのではないでしょうか?

本人に自覚があればこの問題は難しくないですが、意外なほど自覚できないのが声量だ、と自分の経験から思っています。

やはりマイクを使わないで、腹式呼吸で、大きなホールに響く声を出す、という無意識が
あっと言う間に、この声量過多の発声を呼び起こしてしまうのでしょう。

また、名人のコンサートを聴いたり、先生の歌声をレッスン室で聞くと、驚くほど良く響くために、良く響く発声を大きな声を出している発声、と勘違いしてしまうのだと思われます。

口の扱い方だけを例に取れば、鏡を見ながら歌うことが、口を柔軟に
扱えるようになる特効薬です。

鏡で自分の姿を見ると、いかに口を動かせないか?が判るため、頭の回路が目覚めて、口を動かせるようになるのです。

このように、歌う自意識というものは、本人が思っている以上に声だけに集中してしまうのではないでしょうか?