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発声練習をせず、コールユーブンゲンから始めました。
音程の練習で、4度を取り上げました。
ドレミファソの始動で、4度の跳躍を組み入れたフレーズを繰り返して昇り、ドまで昇ったらふたたび下降するというものです。
下降しながら4度を歌うのが難しいようでした。

これらの練習は慣れるのみでコツはありません。
何度も練習することと、一つのテーマでいくつか練習曲がありますから、目先を変えて練習されて下さい。
短い時間で良いですから、一日一回くらい、練習する方が上達します。

コンコーネは6番を練習しました。
全体に地声の傾向の強い歌声になるので、もう少し柔らかくソフトな喉の使い方を練習しました。
単に声の出だしをソフトに扱うことと、高音、ここでは2点Eの声を張り過ぎないようにすること、に留めました。

Lascia ch’io pianga
コンコーネから続いたせいか、地声傾向の声はすっかり影を潜め、柔らかくきれいに発声出来ていました。
そして、高音が鋭い響きで良く出ています。
これは、もう少しソフトに出せる方向を探したいですが、現状の発声を壊さずに少しずつやって行きたいと思います。

Ombra mai fu
高声用で1回通してから、中声用でやってみました。
現状の発声を活かして練習して行くのであれば、高声用が良いですが、発声の基本から徹底してやり治すのであれば、中声用が良いと思います。
迷う所ですが、中声用で中低音の声をきっちり作って行けば、自ずと高音は決まる、と考えています。

アリアの出だしは、声出しの迷いが出るようです。伴奏の低い方の音に意識を傾けておくことで、音程を高過ぎずに感じる意識を育てて下さい。
そのことで、声出しが安定するでしょう。
サビの部分、Soave piuのUは、響きを出すあまり、響きが前過ぎると思いました。Uの深い発音をするために、唇を良く突き出して口の中で響かせるだけで良いと思います。
それからPiuに上がる直前のSoaveのVeの母音の響きが太すぎて♭になります。
これも、口を開け過ぎないで鼻腔に入れるようにすることで、後に続くPiuの響きも深く入り易くなるでしょう。

HA

伴奏合わせでした。
モーツアルトの劇場支配人のアリアは、前半のアンダンテが軽すぎるテンポ感で、後半のアレグロとの対比を考えて重めにしました。
後半は、難しいメリスマがあるため、速すぎないテンポ設定です。
良く響く声で、朗々と歌えています。
中音域の声量は以前にも増していますが、その分高音域がやや気息的な感じが強いように思います。

同じく、モテットからハレルヤ
これもテンポの調整をしました。中音域の声量は増しているのですが、高音域で特にメリスマになると、喉を深くし過ぎではないか?と思います。
そのせいで、気息的になり当り難い声になるために、滑ったり、ブレスが厳しくなります。
母音をEやIにして練習して見て下さい。

オペレッタ「こうもり」から、アデーレのアリア。
前半部分は、ほとんど日本語の歌詞が聞きとれるまでになりました。
あとは、ニュアンスのメリハリがもっとつけば、もっとお芝居が判る歌になるでしょう。
声はあまり出さない部分をどう使うか?という意識を持って、歌詞を良く読みこんでください。
最期のメリスマは、それまでのテンポとは関係なく、ゆっくり落ち着いてやる方が、声にも良いし演技的にも面白く出来ると思います。

長期的な課題ですが、やはり発声のポジションがやや低めにあり、中音域が声量が出ますが、そのために高音域が薄くなる傾向があります。
中低音で喉を開けるのではなく、高く集める発声を覚えるべきでしょう。
これが出来ると、高音のチェンジをあまり意識しないで高く鋭い響きが得られるようになると思います。
そうなることで、結果的にメリスマが楽になるのではないでしょうか?

FT

今日の声は安定したポジションを保っていました。
あまり余計なことをせず、安定することに集中していたと思います。
声の出し始めは、まだ力みのあるせいか、喉のがさがさが残りますが、高音でポジションを低く抑えることが出来ると、雑音も少なくなるようです。

伴奏合わせでしたが、信時潔の「丹澤」は、良くまとまっていました。
高音は、最期のページの「見やる天城も」のところはエモーショナルに出して良いですが、前半の「尾根長くひのきぼら、越えて響く沢音」の「越えて」は、力まないで淡々と出す方が理に適っているでしょう。

中田喜直「夏の思い出」は、やはりテンポ設定でした。
予想外に重いテンポ、というくらいがちょうど良いです。
そうでないと、ただのラジオ歌謡になってしまいます。
どっしりと、たとえばヘンデルのOmbra mai fuのイメージで歌って、弾いてください。
声のニュアンスは、小手先で演技的にならないよう、あくまで自然にシリアスにやるように気を付けて下さい。
必要以上にやったり、演技的にやると滑稽になってしまうでしょう。

トスティのIdealeは、主なことは高音手前でチェンジする意識を持たずに、重心を低く意識して対処することで安定しました。
やはり発声の原点は、声のチェンジ以前に喉の安定ということにどう対処するかだけに単純化する方が、良さそうに思いました。

AC

今回のプログラムの初伴奏合わせでした。
一回で、ほぼ狙い通りのテンポが出せたのは優秀でした。
それでも、微妙な調整が必要でした。

「河のほとりで」はIn tempoにこだわりすぎて、母音の響きの美しさが出ない立体感に欠けてしまいました。
テンポは大事ですが、歌詞の必要な母音の響きは意識して強調するくらいが良いです。
たとえば、S’assoirのwa au bordのor Flot Passe のPaなどです。

これらの母音を良く響かせるように歌うことは最低限必要なことです。
Entendreau pied で始まるフレーズは、ブレスが厳しいのでカンニングブレスを入れてもらいました。
次のNe pas sentirのフレーズも同様に入れて下さい。
あとは、強弱のニュアンスはある程度出すべきでしょう。

サンサーンス、サムソンとデリラのアリアは、伴奏との音楽を作りこみました。
冒頭の部分は、素早いテンポ感を大切にし、中間部はロマンティックに、ゆったりですね。
ピアニストさんは、このパターンをしっかり把握して音楽の全体像を構成して下さい。
あとは、歌い手さんがそのダイナミックをしっかりつけて、メリハリ良く歌ってくれれば成功です!

武満徹「翼」
低音域が多いこともありますが、元々がPop系のこの曲は、声楽作品として扱う場合は、母音の響きのデフォルメに近い扱いが必要と思いました。
たとえば、出だしのフレーズ「風よ、雲よ、光よ~」のそれぞれの単語の語尾の母音は、Oになりますね。
この部分を良く響かせる、と言う意識です。
歌い方の中に、こういう意識を持つことで、声楽演奏としての醍醐味が増すのです。

MM

概ね言えることは、以前に比べて喉を開け過ぎて、音程感のあいまいな声を出さなくなったことです。
それでも、まだその傾向は残っていて、仕方がないですが、恐らく喉を無意識にかばうのでしょうか。
その理由が、良く判ったのが帰り際に彼女の言った言葉、息の流速で音程を出す、ということでした。

息の力は使う場合がありますが、それはどちらかというとロングトーンでクレッシェンドかけたり、ビブラートが必要になる場合です。
普通にフレーズを歌う場合、特に音程の跳躍では息の力よりも、喉の締め具合の方が大切です。
この言い方が不穏であるとするなら、口の中奥の開け具合の調整です。

喉は開けるだけではなく、閉める感覚も大事です。
流速を強める、という考え方があるなら、閉めることで見掛け上の呼気の流速がつく、という理屈です。

私が教える時に、2点F~Gの辺りで、口を開けるな、とうるさく言うのはそう言う意味です。
無意識で開けてしまいますが、開けてしまうと、前述のように音程感が希薄でチェンジの強い声になります。

チェンジの強い声は、いわば声帯が開いてますから、声帯の負担感の少ない発声で一見良さそうですが、響きがあたかも霧吹きの霧のような感じであって、遠くに飛ばない声になります。
母音発声でIやEを使った練習が効果的なのは、この意味においてです。

ただ、確かに喉だけの意識だと、これらの母音だけでの高音発声は負担が大きくなるでしょう。
そこで、鼻腔発声の意識が必要になるわけです。

声帯はしっかり伸ばして使いつつ、太過ぎる当りにならないようにするために、鼻腔に響きを通すように意識することで、細さのある響き加減が生まれます。
Iなどで練習する際に鼻の穴を開けることで、意識を鼻腔に持ちやすいと思います。