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発声練習は、声の細かい揺れが気になり、その点を調べて対処しました。

このことについての彼の感覚を基に考えると、どうも軟口蓋を上げる意識が強すぎ、喉頭を引き上げる筋肉が
過緊張に陥っているのでは、と思われました。

それで、音程も気にしないくらい、脱力をさせた発声に徹しました。
基本は胸に楽に当てるように声を出すこと、でした。

しかし、ブレス時に声の準備を作ってしまう癖が抜け難く強いため、この時点ですでに過緊張だと感じられます。
仕方がないので、とにかく軟口蓋だけは一切意識しないように、という方法で練習しているうちに、
響きが少しずつ変わって来たことと、揺れが抜けて来ました。

それからこの発声の課題で大切なことは、声の響きを集めようとしないことです。

声を出すというよりも、息をハッハッハ・・と言う具合に、胸に息を当てて、ゴリラのように太く息で当る声を出してみました。
そこから感覚的に類推して、低音域の声に持って行ったのです。
これが、一番効果的でした。

恐らく、この練習が功を奏したことから考えても、声を集めようとしていたことも、声帯近辺の過緊張を起こしていたと思います。

シューマンの「詩人の恋」を7曲目まで、ざっと練習しました。
今日の新曲は7曲目となります。
しかし、実際歌ってみると、さすがに身体も大きく、大きな共鳴腔を持つだけあり、中低音の声は太味のある
良い声が出せています。後は、もっと喉や周辺の諸器官が脱力出来ると、もっと声量も出るし良い声になるでしょう。

6曲目のIch grolle nichtを高音バージョンでトライしましたが、
どうしても声がひっくり返ります。

ハミングで練習してもひっくり返るので、私がやってみましたが、自分の場合は1点Gくらいから喉を少し上げるように
しています。例えば、高音発声の5度スケールであれば、最高音の5音目だけを、微妙に喉を上げるようにすると、
自然なチェンジが出来る、という感じです。

これが、今日は少し功を奏したようで、ひっくり返らないで2点Asを出せるようになりました。
ピッチがまだ少し低いですが、練習で何とかなりそうなレベルにまで行けたのが大きいです。

オペラアンサンブルの補講とリハーサルの感想

平均して2回のレッスンだけで、いきなり通し稽古になったわけで、
今回のような振付と進行のあるステージがまったく始めてのアマチュア達が
多数を占めた割には、良い出来だったと思います。

勿論、まだまだ良いステージを目指すには課題が多いです。

TSさんのフィガロとKRさんのスザンナ。
比較的に無駄のない綺麗な動きでした。減点になる要素が少ないので、安心して見ていられました。
歌は、TSさんの歌詞が明瞭でした。KRさん、もう少しはっきりしても良いです。

FTさん。
動きの基本は、何と言っても歌詞の内容、芝居のシチュエーションです。
ケルビーノを相手に、フィガロはどんな意味があって、このアリアを歌うのでしょうか?
しかし補講を終えて、リハーサル会場では見違えて良くなりました。
テンションが高くなったことと、慣れたことが原因でしょう。
やはり練習はたくさんするべき、と思います。

AYさんのスザンナさん、動きに積極性が出てきて良かったです。あとは、声が大切です。
声の調子を出来る範囲で最良の状態に持って行ければ良いですね。
言葉ももう少し明快になると良かったです。

TFさんのマルチェリーナさん。こちらの指示通りの軽快な動きが良かったです。
帽子が良いですが、顔が見えない点を直して下さい。またもしかすると顔が下向きになっているかもしれませんね。
恥ずかしいですが、顔ははっきり堂々とお客さんに向けて下さい。

ACさんのケルビーノさんは、自分でイメージした積極性を買いたいと思います。
後は、それをもっと大きく、はっきりと、見ている人が判るようにやることです。

HAさんのアリア、お笑いの演技の後で、完全に後ろ向きになるアイデアはいかにもパントマイムか
大道芸に発想で良かったです。
台詞の面白さ、間合いが大切なので、更に練習されて下さい。

SAさんのスザンナさんは、動きやほおきを持つアイデアなど、これも大道芸っぽくてGoodでした。
叫び声も良いです。
後は、「開けて良早く!」のタイミングだけ、盤石なものにしてください。

GHさん、動きに気を取られる傾向がありました。
やはり一番は音楽なので、くれぐれも歌の入りのタイミングだけは、しっかりお願いします。

OMさんのスザンナさん、中低音の声は未だ発展途上ですから、今は丁寧に歌って下さい。
ただし、テンポを一番大切にしてください。そうでないと、アンサンブルが崩れて、相手が
歌い難いですから。動きは、動くことと、止まることをメリハリつけて。
止まっている時は、じっとしているように。

SMさんの伯爵夫人は、アリアを歌う積極性、特に後半のAllegroに移る時に場所を移動する勢いがありましたね。
ただ、移動は一歩だけで良いと思います。
気持ちを切り替える表現なので、それだけ出来れば気持ちの切り替えは表現出来るでしょう。

WHさんとSMさんの二重唱は、アンサンブルが良いので、後は本番で動きを明快に、大きくを
意識されて下さい。

最後のWHさんのアリアは、登場人物が現れたら、もう少しそちらを見て動けると良いと思いますが、
無理はしないでください。歌が主役ですから。

最後のフィナーレは、とても面白く出来て、シュールなイメージすら出ていました。
私個人の考えとしては、狙い通りで、言うことはありません。

後は、本番では、WHさんの立ち位置は、もう少し前に出ること、逆に登場人物は、やや後ろで見せること、でしょうか。
両者があまり近いと、後ろの登場人物の動きがうるさくなってしまうでしょう。

まとめ・・・

今回のステージは演技ではなく、振付であるということが基本です。
見た目が綺麗で音楽と自然な一体感があれば、どのような動きでもOKです。

あるいは、足りない音楽を補う要素として、と考えても良いでしょう。
その点が、古典的なオペラの演技とは、まったく違う要素だと思って下さい。
どちらかといえば、ダンスの振り付けに近いといっても良いでしょう。

また「フィガロの結婚」から歌と音楽をもらっていますから、外人の登場人物ということになってますが、
日本語で歌うわけですし、日本人の意識でやってもらった方が良いと思います。

今回のステージの雰囲気の根幹として私がイメージしたことは、大道芸人が道路でフォーマンスをやって、
お客さんから投げ銭をもらうようなものです。

一流の真似ごとではなく、個性的なB級を目指したいと思います。