OM

最後の伴奏合わせとなった。
日本歌曲の「平城山」からだった。

結局、これが一番難物で、何度も合わせ直しとなった。

声とピアノの音量的、音楽的なバランスが悪く、曲の表現が活かされず噛み合っていない感じ。
音域が彼女には低いために、特に出だしから盛り上がり前までの声量が、ピアノに負けてしまう。
ピアノは丁寧に弾いていても、歌の表現の力が感じられないから、歌とピアノが反対方向を向いてアンサンブルが成立していない。

そこで練習したことは、冒頭の声の力強さを出すために、地声になっても良いのでしっかりMFの声を意識すること。
伴奏はテンポを速めた。四分音符58だったのを。66くらいにした。
四分音符が58だと、声が流れない。
言葉を語り進む意識を持って歌うべきだが、音符を置いて行ってしまう。
これでは、力が出ないしブレスも持たないだろう。

曲の形式によって、多少違うこともあるだろうが、歌を歌う時の音符の扱いは、音符はグラフの座標軸であるということ。
大事なのは座標軸という点を見せることではなく、座標をつないだ線の形が大事。

声量が出ないので、伴奏の音量もかなり抑制してもらった。
ソフトを使っても良いので、左手のメロディは滑らかに。
イメージだが遠い山からはるかに聞こえて来る、篠笛のメロディを想像してほしい。
ピアノの右手は篠笛をイメージして。

林光の「誰が明かり消すのだろう」は、前回音楽の構成を教えた通り、良く歌えていた。
子音の誰が~のDが聞こえないのが惜しい。Dの子音発音は、最後まであきらめずに出せるように練習してほしい。

モーツアルトのコンサートアリア、大変良く歌えていた。
特に中間のAndanteの楽節が丁寧に柔らかい高音発声が生えていた。
モーツアルトらしさが表現出来ていた。
後半のAllegroになると、高音の締まりが意識されるが、調子次第となる。
見ていると、ブレスのフォームと上顎で歌う高い響きが未確立と思った。
まだ喉に頼っている。
勢いで出さないで確実なブレスで、柔らかく処理出来ると、もっと良い高音になるだろう。

「ムゼッタのワルツ」中高音の声の響きがとても良かった。かなり進歩している。
ビブラートも出始めていて進歩している、と感じられた。
上顎から上で響く明るい響きが良いし、最後の最高音も響きが美しさを感じさせている。
調子が良ければ、かなり伸ばして面白くしてもらいたい。