2014年9月25日

HM

mimimiそしてjajajaと発声練習をやって始めた。
下あごを抑えると、非常に歌いにくそうであるし、声もどこかに力が入ってしまって、やや卑屈そうな響きに聞こえる。
高音の換声テクニックがほぼ彼女の中で出来上がっているのだと思った。

想像するに、彼女の場合の高音発声は、喉を下げる働きを中心にして声帯を開いて出していると思われる。
下げるほうにバランスが強いため、喉頭の引き上げ筋をあまり働かせていないのではないだろうか?
それが、彼女の換声点から上の高音くの声の響きを作っている要素だ、と推測される。

例えば、今日のレッスンでやったこととして、舌が奥に入らないようにするため、舌先を、前歯の下につけるようにして、少し前に出し気味で歌ってみる、ということを指示した。
これは、特に換声点から上の高音の声区。

そうすると、確かに明るい声が聞こえてきて、聴く限りでは成功、と思ったのだが、本人は喉の苦しさを覚えたようである。
正に理論通りと思ったのは、舌先を前に出せば喉仏は自由に下がれない状態になるため、普段は使ってない声帯の後ろ側の筋肉を、働かせざるを得ないためではないか?
普段使わないところを使ったことによる、感覚的な違和感であろう。
これも、慣れないと違和感は消えないだろう。

ヘンデルのLascia ch’io pianga 全体に声質が明るくなり、ピッチの高さが活きている声になった。
ソプラノらしい自然な響きで、好感が持てた。
また、レシタティーヴォの中低音の声質も、共鳴感のある声になり、とてもノーブルな歌声であった。

アリア部の入りは、テンポどおりと思うよりも、かなりゆっくり目で、この曲の味わいを充分出してほしい。

モーツアルトのZaideのアリア、Ruhe,sanft mein holdes leben
テンポを一般的な四分音符=72に速めて伴奏を弾いた結果、ブレスが楽になったようである。
ブレスが楽になったため、曲の全体にわたって、発声に余裕が出来、安定した歌声で全編を通して聞けるレベルになった。
一点だけ、最後のほうでブレスがあいまいなまま、最高音の5点hに上がる部分があり、これが最高音の声を不安定にする原因になるので、充分注意してほしい。

今日のレッスンで、総合的に感じたのは、現状の発声で、充分に様々な曲を歌うことが出来るレベルに達していること。
もし高音発声を変えるのであれば、換声点から上の発声方法そのものを変えようと思わずに、換声点から下の中低音の発声を変えることから始めるのが得策ではないか?
こちらの方が、気分的にも生理的にも、不愉快な思いはないだろう。

ただし、これも声質の変化が表面化するため、彼女の歌声の美学に合わない点も出てくる。

このように、発声を変えようとすると、一時的に、生理的に合わないことなども、ある程度は体験しなければならない。
このため、発声を変えようと思う強いモチヴェーションが出来たら、挑戦してみれば良い、という程度ではないだろうか。