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ヴェルディの歌曲3曲の練習からレッスンを始めました。
Stornelloから。

ところで、どうしてヴェルディの歌曲なのか?
というのも、イタリア語の歌の方が、古典的な意味での西洋的な表現の勉強になるから、と思いました。
それは、女性が歌っても必要とされる「威厳」とか「強さ」というようなことです。
日本女性がクラシックを歌う場合(学ぶ場合に)に、もっとも欠け勝ちな一面ではないでしょうか。

そして仮にフランスものを歌うときでも、この歌唱表現の基本がわかっていると、より土台のしっかりした音楽になる、と思っています。
私がイタリアものを勉強させる意味は、絵でいえば基本のスケッチを徹底させるようなもの、と言えば良いでしょうか。
あるいは、いきなり印象派の絵や抽象画を描くのではなく、古典的な遠近法とリアルな描写、色使いの基本や古典的な黄金分割による構図を学ぶような意味と思ってください。

Sei romanzeのIl tramontoは、これも音域は彼女には低目ですが、彼女の中低音は侮れない良い声質を持っています。
これらの一連のヴェルディの歌曲を与えた意味が、予想通りの展開になったので喜ばしい限り。
特に、最後に歌ったNon t’aacostare all’urnaなどは、一見男の唄と思うだろうが、女性がたくさん歌っている。
そういう意味を、歌うことで、体感し分かるようになってほしいと思います。

強いて言えば、中音域、特に換声点の前の5点C~Eくらいが、やや弱い印象で、もう少し前に出る張りのある声質が得られれば、この手のイタリアの歌にうってつけの表現が得られるのだが、
やや弱いのが惜しいと思った。おそらく声帯が開いてしまう傾向がまだ多いのでしょう。
また、時々5点Gくらいの換声点直後くらいの音域で声が上ずる傾向も残っています。
これもコロラトゥーラ系に換声してしまうバランスの問題なのでしょう。
この点も、もう少し声の響のバランスのとり方に工夫が必要と感じました。

ドビュッシーの「アリエルのロマンス」を譜読み程度に練習。
声のことはだいぶわかって来たので、逆に歌詞の読みをしっかりすることで、自然に声の音楽性が増すだろう、と考えます。
基本的に正しい発音を把握したうえで、滑らかに朗読できるレベルまで読みだけで練習すべきでしょう。
それが出来れば、歌うのは簡単なことになるでしょう。

最後にルチアの「狂乱の場」を練習しました。
指摘したのは、中低音域の声が時々口先の声になってしまうこと。
弱声で歌うにしても、良く喉を開けたフォームを崩さない基本を確かに歌ってください。
それで高音発声が出来なくなることはありませんし、大事なことは冒頭に書いた、歌、音楽の品格に関わることになりますので。