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発声練習では、舌根や下あごの関節に力を入れないで歌う方法を教えました。
それは、姿勢の話がメインです。
姿勢が決まると、顔の位置が決まり、結果的に喉上の力む箇所の脱力が可能になるからです。

これで決まる姿勢は、顔が普段よりも後ろに位置すること。
いわば、顎を引いた顔の姿勢です。
この姿勢は、身体全体の重心の低さも関係します。
私が教えるのは、重心にする足を後ろに少し引いた状態で、その足の上に上記の上半身の姿勢を乗せるように立つ方法です。
重心ではない足は、軽く「休め」の姿勢になります。

この姿勢で、最初は力んだとしても動かないで歌ってください。
特に顔を動かさないこと。
そうすると、歌詞発音が不明瞭になるはずです。
なぜなら、舌が力まないからです。
歌詞発音が明快になるのは、逆に言えば声楽的には舌に力みがある証拠なのです。

それから声を出す場合は、顔を動かして喉を変えないで、腹筋を使ってください。
特に側腹を少し拡げるような意識です。

イタリア古典のNel cor piu non mi sento
彼の良い所は、歌の集中力が非常に高いことです。
ただ発声している歌、ではなく、身体を使って歌おうとしています。

この曲に関していうと、歌詞がイタリア語であり外国語であるせいか、メロディだけに集中してしまっています。
その結果、歌っている人間が、男なのか女なのか?不明瞭で、結果的に中性的な歌手イメージになってしまいます。

歌詞の意味から考えても、男性として歌うべきでしょう。
そういう意識だけあれば、良い唄になると思いました。

越谷達之助「初恋」
冒頭のメロディで「痛み~を~」の「み」が高音ですね。
顔が前に出ないように、良く引いた姿勢で声は鼻根辺りを目がけて出してください。
中間部のメリスマはとても良いです。思い切りがかえって表現になっています。

「見上げてごらん夜の星を」
これは、何も言うことがない、くらい彼の歌への思い込みと集中力が良いです。
そのバランスが良いので、鑑賞に堪える歌であり、パフォーマンスになっていると思います。

NM

ハミングによる練習をしてから母音練習をしました。
今回は、微妙に中低音の当たりがついて来た感じの声の響きになっていました。
やや、硬い声でしたが、明らかに地声とは違う響きで、大きな換声点は5点F前後に感じられたので、
正しいと思います。
後は、本人が慣れないことにいかに慣れて行くか?ということに尽きるでしょう。

曲はフォーレの「ネル」から。中低音は、発声の迷いがあり、響きが出てきません。
これは、喉が温まるか、発声に慣れるか?という問題と判断し、曲を先に進めて行きました。

「朝の歌」こちらは、声が乗りやすいようです。
途中のクレッシェンド・デクレシェンドの場所とその効果について指摘したら、良い音楽性が出てきました。
全体にバランスの良い演奏になります。

「グリーン」テンポの緩急に気を付けて、なるべくそのメリハリを大きくするのがコツでしょう。
低音は地声でも良いですが、ピッチが低くなりやすい点に気を付けてください。
最後のPlus lentが、この曲の最も要になりますので、十分にゆっくりと、そして響いた声を大切に歌ってください。

「ロマンス」は、抑制的な声が効果的な曲で、全体に彼女の現在の声に合っています。
声の変化の大きさは、2回目のアニメの指示からで良いと思います。
この曲は非常に抑制の聴いた歌声の中に、火花が散るような中間部という印象が強い印象を与えるからです。
終わりの低音は、地声で良いですがピッチに気を付けてください。

TS

ショーソンの「はち雀」
基本的には良く歌えていると思います。
声の響きのポイントを点で捉えるのは、ある面で正しいですが、すべての音域を同じようにすることが、
たとえば中低音だと、不安定になる原因にならないか?と思いました。
それが、換声点を超えた高音域であれば、良いかもしれません。

バイオリンの弦も、太い弦をじっくり鳴らす時の擦り方と、高音用の細い弦を擦るそのやり方には
違いがあるでしょう。
レッジェロということであれば、その点の違いを明快にして、換声点より前の声とその後の声、更に高音の声、という
区分の違いを意識することが、発声を進化させる要素だと思います。

「オランピア」
振り付けをということで、ロボットのパントマイムを考えました。
結果的に、音楽から動きを付けますので、それが発声にも良い影響を与えたと思います。
特に、カデンツの高音は良い意味での勢いが付いたせいで、響きが出ました。

ただ、真っ直ぐ立って歌っているだけだと、思い切りよく息が伸びないためだと思います。
これは、言い換えれば構えてしまっているのでしょう。

歌う姿勢として、手を動かしてはいけないとか、じっと真っ直ぐ立っていなければいけない、という面よりも、
身体の芯は真っ直ぐしている状態で、全体は自由に動くくらいの意識的な余裕がある方が、声は伸びるのではないでしょうか?

OM

伴奏合わせでした。
ドビュッシー「月の光」は、中低音で時々良い声が出ていましたが、不完全でした。
この中低音の響を高く集めて前に響かせるように。
多分、楽譜に書いてある強弱や、曲全体の軽いイメージを意識しているかと思います。

ただ実際のホールでの演奏なので、あまり軽いとか重いとか?という区別をつけないで、正しく喉という楽器を扱う、ということだけに専念してください。
その結果として、表現が出てくればよいのです。
従ってこの曲の中に出てくる、高音発声もオペラの発声と同じように、しっかり出すべきでしょう。

「椿姫」の「そは彼の人か、花から花へ」は、高音発声が非常に良かったです。
特にロングトーンで伸ばす声には、きれいなビブラートがかかり、また声の響きにもきれいな芯があって、良かったです。
彼女の今持っている高音の最高の声が聴かれます。

惜しいのは、中低音の発声で下あごで発音してしまうために、響きが生っぽく、真のレガートな歌唱になっていないことです。
このため、せっかく高音のロングトーンやメリスマで良い声が出ていても、全体的にはまだ素人っぽい唄になってしまうことです。
喉が強いのか、それでも低音から中高音にかけて声が前に出ているのです。

せっかくですから、中低音で良く響く声を、よりレガートに器楽的に聴かせるためには、下あごをばくばくと下ろして発音する発声から、
早く脱却してほしい所です。
なかなか難しいことですが、下あごを縦に下ろすのではなく、首側に引き寄せるように発音・発声することです。

一か所、高音のメッザヴォーチェを伸ばしてから終わるところを一息で行きますが、低音に降りてからのピッチに気を付けてください。

何かこのアリアでは演技的なことを意識しているようですが、声にだけ集中するほうが良いと思います。
もっと歌いこんで、何度も歌ううちに、自然に演技力がついてくることに任せるほうが良いでしょう。
声の基本がしっかりすることが先決と思います。