OM

ベルリオーズ「真夏の夜の夢」から「バラの精」
長丁場でドラマティックな歌です。
このため、曲のパート毎のテンポ設定の変化を明確にしました。
つまり、起承転結をはっきりさせるということです。

基本テンポは、指示されているものより少し早めにして、流れを大切にしました。
それから、音楽の変化に応じて少しアッチェレしたりする点も見つけて、規定しました。

マスネーの「マノン」から「私が街を歩くとき」では、改めて口の開け方を指摘しました。
口を縦に、頬が凹むような意識で唇を反らすように開けてもらいました。

このことで、喉が上がらずに音程を保った深い発声が可能になります。

これを意識しないで口を横開きにすることで、5点Cから上になると喉が上がり、結果的に換声点の発声が締った細い響きになり、聴きづらい声になります。

品格のある、クラシックの声楽発声の基礎になるので覚えてください。

また、これを5点bまでは、口を縦に開けることと上唇で担保する発声を覚えてください。
このことで、5点b位の声の響きが広がりを持つようになり、ホール全体にきれいに響くようになります。

同じように、ラ・ボエームからマゼッタのワルツを練習しました。

基本的にとても品の良い演奏にまとめられていると思いました。
口の使いかたさえ気を付ければ、充分に良い評価を得られるはずです。
ピアノ伴奏も、基本のしっかりした演奏で、これも高い品格に寄与していました。

この曲は、歌い手のキャラたーで誤解されますが、音楽としては気品のある演奏を心がけなければなりません。

最後にラヴェルの「シェエラザード」を練習しました。

これも長丁場ですので、楽節毎のテンポ設定を確認し、リズムの不確かな個所を整理整頓しました。
それから、ピアノ音楽も重要ですので、ピアノのリズムとフレーズの扱いについて整理整頓しました。

ラヴェルは8分音符系のリズムが細かく、高いソルフェージュ能力が要求されますので、まずはリズムとテンポをしっかりさらってください。
そうしないと、発声も正しく確立できないからです。

TM

弾き語りのフランス語は、かなり明快になってきました。
後は、鼻母音の処理でした。
鼻母音は、自然に長母音化あるいはアクセント化される傾向があるので、文節の中では意識してだすと良いこと。

それから、どの曲も同じですが、鼻母音の種類E A Oの3種類の違いを明快に。
特にOの鼻母音は、ほとんど口先を閉じるくらい。
鼻母音ではないですが、発音記号がUのAmourなどのUは、これも口先を閉じるくらいがフランス語らしいです。

歌では、声域が地声領域で歌われるときは、フレーズ終わりの母音をあまり強調して伸ばさない方がきれいです。
特にMuguetの語尾のEは、ふつうに口を横開きにすると、かなり強調されて聞こえます。
前の円唇母音yの位置にアクセントをつけて、その口の形のままEを発音すると、自然にディミニュエンドしてきれいに終わると思います。

日本語の曲は、語りの部分と歌う部分を明解にする方が良いと思いました。
語るところは、スタッカート気味に歌ってちょうど良いです。

SM

発声練習は、最近よくやる方法ですが、Mを付けて下降形で始めます。
これは、Iの母音による声帯が良く伸展した響きで、中低音のピッチの良い密な響きを確立し、それから母音をAに変えて練習というやり方です。
母音のAになると、彼女の場合たちどころに声を飲み込んでしまいます。
これは、声帯が開いてしまうせいで、当たらない声の響きを共鳴で増加しようとするために、声を前に出せないで奥に引っ込めてしまう、という理屈です。

原因は、声のチェンジの問題があって、根本的に中音域の声のチェンジに難があるからです。
つまり胸声と頭声のミックスが上手く行ってないのです。

かなり過激な方法ですが、もっと喉そのものを意識してみることです。
ただし、完全な地声領域でやってはいけません。
中音域の4点F~5点Cくらいまで、練習すると良いでしょう。

もう一つは母音による歌の練習です。
歌詞発音になると、母音発音の癖のため、もろにチェンジの問題が顕在化します。
まず、母音のEで、声を当て前に出すようにして歌ってみます。

声の当たりがきれいに感じられ、その響きでフレーズを歌ってブレスが持ち良い音程で歌え、喉に違和感や痛みを感じなければOKです。

サン・サーンスのサムソンとデリラ「私の心はあなたの声に花開く」そしてフォーレの歌曲集「ある日の詩」を練習しました。
一応、歌詞発音で練習しましたが、現状の発声でも良いレベルにはありますが、声の問題は残っています。

最後に歌詞を音符のリズムで朗読する方法を教えました。
この時、声を返さないで地声のなるべく高いトーンで行うことです。
これをやった後歌ってみると、声に変化があると思います。

この練習方法であれば、歌声ほど近所迷惑にならずに、彼女に固有の喉の問題を練習できるでしょう。

MY

発声練習は、彼女もMiで下降形で始めました。
これが、予想外に良く響く声で、彼女の素直な歌声の素質を感じさせるものでした。
母音をAで子音Mを付けて、下降形もうまく行きました。

これで低音域からの上行形でも同様にすんなり行けばすごいですが、さすがにこれは低音が地声化し、中音域まで地声を持ち上げてしまいました。

再度Maの下降形で中音域の良い声の確認をし、再度低音から上行形をやったところ上手く出来ました。
この辺りの勘の良さは評価できるものです。

初体験のオペラアリアということで、ジャンニ・スキッキの「私のお父さま」を練習しました。
譜読みがまだ完ぺきではないですが、その分を、主に高音発声のやり方の指導に当てることが出来ました。

彼女の場合は、本当に話が簡単でした。
最高音、この場合5点A♭にオクターブで跳躍する場合、前の母音発声で口を縦に良く開けておいて、舌だけで子音発音し、声を吐き出すようにすることです。

多くの方が、オペラ歌手の美しい高音の弱声発声をイメージするようですが、最初から弱声発声を目指すのは無理があると思います。
あるいは、ファルセットでも出来ますが、この場合チェンジ前の中音域との整合性を取るのが難しくなります。

そのようなわけで、高音をはっきり思い切って出す、ということ。
思い切って開放するように声を出すことが、高音発声では大事なことです。
つまり、脱力ということの意味は肉体の開放ということにつながる、ということを話しました。

この発声で訓練が必要なのは、歌詞発音のために子音がつくことです。
今回の曲の場合、Belloですから、Lの子音を口を開けた状態で舌を良く上げて行うことです。

我々日本人は、下顎で子音と母音を同時に発語する習慣があるので、この舌だけを柔軟に動かすのが苦手なのです。
この点を抑えておいてください。

この後、滝廉太郎の「花」と美空ひばりの「川の流れのように」を練習しました。
いずれも素直で明るく音程の良い声で、好感度の高い唄を歌えていました。
「川の流れのように」は、予想外の高いキーでしたので、これは練習と歌いこみがかなり必要と思います。