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発声練習の声は、およそ1オクターブ半の音域では、まとまってバランスが良かった。
4点Cで始める下降形5度スケールで始めたのが良かったのかもしれない。

曲は三善晃の「ほおずき」から。
ちょっとした、たとえば3度くらいの跳躍音程が、例えば換声点前近辺の音域にあると、喉が上がって不安定になりがちなもの。
この時、チェンジを意識しなくても下あごを動かさないで対処することが、結果的にチェンジにつながること。
この曲では、冒頭の「ほおずきよ~」の2番目の「お」母音である。
また曲の入りの「ほ」母音の成功は、前奏でたっぷり聞くことが出来る音楽によるハーモニーを良く感じて歌い出すことである。

次の「落葉松」では、冒頭の「からまつの~」で連続する4点Aの声のピッチが気になった。
微妙な音程の違いだが、正しい音程かどうか?という抽象的な技術論ではなく、和音内のどういう位置を占める音程感か?
ということで決まって来るだろう。

また、全く違う観点だが、歌を歌う者の感情の置き所によっても、この微妙なピッチの違いが出てくるだろう。
それは言い方を変えれば明るい声か?少し暗い声なのか?

どういう立場でこの歌詞を歌うのか?という歌い手の歌詞理解、音楽理解が重要になるだろう。
男性なのか女性なのか?哀しいのか嬉しいのか?そういう人間的な感情や性別、人物像までイメージしてみることで、歌声に実態が出てくる。
何度か通してみたが、最後にとても良い演奏になった。

ドイツリートでは、シューベルトのMorgenliedを取り上げた。
このDdurという調性であれば、声のポジションは自ずと決まるだろう。
彼の場合は持ち声よりも高いポジションをイメージしていないか?
腹の付いた声、というのは決して大きな声ではなく、いわゆる「落ち着いた声」である。
彼の喋り声の落ち着いた声は、良いハイバリトンのそれであるから、それを意識した歌声で歌えば良いのだと思う。