EM

今回のレッスンで思ったことは、彼は良く発声を考えて、また曲の中身を真摯に歌っていることです。
声は、まだまだ発展途上であり、いわゆる狭い意味での声楽的な趣味嗜好上で云う「バリトン」らしい声には
遠いのですが、歌曲を歌ってそれを普通の人が聞いて、素朴に感動できる歌のレベルには充分近づいている、と思えました。

ここで云うバリトンらしさ、とか、狭い意味での声楽らしさ、という声は、もっと鼻腔の響きを作ることではないでしょうか。
そのような声がなぜ必要か?は、声質の趣味の問題といこと。
クラシックらしさ、外国の、それもドイツ語を歌うドイツの声らしさ、とでも言いましょう。
また、発声的にも、鼻腔の響きを発声出来ると、喉で歌わないで済みますので、効率良く声が響き、声量も増すでしょう。

シューマンのDu bist wie eine Blumeは、前回に比べると、若々しく純粋な喜びに満ちた歌声で良かったです。
発声のこともありますが、やはり内容を良く意識して歌うだけで、声は活き活きするものです。

シューベルトのGesange des Harfnersの2番は、曲が本来持つ激しい悲しみが強い表現なので、
歌手が声で何かをする必要はまったくなく、ただ歌詞を良く理解してイメージ出来れば、良いくらいです。
彼の声は必要充分な音楽性を表出していると思いました。

3番では、歌詞の内容と音楽から類推した表現を考えてみました。
ロマンティックではなく、淡々とドライに歌うように考えてみてください。

最後にシューマンのWehmutは、歌い込みが足りないと思います。
この曲には、もっと歌声の深みがほしいです。歌詞の意味を深く感じて、何度も何度も歌い込んで行って下さい。
そうすると、自然に歌声が熟成してくるでしょう。

FT

発声への理解がこのところ進んできたようです。
本人も、どうするとどうなる、という辺りが大分判って来たようで、こちらとのレッスンにおける
球の投げっこみたいなとことが、面白くなってきました。

大きな声を叫んでも駄目だし、小さくこじんまりするだけでも上手く行かない。
ほどほどのエネルギーをブレスと声の力に分散する、バランス感覚の辺りのことが判って来たことが、一番大きいです。

声の響きの場所は高く、鼻腔や頭部に意識を持てるような声。
喉で鳴らしてはいけないこと。

トスティの歌曲から2曲、L’ultimo bacioとRidonami la calma

ここでは、彼にも朗読を勧めてみました。
朗読をする際には、きちんと発音すること。特にアクセント位置を正しく把握して、歌うようにアクセントを伸ばして
フレーズ全体を、アクセントを中心としたリズム感で朗読できること。

特にアクセントの部分では、高く頭部に響かせるように意識すると良いでしょう。

初恋では、高音の声の処理のことです。
テノールのメタリックで切れ味のよい高音を聞かせるような曲調ではないでしょう。
その意味においてと、彼の発声の発展途上を考えると、普通の意味での「張った声」は、避けたい所です。

張った声がダメなのは、彼の場合は胸声が強過ぎて、喉を痛めやすいこと。
また仮に喉を痛めなくても、喉が持たないです。
それほど強い喉の持ち主ではないこともあります。

ピアノ伴奏ですから、ピアノの柔らかい響きに溶けるようなイメージを以て、歌うイメージを大切にすべきだと思います。

SNM

発声は、現状から変わって行くには、ある程度時間がかかるでしょう。
それくらいに、現時点でも非常に上手く声を扱えるからです。
本質的に喉が柔軟で、音程感の良い声が出せる、才能を持っています。

そういう根本が出来ているので、現状でも、美しい歌声の音楽演奏が、出来てしまいます。

そのため、ここからより上級を目指そうとするならば、相当に意識されたモチヴェーションが必要と思います。

課題としては・・・

どうやって、更に声の響きの密度を増すか?だと思います。
良い音程のある声とも関係がありますが、ファルセットの混ざり具合がやや多いため、
ほんのわずか声帯が開いた傾向の響きになっているのだと思います。

現状は少しスカスカした感じがあります。
これは、喉で押さないように気を付けている発声が身に付いているからでしょう。

声を換えて行くには、ある程度のストレス(負荷)をかけながら、少しずつ少しずつ
声の機能が変わって行くのを待つしかありません。
これをやればOK!という上手い手法はないです。

フォーレの「月の光」は、本当に微妙な違いですが、フレーズの跳躍で、声の線に段が付くような感じがあります。
あるいは唐突に上がる感じでしょうか。単に滑らかに丁寧に処理すれば良いことかもしれません。
旋律を歌う際には、特に音程移動の際に、極力、滑らかに処理することを意識してください。
発声としては、低音の声の響きがもっと高く集まると更に滑らかに出来るようになるでしょう。

「サンソンとダリラ」は、まだ譜読み途上ですが、なかなか良く歌えています。
特に低音は、声量はないですが、とても滑らかにきれいに処理出来ており感心しました。
歌よりも、歌詞の朗読、発音をしっかり見ておいてください。

IS

発表会の声、普段のレッスンの声など聴いて来て、彼女の声がソプラノのレッジェロな響きが合っているのかな、
と、最近は思うようになりました。

また、実際、声質の問題とは別に、発声として特にト音記号の中の音域で、胸声が強い傾向があるので、
この音域のピッチをもう少し高めになるように練習を積み重ねたいこともあります。

練習方法として、もっとも判り易いのがハミングでピッチを合わせること。
ハミングの声質は、なるべく声帯の合った響きで、ファルセットにはしないこと。
以上の2点です。

音程を高く合わせようとすると、響きは自然にファルセットになりやすいところを、どのように声帯のきっちり合った声にするか?
という感覚を磨いて下さい。

ドボルザークの「母の教え給いし歌」
グノーのAve maria
いずれも日本語歌詞で歌ってもらいました。

日本語であっても、母音は喉で作らないこと。
軟口蓋で母音発音が行われるような感覚を養いましょう。
そのためには、下顎の動きを抑制して、上あご、上唇、頬などを駆使して発音して下さい。

それから、歌詞が理解出来るような、歌詞の扱いを大切にしてください。
それは、朗読をやってみることで、言葉を一つのフレーズで語る時に、どこにアクセントが来て、
どこを弱めるか?というようなことを、歌のメロディの中に反映させることです。

決して、母音発音がはっきりくっきりすれば良いとか、子音が立てば良いということではないです。

Batti batti o bel masetto
Il bacio
こちらも日本語と同じで、母音は軟口蓋で作ることと、歌詞朗読をフレーズで把握して朗読出来ること。
そこから、メロディーを歌う際に、自然な言葉の抑揚が表現されて、良い意味での歌詞の判る歌になります。
そのことが真の意味での歌の音楽性の昇華につながるでしょう。