今日はまつながさんとはらさんの二重唱を聴かせてもらった。
二人で一緒、同時に発声練習をやったが、一人が二人になるだけで
これだけ声のパワーが増すのだな、と改めて驚いた。
ちりちりちり、と倍音が良く出ていた。

ヘンゼルとグレーテルの曲と、モーツアルトの手紙の二重唱2曲だが
音楽的にはヘンゼルとグレーテルを良く練習した。
この曲は改めて二重唱で聴くととても美しい曲だ。
シンプルで二重唱らしい。
女性の可愛らしさが良く顕れている。

二重唱はバランスなので、どちらがどうという問題ではないが、まつながさんのソプラノ側を抑えるよりも、はらさんの低音を出す方が良いと思った。
また、下側の声は改めて明るく高く響かせるべきだな、と感じた。

上の音程とのバランスで、はらさんの低音の音程を少し♭気味にした方がハモるケースがあったし、まつながさんの最後のHeavenのミの音は
上ずる傾向があったので低めにしてもらうと、丁度良かった。
それにしても最初の音はDだったか、まつながさんは無理に出そうとすると音程が♭になるし、なんだか不気味な表現になってしまうので、軽く出しておいた方が良い。

ピアノの前奏はあまり重くならずに、声の入りに向けて少しクレッシェンド気味のほうが感じが出る。
後奏は、声を伸ばして切る寸前からフォルテで弾いた方が良い。

ある程度人数がいるアンサンブルなら、声をそれほど出さなくても良いが
二重唱だとそれぞれがソロであり、かつ、アンサンブルの美しさハモる美しさも必要だ。
アンサンブルだとはいえ、ソロの要素が基本的にある。

それぞれきちんと声を出して、結果的にアンサンブルする要素だろうか。
意識しすぎても駄目だし、まるで相手を聞かないのも良くない。
聴きすぎると自分が分けが分からなくなるし、全然聴かないと暴走してしまう。

モーツアルトの「手紙の二重唱」は少し早めにした。Allegrettoだし、最初は重すぎた。
重いと、間が持たない感じがある。
もっと大きいホールで実際にオケでオペラをするともう少し重いかもしれない。

声のことはほとんど問題はない。
両者ともとても綺麗に歌えている。
はらさんの伯爵夫人も中低音がとても綺麗でたっぷりしているし、まつながさんのスザンナも若々しくて
好感が持てた。

レッスンは、ほとんどが動きやつながりの面をやった。
スザンナが座っているので、伯爵の立ち姿をきちっと。
楽譜を見るが、見るなら見るだけにした方が良い。

最初からスザンナに向いて歌いかける必要は無いこと。
「そう書けばいいでしょ」からスザンナに語りかけて歌えばよい。
スザンナが立ち上がってからは、二人正面向いて歌うこと。
最後は、お互いに向き合って、確かにわかりましょうとなる。

無駄な動きを排して、形を決めることが見ていて見苦しくないし
音楽の流れを切らない。音楽の流れを見た目で切れないように。
特にはらさんの伯爵夫人は、目線が下を見たり上を見たりが
頻繁にならないほうがノーブルで音楽的になる。

ヘンゼルとグレーテルが終わってから、この二重唱までの流れは
切れ目なく。終わったあと動かないことと、ピアニストさんもたもたしないでモーツアルトの前奏になるべく早く入ってください。

予想以上に良い出来で、愉しい舞台になりそうで期待している。

まつながさん

アーンのPaysageは、前回に比べて俄然良くなった。
出だしのフレーズも大らかに気持ちよく歌えている。
時折リズムの面でぐさぐさしている所もあるが、概ね危なげなく歌えていた。

リズムは全体的には流れの中で歌えているので、大丈夫だが
転調してからのDe chene faisant の8分音符の所が3連符のように寸詰まりに聞こえるので注意が必要だ。
その前のOu j’aurais tant aime pendant les jours d’automneの語尾のNeをちゃんと発音して。

時々語尾のNeの発音がなくなるので、注意が必要。
再現部のLa melange,au matin ,sous la feuille jaunieの最後のEもちゃんと曖昧母音で切ること。

それから、長く伸ばす音符が所々出てくるが、これも伸ばし不足。
きっちりと伸ばしてほしい。
最後の高音は充分に出して、しっかりと終わって欲しい。

マノンレスコーのアリアは、前回よりも数段明快になり、作品の形がきっちりとしてきた。
出だしの音程もまったく心配ないし、前半の軽く高音に上がるところも、綺麗に伸ばせている。
SilenzioんもZioはツィオと発音すること、ズィオではない。

後半のO mia dimora umileからのテンポは絶妙で良い。
最後のGia solataは、ブレスを入れるととても素晴らしい声が出る。
が、入れる場所としてはあまり勧められないが、高音の素晴らしさだけを取ればブレスを入れるのも悪くないかな、と思わせる説得力のある高音を彼女は出す。

最後のComme un sogno gentile di paceのSenza rallentareも実に上手く素早く出来ているが
それでもブレスが足りないために、最後のPaceの伸ばしに味わいが乏しくなるのは残念。
di paceの前で少し入れても良いから、きれいにpaceを伸ばして欲しい。
最後のd’amorはとても綺麗なピアニッシモのロングトーンだった。

本番は良い集中力を発揮してほしい。期待している!