忙しい方で、やっと今日レッスンが出来た。
体験から数えて今日で3回目だろうか?
元々美声の持ち主と見たが、声を出す回路がまだ出来ていなくて
その美声が発揮できない、という状態。
今日は大分その片鱗を見せてくれるまでになってきた。

初めての時は本当に声が小さくて、歌うには歌えるのだが
ピアノを弾くと声が聞こえなくなるくらいだったのが、今日は声が聞こえるようになった。
という具合だが、あまり理屈っぽく練習を積み重ねるよりも、ちょっとしたことからとにかく声を出す、歌うということで、自然に声は出てくるだろう、と思う。

発声練習は下降形から始めたが、上のドから高い領域は綺麗に声が返って笛のように小さいが響きが出る。
無理な喉で押す声を出さないので、良い。
次に低いドくらいからイの母音で上向形で上がっていった。
この声は予想通り、喉の低い良い響きの中低音である。
ただ、呼気の力が弱くて、もう一つしっかりした響きにならない。

上に上がる音形の時は、特に上に上がるほどクレッシェンドするように
声を前に通していくように意識してもらう。
最初から5音のスケールだと、難しいので、3音ドレミレドだけで始めた。
お腹を使うとか使わないとかいう理屈ではなく、ただ単に声を出して行く前に押し出すように、というだけで、お腹は自然についてくるものである。
慣れたら5音にして上向スケールで練習をした。

最後にアの母音で同じように上向形5度。
喉は良い喉をしているが、姿勢が少し悪くて、顎が前に出てしまう。
顎を引くというのは、顎を下げるのではなくて、首、顔全体を少し後ろにずらす感じである。
だから、目線も顔の前面もそのまま真っ直ぐ前を向くことには変わりない。

姿勢を良くして顎が後ろに引かれた顔の位置になることで、ちょっとした
お腹の力で、声を響かせ易くなる。
また、高音に上がる時も喉に来なくなる。

イの母音などで高音に上がる際には、高い声になるほど、口を丸くしてやることも響きをしっかりさせるのに役立つだろう。
そうすることで、喉が上がらなくなる。

顎があまり動かない人なので、逆に顎をよく動かす練習もした。
ヤイヤイヤイという発声で、彼女の場合は下顎を良く動かしてマッサージ。
この練習をする頃には、声も自然に出るようになっていた。

曲はフォーレの「夢の後に」
最初は、イの母音で始めた。
最初のテーマ、上向音形は、これも上に上がるほどクレッシェンドを覚えてほしい。
ここに限らずだけど、彼女の場合、声を出すきっかけとして、フレーズの最初の一声をとにかくしっかりと出す、という意識を先ず持つことが大切だろう。

ブレスの位置を言葉を付けた時のブレス位置で再度アの母音で練習。
その後、言葉を付けた。
カタカナ読みで、歌ったのだが、発音に妙な癖がなく教えやすかった。
歌詞で歌うにしても、ともかくフレーズの始まりでお腹からしっかり声を出すこと。

最初のDansの鼻母音も良く胸に響かせるように。
彼女の声は、この中低音を胸に響かせるようにすると、とても良い声の響きが出る。
声としてはとても楽しみな素質を持っている方だ。
後は、声を出す回路が慣れてくれば、どんどん出てくるようになるだろう。

譜読みは、ほとんど問題ないが、3連符と2連符の扱いを少し整理整頓した。
伴奏が普通の8分音符の刻みで、その上を旋律が3連符だったり、2連符だったりして混同してしまうのだろう。

連符であっても、どこで下の伴奏の刻みと合うか?どこが合わないか?だけはっきりすれば良い。合う所だけが合えば良いのである。
それ以上、細かく合わせる必要はないのだ。

後は、言葉のシラブル。
母音と子音の区別。
Sommeilの語尾はJであり、半母音なので、母音の扱いにならないこと。
Pourの語尾もRで子音なので、プールーと2シラブルではなく、プーrと言う具合に1シラブル。
音符が細かい場合、シラブルを音符で分散させるとが、外国語の原則と覚えて欲しい。

音符の扱いや言葉の扱いなど、細かいことにはとても気を使う几帳面な正確の方なので苦労がない。
逆に声を出すためには、ある意味で良い加減なところもあって良いくらいである。
ともかく、出ない声を出すためには、まずは声を出すことに神経を集中してほしいからである。

イタリア古典のPlasir d’amourや、アーンのSi mes vers avaient des ailesなど録音を聴けるらしいので、どんどん譜読みしてもらっても構わない。
どちらにしても、まずは声である。
声をしっかり出す練習、慣れをまず身に付けてもらいたい、と思う。
良い中低音と素直な高音の素質素材を持っている方なので、声が出てくれば非常に楽しみな逸材だと思う。