たかはしゆかさん

発声に30分くらい費やした。
あまり難しいことも良くないが、ある程度やらないと身体が覚えないし、彼女くらい若いと吸収も早いので真面目に教えたい。
いや別に他の人でいい加減にやっているわけではないが。

要点は高音をもう少し伸ばしたい。
何度かやってみるが、2点Aから上は身体がイヤイヤしているみたいだ。
キャラクターや肉体的な要素もあるので、あまり無理はしたくない。
要するに高い声ほど、喉が開いて深くなるように、口を開いたり、重心を低く感じたり、声を当てる場所を低く胸に意識したりとあれやこれややってみた。

まだ身体を使ってお腹から声を出す、というのが習慣化していないので、ちょっと気を抜くと声が喉からだけで出してしまう。
いつもいつも声を出し始める時は、お腹から出始めるという意識をまずは大切にして欲しい。
次第に慣れてそれが普通になるだろう。
そうなれば、恐らく高音ももっと楽に出せるようになるだろう。

後はコンコーネの50番の1番を復習。きちっと歌えていた。
後はちょっとしたフレーズの形によって、切らないで一繋がりで歌うことを大切に。
そして2番も歌った。高音はしっかりと声を出して。
それでも滑らかに綺麗に歌えていてとても感心。

今日は部活もないので、新しいフランス語のシャンソンを歌いたいというご希望だったので、プレヴェールのQuelle jour somme nousを
譜読みした。フランス語の発音も抜群に良い。さすがに小学校からやってきただけある。
しなやかで若い頭だと、こういう点が大人ではかなわない点だろう。
この子がずっと続けていったら空恐ろしい。

今後は身体を使って声を出すことを覚えるのが一番の課題だろうか。
少し運動感覚を磨く方だろうか。

すぎたさん

前回レッスンノートに書いたとおり忠実に中低音の響きを変えてきた。
これは、声の統一と安定という意味では良かったと思う。
ただ、開いて喉を深くすると、どうしても響きがこもるしやや暗くなるのが難点だ。
ただ、本人がどちらが歌いやすいか、という点があるだろう。
このほうが歌いやすいのであれば、これも声の持ち味とも取れる。

ただ喉を閉めて高く当てるという発声も合わせてやりながら、声は擦り合わせて作って行きたい。
要はもっと安定して聞こえる中低音をまだまだ目指したい。
それでも以前より良くなっているし、曲によってはほとんど気にならないレベルだ。

高音は声量はあるのだが、意外と重い。
そのため、最高音を伸ばすためには、重いまま伸ばすか、更に一段声区を意識するかで変わってくる。
今の高音の出し方だと、2点hからひっくり返って途端に薄く細くなってしまう。
ここは後2度、3点Cまで頑張ってほしいところ。

曲はヘンデルのアリアVadoro pupilleから。
立派な声で立派な音楽が表現できるようになった。
フレーズの終わりの処理で、ブレスが足りなくなって、結果的にテンポが不安定になる。
要するにブレスが足りなくならないように、全体の設計を考えてほしい。
声は良い。

モーツアルトは早すぎ。早くても良いのだが、なぜ早くするのか?という意図が見えない。
この曲は表面的な音楽とは裏腹に、悲しい内容だ。
優雅さ、憂鬱さが出ると成功だが。
とりあえずゆったりとしてみた。
高音に昇るところは、自分で遅くしないで駆け上がれば良いのである。

トスティは、元来が中低音の喋りが多いので、難しいところがある。
ここは焦らないで、出せる範囲で言葉の喋りのテンポと歌うべきところのゆったり感を際立たせてほしい。

全体に安定して歌えているので29日のことはもう心配は要らないだろう。

あめくさん

彼女も発声が大分確立されつつあることを発見。
特に中低音は苦労してきたが、押さない声を出せれば良い感じで鼻腔に響く声になっている。
ただ、実際の曲の中でこの声を使うのは非常に難しそうである。
どうしてもちょっと押すと一段下の声区になってしまうだろう。
それでも段差が感じられないから、特に問題はないが。
発声練習では高音も良い感じで開いた響きで2点bくらいまで良い声になってきた。

今日はサティの3つの歌曲、初伴奏あわせ。
1曲目のテンポは少しグレたアンちゃんの風情で、といったら途端に良くなった。
要するにリズミカルなのである。
Pに入るところは、ピアニストさん一瞬の間をおいて、スビートで。

最後の低音は、白い声、いわばニュアンスのない声で。棒読みで真っ直ぐ歌うこと。
2曲目、ダフェネオは声の扱いは良い。
ただ、テンポが最初遅すぎた。

前曲からの繋がりを大事にして、テンポをあまり遅くしないほうが良いだろう。
そして、ピアノが出たらすぐに、軽くDis moi Dapheneoと一息で流して歌うのがイメージが良いと思う。

3曲目「帽子屋」は、ピアノの前奏の音楽がイメージ合わないので少し練習。
グノー風というのが難しいが、要はロマンティックにやや大げさにそれを表すこと、テンポにがんじがらめにならないで
喋るように音楽を演奏するということは難しいが、考えてみて欲しい所。

歌は、高音に入るアタックで喉を締めないで軽く入って、最高音を広がりを持たせて出せれば成功だ。
今日やらなかったことを次回やってみたい。
発音を利用して、喉を開こうと意識しすぎないで発音の持ち方で自然に喉が下がる方法。
開けようとすればするほど締まるということがあるから。

全体にピアノとのアンサンブルが曲間の間合いも含めて実現できれば、この曲の持つ「らしさ」
サティの「らしさ」が表現出来そうである。

さわださん

今日の彼女の声、メゾソプラノの一つの表現の良さを確立したように思えた。
長年教えてきたが、ようやく彼女の声の持ち味が見付かったようで、ああ、教えて来てよかったなと思えたレッスンであった。
特にフォーレの中声用で歌った「秋」「捨てられた花」「ゆりかご」などの中期の小品は、彼女の声の良さが抜群に生きてくる。
中低音域から中高音への滑らか声、中高音の鋭いスピントな声が立ち上がる様はなかなか見事なのだ。
それがフォーレの一連のノーブルな歌曲で活き活きとしている。

発声としては、彼女は歌うことでその能力を発揮するタイプで、なまじ発声でドツボにはまらない方が良いような気がする。
強いて言えば、高音2点G以上になったら、喉を閉めないように意識すること。
そのために口をどう使えば喉が締まらないか、開くか、ということ、ちょっとしたサジェスチョンで直ぐ出来る訳で
それを確立、定着して欲しい。

最初はドビュッシーの「星の夜」から。
この曲は彼女にしては、高音域が多いが、以前のような喉の締まりもほとんどなく、安定して歌えていた。
フランス語もきちっと読めている。
良く勉強したね。

この曲で何度か出てくる2点Aの響きは、強く鋭く押すのではなく、少し後ろに廻すような柔らかい響きが大切だ。
それと、勿論喉が上がらないように、発音を利用して、口を突き出すように使うと、喉が自然に降りたポイントで声を出せるだろう。

今日歌ってもらったフォーレは、声のことはほとんど言うことがないくらいベストな声を出していた。
フランス語の発音を多少訂正したくらいである。
「秋」「捨てられた花」「ゆりかご」いずれもこちらが選んだが、それだけのことがあったので、嬉しい。
フォーレが良かったので、今後はデュパルクの歌曲も良いかもしれない。
また、グノーやマスネー、ショーソンなども良いだろう。楽しみになってきた。