TT

発声の声は中低音がとても明るくて綺麗な声だった。
いつもと比べても、上顎の天井に共鳴したような中音~中高音域の声が良かった。
高音はいつもの通りに、細いが綺麗な響きであった。

曲は、リヒャルト・シュトラウスのClemens Brentanoの詩による歌曲集からAn die Nacht
と、Amor
前者は、リズムがあいまいだったのが、大分かっちり歌えるようになってきた。
Amorも、ピアノがちゃんとしていれば、多分もう問題なく歌えるだろうし、難しい高音も
もっとしっかり出せるだろう。

なにしろ、シュトラウスらしく豪華なピアノ伴奏なので、こちらはとても歯が立たない。
An die Nachtは、それでも弾ける範疇だが、変化記号の付き方というか和声の作りが
シュトラウス独特のクロマティックなもので、変化記号に着いていけないのである。

それはともかく、An die Nachtは、素晴らしい声で勢いがあって実によろしい。
シュトラウス節横溢の和声進行と合わせると、ソプラノの声の妙味が活きるところがシュトラウスらしさ、と言うべきなのだろう。
そのソプラノも、こういう和声進行だと、やはりゲルマン系美人、という感じだろうか。

音の使い方というのは、その作者の言語と関係があるのだろう。
こういうクロマティックはワーグナー譲りだろうが、これこそドイツ語の語感と関係あるのだと思う。

残念ながら、今日のレッスンではほとんど言うことがない。
きちっとした伴奏と合わせてレッスンしたいところである。

最後に、山田耕筰の「からたちの花」を練習した。
日本歌曲を、ということで、歌ってもらったが、これも彼女にはピッタリである。
言えることは、今は声のことよりも、語感と音楽の関係だろうか。

フレーズの切れ目は、テンポを少し外しても、間合いを取ってピアノの伴奏の和音をきっかけに
次のフレーズを出していく方が、聴いていて疲れないし、落ち着くと思う。
ブレスをテンポだけで入れると、全部インテンポになって、ややせわしない音楽になると思う。

後は言葉のイメージを大切に、まぶたの裏に思い浮かべるという至極当たり前のことを大切にして欲しい。
おなじからたちの花でも、それが咲いたから嬉しい、あるいは泣いたことを思い出して悲しい、
あるいはそのとげが青いのなら、その青さをイメージして欲しいのである。

日本語の曲は、そういう歌の原点が簡便にできるわけだから、逆に外国語の曲のためにも
勉強になると思う。
声だけ、発声だけではなく、歌詞のイメージあるいは語り方を良く勉強して頂きたい。

FT

今日は新しい曲を練習した。
カンツォーネから
Musica proibitaとTu, ca nun chiagne

声は、大分コツを掴んだと言うべきか。
またどうすると、どうなるということも少しずつ分かってきて実行出来るようになってきている。
Tu ca nun chiagneのほうが、ローカル色強い歌だが、むしろそういう面では力強い喉で
歌うのは合っているだろう。
それにしても、無理は禁物である。
また、高音もイやエは扱いに慎重さがいるだろう。
たまたま出来ても、声に一貫性がなければいけない。
そうでないと、いつ失敗するか分からないのでは、リスクが大きすぎるから。

Musica proibitaのほうが、声の洗練があったほうが良いとも言えるが、いずれにしても
もう少し開いた発声を覚えてもらいたい。

特に最後に歌った、以前から持ち越しになっているトスティがカルーソーに捧げた
Io ti sentoは、発声のテクニックを持たないと歌いきれないだろう。
逆に言えば、これが歌いきれるということは、テクニックがついてきたという証拠になると言って間違いない。

最後に教えたのは、彼にとって分かりやすい、アペルトな発声で、胸声区を持ち上げて発声する場合に、特に狭母音を開いて発声する方法である。
イもエもアの口で、舌だけを母音に必要な形にする方法である。

従って、最初はアに変えて練習する。
それで発声が安定したら、舌を上手く操って、イないしはエに限りなく近くする方法である。
私の師匠がこれを実に上手く出来る人だったが、我々日本人には至難の技だ。
それでも母音発声のせいで、喉が締まって失敗するよりは良いと思う。

KH

発声練習のトピックは、2点Eくらいから上のこと。
中低音は無理なく力みのない明るい声になってきたが、高音で口を少し横に引くよりも、
口を前に尖らすように、あるいは縦に開けるようにすることで、2点F以上の声に共鳴が出る感じを狙いたいところ。
それでも歌になると、非常に上手く対処出来るようになっているので、あまり無理は言いたくないが。

曲はドナウディのOh del mio amato benから。
後半のテヌートやリタルダンドが多用されるサビの部分がとても上手い。
テンポを外してじっくりとウエットに歌いこむところがとても良い。
ブレスポイントは、それがために余計に入れないように。
入れるのであればテンポを少し早めてもフレーズは大切にして欲しい。

また要所要所で、ポルタメントも使えると良いだろう。
積極的にポルタメントも覚えて欲しい。

ジャンニ・スキッキ、Oh mio babbino caro
これは、とても良かった。
特に高音は、綺麗な声が出ているし、以前より響きが出るようになってきている。
この曲もポルタメントは使って欲しい。

イタリア古典のSe nel ben
3拍子のメヌエット風で、とてもノーブルで美しい曲である。
未だ難しいと思うが、もう少し言葉の語り口を出したいところ。
音符が単調だし、その分、歌詞にエスプリがあるので、単語で良いから発音を強調するように歌うと妙味が出てくると思う。

最後に新しい曲を探すので、Intorno all’idol mioとか、Dormi bellaを軽く譜読みした。
いずれも中声用のキーならちょうど良いだろう。
また、ベッリーニのMa rendi pur contentoも美しい。
彼女の声にはぴったりだろう。こちらもオリジナーレより一段低いキーで変ニ長調のもの。
楽しみである。