TK

発声はいつもどおりの下降形から始まって、上向形。
2点bまで綺麗に出ている。
最後に地声領域も練習。
ここはハミングで練習して、なるべく開いた声で出来るようになりたい。
そのことで、上の声区とのミックスが自然に出来るようになる、と思っているが。。

曲は前回と同じく、バッハのカンタータアリア。
1曲目はBWV57のNo3のアリア。
低音が多く、彼女には厳しいが、慣れてきたせいと中音域の発声も安定して良く響くようになったので気にならなくなってきた。
特に注意したことは、イやユなどの狭母音と、語尾のEnなどの発音。
そして語尾の子音がなおざりにならないこと。
エは喉が上がりやすいので注意。
なかなか魅力的な曲でモダンである。

2曲目はBWV68のNo2のアリア。
Prestoで実際は早いが、今はゆっくり練習して、2拍子ないしは4拍子のビートを大切にして、
滑らないように注意。
要するに強拍部分をしっかり発音すること、だけでも良いだろう。

この曲も速く練習しないで、ゆっくりすることで、とかく浅く画一的になりがちな母音の響きを
しっかりと決めて行くことにもつながるだろう。
子音のきっかけも深い発声につながるので、大切にして欲しい。

ST

体験レッスン。男声で声域は特に決まっていないが、学生時代の混声ではバスをやっていたとのこと。テノールをやりたいらしい。早速声を聴いてみたが胸声区の出し方が強く、高音が難しいか?と思ったら、鼻腔に入れるようにして上手く対処していた。
だが、どうも身体の使い方、喉が硬く、声域を伸ばす以前の問題と感じた。
胸もお腹もガチガチに硬いのである。

多分、発声を意識して構えてしまうこと、そのために、身体全体が硬くなってしまっているのだろうと思った。
お腹を見ていても、硬くなっているようである。

自然に息を吐くとき、お腹も自然にへこむように。
あるいは顔面にだけ当てるのではなく、頭部に自然に入れるようになど。
一つの方法論で固めないで、色々な方法をやりながら、今の彼の問題点に対処できることを大切にすることを、一つの基準にすえて欲しい。

そして一番大切なことは、身体や顔面など、全ての面で緊張せずに、リラックスして声が出せるかどうか?ということである。
音域を伸ばすことなどは、それがある程度出来てから、という順番にした方が良いだろう。
そのためには、出しやすい中低音から、徐々に進めて行くべきだと思う。

今の発声でも、恐らく歌えちゃう、だろうけれども、それは良い声には繋がり難いと思う。
何よりも、人に共感を与える良い声、というものを発声のスタンダードに考えて欲しいと思う。

WH

発声の声はとても良くなった。2点Cからも、スカスカになり過ぎず、かといって、喉っぽくもならずに、開いていてそして綺麗に適度に当った良く響く声である。
この調子を維持してくれれば良いと思った。

トスティのSognoから。
声は基本的に良い。びんびんと響いていて気持ちが良い声である。
イタリア語の歌詞の読みを少しやった。
アクセントを良く強調して、流れるように朗唱することを習慣にして欲しい。
そうすることで、譜面上のフレーズが、自然な流れるような形に出来ることが分かってもらえたと思う。

モーツアルトのPorgi amor
これも基本的に気持ちの良い良く響く声で、問題ない。
Mpで出る2点Fの長い音符。アタックでずり上げる癖をくれぐれもなくすように。
しかし、気をつけないと今度は音程を気にするために喉が上がる。
その対処としては、ブレスで喉を良く開いておくこと。
出たらクレッシェンド出来れば良い。

最後にDon giovanniからDonna Annaのアリア。
これも細かく練習した。
特にやったのは、後半のAllegrettoの楽節。
メリスマの部分は、高音は良い声が出ていた。
気をつけるのは下降形の部分である。
響きが滑ってしまうので、一つ一つを正確に。
5線の中に入ったら、むしろ口を閉じるようにして響きを徹底して頭に入れるように。
高音で喉が開くから、そのまま降りると音程が不明瞭になる。

やはり、少しゆっくり目に練習することを大切に。
ただ、高音発声が絡んでくるので、ある程度の勢いは大切だ。

アリア冒頭の美しいメロディは、あまり速くならずに、まったりとしたレガートを心がけて欲しい。
長く引っ張る音符は、最初から出し過ぎないで我慢すること。息の配分を考えてやれば、長いフレーズも一息で歌える。以前はとてもこんな長いフレーズを歌えなかったので長足の進歩であろう。

MM

今日のレッスンは前回良い感触を得たことが、引き続き出来てきたのですこし安心。
これが本番でも出来るようになって欲しい。

要するに2点Cからの声区の転換以降で、声に支えがなくなってしまうことの矯正である。
単に喉が上がらないこと、そしてそのことで共鳴の出る発声が出来る事である。

発声練習では5度上向でやったが、この問題に対処しようとするテクニックが見えていたので良かった。今後も徹して欲しい。
2点Fを越えたら、上顎を良く上げることを意識すると、はっきりした声で音程もはまるし、喉も浅くならないだろう。

曲は前回と同じく、シューベルトの歌曲から。
イとかエなどで喉が上がりやすいのは舌が上に上がるからである。
すなわち、舌が上がっても喉が上がらないように意識すること、しかない。
ここでも、喉から軟口蓋にかけての声を出す器官の一定な状態を意識した発声を心がけてほしい。

シャブリエのクープレ。
発声のコツはわかってきているから、それを後押しするためにも、歌詞の抑揚(意味も含めて)を良く考えて歌ってもらった。
理屈ぬきで、まず語ってみることである。
ということをこちらがやってみてから、真似してもらった。
自然にどこの母音が強調されるか?あるいは有機的なフレーズが作れるか?ということが決まると思う。

ミミのDondelieta
全体的に、明快にはっきり言うスタンスを大切に。
情緒的で良いのだけど、どんな表現でも引かないことである。
ウエットにならずにドライなくらいにはっきりと、と言い換えても良いだろう。
ただ、発声的には喉が浅くならずに、常に喉が開いた状態を意識した明快さ、と言い換えても良い。