今日はレッスン前に彼女の学校の卒業記念のコーラスをMDで聞かせてもらった。
モーツアルトのミサ曲「クレド」だ。
女子校なので女声コーラスだけど、言葉ははっきり、強弱もはっきりついて立派な合唱演奏だった。
この曲が好きでいつも録音を聞いている、というので、試みにモーツアルトの同じくAgnus Deiのソロパートを譜読みしてみた。
なかなか難しいところもあるが、彼女が「やるっ!」というので意を強くした。
音域的には無理がないと思う。
譜読みや発声、すべての勉強する要素が一杯あるだろう。
なかなか楽しみである。

今日は発声練習では、昨日良い結果を出したNyuという発音による発声とハミングで中低音域の響きを練習した。
発生に関してはなかなか勘と飲み込みが良くて、すぐに理解して実行してくれるのが嬉しい。
また、実際に今日発声練習のやり始めでは、普通に母音の下降形でやってみたが、お腹を使うこと
喉を開いて高く上げようとする意志の表れが良く分かった。
徐々に形になっていくのを見るのは嬉しいものである。

コンコーネは3番。ここでも上記の発声と同じ方法でNyuでやってみてから、JaJaなどで開母音に変えて響きを確認など。
曲はプレヴェールの「シャンソン」から。
口を横に開かないで、突き出すようにして歌うと、上記の発声に近い形になって響きが集まるし高くなる。
これも成功だった。
最後にモーツアルトのAgnus Deiを譜読みした。音よりもリズム、特にタイで繋がって小節線をまたぐリズムに注意!
まずはこのリズム読みだけでも復習しておいて欲しい。

すぎたさん

今日はかなり発声に工夫が見られていて良かった。
下降形で2点Dくらいからの上がり下がりで、中音域の綺麗に当った響きが出せていた。
まだ不安定なのは、下から上がるとこれが失われて、メゾソプラノ的にこもったような感じになりスカスカしてしまうこと。
以前に、どちらでも良いから聞こえる中低音を、ということでメゾ的な縦に開いた響きも勧めてみたが、結果的に良くないなと思った。

響き以前に、言葉の発音がまったく分からない不明瞭な発音になってしまうのである。
何度も言うように舌がどうも奥まってしまうようだ。
そしてそれはどうも歌詞を発音すると顕著になるようである。
舌先を常に下歯の裏に少しだけ付けて発音するように意識してみて欲しい。

曲はイタリア古典3巻のサルティ作曲「いとしい人から遠く離れて」
音域的に彼女の歌いやすい音域だし、甘く歌いやすい旋律。
これだと発声の難が出ないので、苦労がないだろう。

マスカーニの「アヴェ・マリア」こちらは高音のメッザボーチェが要求される。
ここが意外なほど彼女には難しい。
喉が締まってしまうようである。
指をくわえて練習することで、下顎の支え、喉が上がらないで開いて出せる状態を確認してみる。
メッザボーチェは前に出さないで、うなじから後頭部にかけて引き入れるように。
響きがまだ少し締まっているが、音量、音程はどうにか良いので、今日のラインは最低限のラインと思って欲しい。

最後にモーツアルトコジ・ファン・トゥッテからエルヴィラのアリア。
これはとっても良かった。音域的にも無理がないし、無理な低音もない。
発音だけは、丁寧に。
特にCieloやDolcezzaなどのチェなどの発音。ツェにならないように。
舌の筋力の問題だろうか。
日本語風の活舌練習は、声楽の場合ある面で良くないところがあるが、彼女に関しては理屈抜きでもう少し読みと活舌を正確に早くする練習も必要かもしれない。

あめくさん

あめくさんも発声でNyuをやってみた。彼女は地声とチェンジの境目が出やすく、中音域の難しい人である。
また声帯が当りやすい人で、高音は高音で喉が締まり易い。これは日本人離れしている喉である。
中音域でこの鼻腔共鳴、喉の開いた狭母音が出来ると、そこから開母音に応用できるはず、なのである。
開母音だと当りすぎるか、開きすぎてスカスカかどちらかになる。
Nyuで上手い具合に出来ると、そのまま高音に昇って、更に喉を開いていけば彼女にとって理想的な発声となる。

後は2点F以上の高音域での締まらない、喉を開いた発声。
この高音域に入ったら喉側を意識して、積極的に開くように発声することと、中低音域は喉を開くことよりも
鼻腔に入れるような狭母音的な発声にまとめることの、2つの要素を常に意識して欲しい。
同じ方法だけで無意識に大書してしまうことが、彼女の発声の今の難しさである。

特に、今回トライするアーンのオペレッタ「シブレット」のシブレット役はレッジェロな明るいソプラノだ。
高音を決して太く強く出す必要はないが、締まり過ぎだけは気を付けてほしい。
後は中低音は今日の発声でやったように、細く鼻腔に集めるように。
出そう出そうと力むと喉に落ちるので、それだけは注意!

後は、フランス語の読みも譜読みもきちっと出来ていたので合格。
積み重ねと暗譜を急ぐのみである。
とてもシックでフランス的なアリエッタ2曲。コーラスも付いてとても楽しみにしている。

さわださん

今回勉強課題にしている、フォーレの歌曲4曲に関して言えば、声の問題はほとんどない。
強いて言えば、「我らの愛」の最後の2点Aの高音が締まらないように持って行くことだけだろう。
発声は喉を温める程度に、すぐに伴奏合わせに入った。

1曲目の「秋」は、ピアノ右手の3連符を滑らかに。正確さよりも滑らかさだろうか。
歌は、最初からフォルテである。
最初のアウフタクトの声をきちんと良いタイミングで入って響かせることが、一番大切である。
最初さえ上手く入れれば、後は上手く行くだろう。
いつもタイミングが今一歩遅れ気味である。

2曲目「捨てられた花」は、こちらも歌はとても声が乗ってビンビンと響いて素晴らしい。
完全にメゾソプラノの声になったな、という印象。
こちらも最初の入りで、力みすぎないようにすることで、入りのタイミングが遅れないようにすること。
そのことで、入りの響きがきちんと強調出来るだろう。
入ろう入ろうと力んでいるとかえってすっぽ抜けるか、タイミングを逸して遅くなってしまう。
最後のフォルテの声の伸ばしは、強く入りすぎないで軽く入っておいて、クレシェンドすると効果的だ。

3曲目のEn priere もとても綺麗な声で歌えている。
こちらはテンポが流れないように、ピアニストさんも先に先にと流れないように4拍を大切にして欲しい。

4曲目の「我らが愛」はこちらも入りの響きとタイミング、そして最後の高音だけ。
良く勉強したので、素晴らしいフォーレ中期の歌曲の演奏になってきた。
声も絶好調なので、後は暗譜に専念して欲しい。

たかはしみかさん

今日は何回目か忘れたが、かなり声が変わってきて私の目的に達しつつある。
喉が開いた響きになり、ようやく鼻声傾向の中音域の癖が影を潜めたことと、中高音から高音域にかけて開いた息の混ざった響きが出せるようになってきたことである。
彼女自身出したことのない声、というように、声を出すこと、声を遠くに飛ばすこと、という面で努力してきたのだろうけども
やりかたがあまりに偏っていたのではないだろうか。

歌う際の身体を見ていても思ったのだが、発声の方法論に忠実なあまり、身体の自然さに欠けているように思えた。
何か声を出していくにしたがって、身体をこうしなくちゃいけない、こう動かすという意識が強すぎて、上半身が硬く感じたのである。
楽に立って、上半身をゆらゆらさせながら発声してみると、思いのほかリラックスして良かったのである。

今日は下あごを後ろに引き込んで、喉頭を上げないように保持することで、開かせて中高音~高音に向けて発声することをやってみた。
これは、上向形のフレーズで喉で締めないようにするために有効な一つの方法だろう。
彼女は経験が長いので、ちょっとやると直ぐに出来るようになっている。
更に高音に上がるには、下顎自体を下に下げて、更に喉の開きを促す必要があるだろう。
これも上手く対応できて、綺麗なメッザボーチェの高音が出せるようになった。

実際の歌でも中音域~中高音域にかけて、開いた柔らかい響きになったので、まずは成功と言いたい。
気をつけて欲しいのは、胸を意識して身体を硬くしないで、楽に低いポイントを意識すること。
シューマンのLotosblumeでは、声を抑制する必要は全然ない。
今は、楽譜のダイナミックを気にしないで、息をしっかりと送って、共鳴の出る響きを意識して欲しい。
レガートとか綺麗なメッザボーチェというのは、声で意識しないで良いだろう。
今の発声の響かせ方、声の出し方だけに集中すれば良いとおもう。
ヘンデルのAh mio corも、中低音がとてもよい声が聴けるようになった。大成功と言いたい。

今やっていることは、中途経過的なことで、勿論これを持って最高の発声とか、結論ということではないことは忘れないで欲しい。