たかはしさん

レッスンでリラックスして出す中音域から中高音の声は、声も勢いがあるし、声質も良い。
本人はビブラートを気にしていたが、悪く無い。声の揺れには感じられないからだ。
ただ、恐らく息が浅いと揺れは細かくなる傾向があるかもしれない。
高音も2点bまでは、安定して使えるし、2点Gまでならば、言うことはない。

今日は、シューマンのDie lotosblumeを新たに持ってきた。
テンポに関わらず、声が軽くなってしまうが、これはもっと旋律をみっちりとじっくりと線に作って、真っ直ぐにレガートに歌って欲しいイメージがあった。
何となく、気分で歌うのではなく、例えばクラリネットで旋律を吹くとどういう風に聞こえるか?というような器楽的な声のイメージをまず作ることだと思う。
歌詞の発音はその旋律を彩る修飾だ、と思うくらいに。

歌詞の発音だが、Angstigtは、中のGは鼻濁音である。Sはシュではなく、ス。最後はクトではなく、ヒトとなる。
俄かに分からなかったのは勉強不足だった。
試みにフィッシャーディースカウの歌唱をレコード聞いた所、6/4でも2つ振りのテンポでLangsamの解釈だった。
そのため、4分音符だと100くらいのスピードになる。意外と早い印象であったが、如何なものか?
かなり情熱的な歌いぶりであった。
私のイメージとかなり違っていたので、自信を失くした。笑

次にシューベルトのグレートヒェン。
声のこと、発声という視点よりも、旋律と歌詞が生み出すものを、歌うものが良く理解して、高橋さんなら高橋さんがどう思って歌うか?
という自身の歌う立場を良く表した歌にして欲しい。

そしてドニゼッティのLa corrispondenza amorosa
フランス語はそれほど気にならないし、旋律の扱いも上手くなった。
区分の切り替えがまだ生硬いが、この辺で手を打って良いだろう、というところまで上達したと思う。

最後にシュトラウスのSpring song
後半の部分だけを練習した。
高音の調子は最初はとても良かったが、段々と締めてしまうようで、最後はやや喉が浅く聴きづらくなってしまった。
力まないこと、喉を良く開くこと、そのためのブレス、それらを冷静に対処して、声のコントロールに気をつければ何とかなりそうな
レベルではある。
少しずつ練習を重ねて、ものにしてもらいたい。

つげさん

発声の声が、少し硬く緊張気味だったので、低音に降りて地声から始めた。
地声で上がれるだけ上がってから、再度低音1点Cくらいから今度は地声状態のハミングで上がれるだけ上がる。
ハミングで音程を気にしてやっていくと、自然に声がチェンジする傾向があって、無理が無い。

中音域のハミングから母音に返して出した声は、声帯も開いているし、そのまま使える声だと思うのだが、これが2点Dくらいから
くる~んとひっくり返ると、まるで違う声になる。
このチェンジの理屈が、自分にも良く分からない。
というか、元々がこのチェンジの声で歌っているのだが、どうしてこれだけ強い段差が出来てしまうのか?

私見だが、どう考えても今の声のチェンジは、もっと高いところで行うべきものなのに、その領域を1オクターブ低いものにしてしまった、というように思えて仕方が無い。
そうは言っても子供の頃から身に付いた発声だから、一朝一夕では行かないし、また無理をすることも無いとは思う。
この考え方からすれば、チェンジ前の声をもう3度くらい上まで伸ばす、という方法を取れば、劇的に声は変わるだろう。

曲はパーセルのIf be the food of loveの3rdVerから。
これは、単に通しを繰り返した。
特にリズムが懸案で、最初の区分のLargoをなるべく遅めにし、4/4を8/8で取る事で、32分音符を処理しやすくする目的である。

これは、何度も通して、繰り返して練習。
リズムはまったく問題なく、全体を歌えるようになったが、声が今ひとつであった。
喉を締めてしまうようである。喉を楽に姿勢を良くして、喉を開いた状態を保てるように発音しないと、発音のせいで締まってしまうようである。
今日は時間がなくなったが、次回は母音で声の練習をしよう。

最後にフランスバロックアリア集ソプラノ用から、1曲目のAux plaisir,aux delices,bergeres
彼女の声にはぴったりの曲であった。
母音だけで歌って通して、フランス語の読みを練習して終わり。
良く歌えるので、読んで歌えるようになったらどんどん新しい曲を譜読みして、フランス語に慣れていって欲しいと思っている。

みねむらさん

発声練習に10分くらい。主に低音のしっかりした響きを付けてから、最後に2点C~Fくらいの間で、喉が上がる癖をなくした。
声がひっくり返る傾向が強いので、喉頭がうろうろしてしまう。
低音からなるべくチェンジをしないようにハミングで昇ってみたり、母音をイにしてイからエ~アと変換する、などして
2点Fくらいまで、彼女特有のスカ~っと抜けてしまう声を出さないように発声練習をした。

この辺は、最終的には自然に身に付いて、下の声区と上の声区が自然に混ざるようになる、と楽観視しているが、
勿論本人のしっかりした意志で発声を意識してもらわないと、なかなか身に付かないことだろう。
これは、ブレスが浅いとなりやすいから、ブレスも強く意識した方が良いと思う。
強く意識するというのは、たくさん入れるという意味ではなく、姿勢を正すこと、側腹を使ってブレスすることで
ブレスの際、あるいは声のアタックの際に喉頭が下がる意識である。

下の声区のまま上の声区に入る辺りの発声は、当然喉で当る感じが出てしまうが、ある程度は仕方がない。
鼻根やおでこに当てる感じを持つことで、微妙な開きが出来るのだが、彼女にとっては微妙なので、声区の意識だけをまずは持ってもらいたいと思う。
その上で、当たる声の感覚が完全に身に付いたら、その当り方を変えていく方向である。

曲は、フォーレのNotre amourから。
出だしから、なかなか良い声になってきたたな、という印象を得られた。
大変失礼ながら、以前だったら木で鼻をくくったような印象があったが、その頃に比べると柔らかく人間味のにじむ歌声になって、好ましい。

特に大きいのは、♭気味になる傾向の声が、音程がはまるようになってきたこと。
ただ、ブレスが間に合わないようで、テンポが速いとブレスが先に進むほど浅くなって、声もぐずぐずになってくる。
これは、慣れなので、今はテンポを少しゆっくり目で練習しておき、言葉に慣れてきたらもう少し早く軽快に行きたいところである。
最後の高音2点Aは、前回より改善されてぎりぎりセーフの声である。良いだろう。

次がアーンのChere blessure
こちらは、細かいことは言わず、何度も合わせて終わりにした。
これ、独特の気取りの語り具合で、その通好みの味わいは初心者が歌うフランスものとしては、ちょっと難しい。
歌うには歌えるが、本来持っている味わいを出すには時間がかかるだろう。
フランス語の語りのうまみというのか、味わいというのか、それは教わって学べるようなものではない。
見つけるものである。

強いて言えば、3連符の扱いと、付点の跳ねる組み合わせの音形を言葉のイントネーションと合わせて、音楽、旋律に生かすことである。
といえば、分かるだろうか?
歌わなくて良いから、正確なリズムで良く読む練習をしておくべきである。
その場合、テンポは歌う以上にユックリぐらいが良い。
3連符を正確に!

最後にSon pochi fiori
こちら、また180度違う世界で、切り替えが難しいものだ。笑
全体に音楽だけを感じると、どこでも大声で張り上げたくなる曲想だが、それは中間の盛り上がりと最後だけにして、
他はなるべく抑えて綺麗に処理した方が、全体のまとまりは良いだろう。
張り上げて歌うだけだと、どうもうるさい感じがしてしまうから。
歌詞を読んでみると、そういうことが分かると思う。
ただ、中間部の盛り上がりは、喉が上がらないように、ブレスも深くして、顎を出さないように。

発声はあちら立てればこちら立たずだが、細かいことに拘泥しないで、今回は本番でどうなるか?という一点に集中して、練習を積み重ねて欲しい。