うかわさん

ピアノ科の学生さん。
副科の声楽が好きで、副科が終わってもやりたい、とのこと。
学校の先生が苦手、でもあるらしい。
発声の最初の声の印象が非常に良くて、これはちょっとやると結構ものになりそうだ!と思ったのだが、高音はなかなか難しい喉であった。
副科に入った時からの声楽経験だが、最初から高音を避けるために、コンコーネでも低声用を選んだりしていた、とのこと。
面白い話だが、高音の発声をやるだけで短いレッスン時間を消費したくないので、声のことを言われずに歌をレッスンしてもらうためとのこと。
2年くらいだが、そういう経験をしたせいか、確かに低音は元々の喉もあるが、かなりな低音まで地声に返らないで上手く出せている。
その代わり、2点Fから上の声がほとんど使えない状態になっている。
今日も、ためつすがめつ、色々なアタックをしてみたが、喉が力んでどうにもならない。
いわゆる喉を開く、喉が上がらないポジションを試してみたが、1回のレッスンでつかめるほど、簡単には行かないようである。

今後、ちゃんとした声を出していくためには、お腹の使い方と呼気の使い方、そのためのブレスの方法、喉の開き方、そして、それらを
使う身体の姿勢など、地道に積み上げて行くことが必要だろう。
詳細は省くが、恐らく2点Fから上で、喉をまったく意識しない、お腹も使わない、息漏れのような小さな響きを先ず出せるようになること。これだけでも、現在の彼女には大変なことである。
それをやろうとしても、やれないくらいに喉に力を入れて出す癖がついてしまっている。

もう一点は、思い切り出してしまう方法だが、オクターブ下の声を出しておいて、その時の喉の降り具合、リラックス感を覚えておいて、即座に一気にオクターブ上を出してみる方法である。
これは、今日やった中で今の彼女が一番受け入れやすいし、成功しそうである。

今日はトスティのSognoを低声用で歌ってもらったが、これでも2点Fが大変である。かといって中低音がふくよかで良いか、といえば
そういう訳でもない。単に本質的な彼女の声域の問題ではないような気がする。
最後にイタリア古典歌曲2巻から、O leggiadri occhi belliを軽く歌って終わりにした。

今日の第一声の良い声の素質がある、と直感したその声を元に、更に声域を上に伸ばしてもらいたいし、それが基本的に発声に関わることだと思う。良い声の持ち主なので、声楽にトライする価値は充分あるのではないだろうか。

きくちりえさん

今日は少し念入りに発声練習。
といっても、特別なことはなく、低音は低音で、高音は高音で、分けて練習した。
低音はハミングで鼻腔に通すように慣れてもらうこと。
高音は軽めの早いパッセージで上がっていく練習。
本当に高音はアルファロメオの4気筒エンジンみたいに軽くシュンシュン吹け上がる。

曲はパーセルのMusic for a whileから。
静かに染み入るように歌う。ゆったりと丁寧に歌ってくれると本当に感動的である。
時々BeguilesのSが抜けてしまうのがご愛嬌。気を付けて。
低音の処理は無理が無く綺麗である。

次にFarest isleを。半音高いバージョンで、これは彼女の声が活きる。
更にレガートにゆったりと歌えると、感動的ですらある。
ただ、全体に音楽が平坦になってしまうので、MfやFとあるフレーズは、言葉の扱い、あるいは
感情的なものを喚起して、フレージングに変化が出来ると、全体に飽きない音楽になると思う。

次に突然思いついて、ヴィヴァルディのIo son quel gelsominoを。
彼女の声を聴いていたらイメージが浮かんだのである。
感じやすいナイーブな乙女の、恐怖、怒り、おののき、それらがバロック風の端正な音楽で美しく表現されるイメージ。
彼女に歌ってもらうと、恐らく怒っているところが、可愛いイメージになるだろう。好ましい。

そして再びパーセルから、If be the food of love の3rd verを。
まだ譜読みが不完全だが、これは個人的には大好きだし、彼女が歌っても格調高い渋いBritishな味わい横溢である。
前半のゆったりのリズムの中で、細かい音符やシンコペーションが難しい。
後半のAllegroの3拍子が爽快である。

次はモーツアルトのEt in carnatus estは、以前に何度も練習した曲で、安定している。
今日はこの曲を歌うまでのもって行き方のせいか?高音が非常に調子が良かった。
懸案の3点Cも安定していて、危なげがなかった。
2回通してみたが、大丈夫だろう。

8月のプログラム決定のためなので、これらの曲ばかりだとシリアスに過ぎる?ということで、
ロッシーニ「婚約手形」から、Vorrei spiegarvi il giubiloを歌った。
この作品は以前にも見たが、彼女にはピッタリのキャラクターで好ましい。
キャラクター像が見えてくる。コケティッシュ!ロッシーニのお好みだと思う。
これは皆さんに聞いてもらいたいところである。

最後にベッリーニの清教徒からSon vergin vezzosaだったけ?笑
うちのさんが歌った記憶があったので。。
こちらも悪くないが、婚約手形と比べると、あちらの方がずっと合っている。

ということで、今のところ、パーセルFairest isle,モーツアルトEi incarnatus est,ロッシーニVorrei spiegarvi il giubilo
の3曲に決まり、の予定。今後の展開が変更もあるが基本的にこの線で行きたい。楽しみにしている。