KH

発声は非常に良い感じになってきた。
これから注意して欲しいのは、出しやすいところや、低音から出すのではなく上にいくほどクレッシェンドするようにすることである。あるいは高音に上る程響かせようと意識するだけで良いだろう。自然にそういう口の使い方や身体の使い方が出てくると思う。
出しやすいところでバンバン出して、そのままフレーズで昇ると逆に高音が出難いし、細くなってしまうことに気づいているだろうか?
高音は一番歌う筋肉を使うから、フレーズの中では余力を残すように身体を使うと、上手く行くものである。身体をリラックスさせなさい、という意味はそういう点だと思う。

曲はイタリア古典のIntorno all’idol mioから。
どの曲でもそうだが、特に注意したのは、出しやすい音より少し上の2点C辺りで
響きを集めようとしないでむしろ喉を開くように。
声の芯を作らない、と言えば良いか。
芯ではなくて響きの筒みたいなもの、と言えば良いか。

次のDormi bellaは、面白い曲で、早口言葉的な言葉のシラブルを活かすところと、
嘆きの節を朗々と歌うところの差を充分に活かして欲しい。
細かいイタリア語を速く歌うところは、旋律の線をつなげるのではなく、シラブルだけ
出せば良いのである。スタッカート気味に歌っても良いだろう。
そのためには、イタリア語の読みを充分やって欲しい。

最後にベッリーニのMa rendi pur contento
キーが低いバージョンだが、彼女の声の場合ちょうど良いだろう。
深くゆったりとした中低音の声を意識して欲しい。
音程感と捉えても良いが、高く集めるのではなく、深く広々と出すような感じ。

も一つ最後にドナウディのO del mio amato ben
これも同様に中音域の声、もう少し太く開いた声の方が良いだろう。
どうやらその辺に彼女の声の良さが隠されている気がして仕方ないのだが。

TT

あまり練習していなかったらしいが、発声の声はいつに変わらず伸びやかで綺麗である。

リヒャルト・シュトラウスの歌曲から2曲。今まで練習したAn die nachtから。
特に声のことで何を言うでもないくらいだが、ドイツ語の単語の語尾のEの扱い。
日本語のエがもろに出ないように。その前のシラブルのアクセントもあるし、あるいはあいまいな傾向もあるだろう。らしく聞こえる発音、あるいはドイツ語で歌う音楽らしさという点である。

新たに持ってきたブレンタノ歌集のAls mir dein Lied erklangはとても軽やかで美しい歌曲だ。声の問題として捉える前に、ドイツ語だけで軽やかにその気分を表せるように朗読してみると良いだろう。
歌はピアノを付けて良く練習すれば良いだけ、という感じである。
シュトラウスらしく晦渋なメロディだが、その言葉の意味と語りが出てくれば、本来の軽やかさ明朗さ、が表現出来るのではないだろうか?

「からたちの花」声のことか、音楽のことか、どちらでも言えることがあるが、声から言うと
特にこの曲の高音は、口を開きすぎることで声が良く言えば前に出るが、悪く言うと少し
共鳴のない直接な響き、という印象がある。

かといって、音楽的ではない、というわけではなく、それなりに滑らかで綺麗なのだが、
特に最後の2点Gで伸ばす高音が、息が伸びないでいるのが気になる。
ブレスは充分あるはずなのに、息が伸びないのが発声による理由は大きい。
この辺でブレスが足りないのは、声がどうこうよりも発声に因があるだろう。
それくらい、彼女の声は直であっても、良い声なのである。

口先を開けない発声で、例えば深いウなどで練習してみると良い。
指などくわえてみると、いかに口を開けようという力で出しているか?分かるのではないだろうか?

WH

少し自己練習のやりかたに理由があったのか、レッスン来た時から調子を少し崩していた。
特に中音域がかさかさして、響き難いのが心配である。
発声を少し長めにやってみたが、高音は一切やらなかった。
中低音で合わないのが気になるのか、声が出せていないが、元々合わせようという意識が強かったのだろう。
それでも、チェンジ以降の声域なら問題は出なかったのだろうが、地声でバリバリ練習してしまったのが
原因であろう。

中低音で特に下の地声に換声しての練習は、その上の声区以上に、喉の当りに気をつけないと、喉を痛めるだろう。
声の開き具合を規定する基準を見つけるためには、いきなり地声で出さないで、上の2点Cくらいで出す声から
下降形で降りて、楽に自然に喉を開いて出せる声である。
それ以上喉を押しては絶対にいけない。

モーツアルトのPorgi amorは大丈夫だけど、本人が心配して声が出なくなっている程度である、と思いたい。
今は充分に声をいたわって、休めておいて欲しい。