FT

今日のトピックは、腹式呼吸と、そのことで生まれる高音の声の支えのこと。
お腹をへこまして、歌うのだが、上の方だけへこますために、横隔膜まで上がってしまっていて、
これでは、高音がひっくり返るはずだ、ということで、その辺りの練習強化。

声を出す状態としては、丹田辺りに少しだけ力が入っていると、自然に横隔膜を使ったブレスになるようなお腹の状態になる。
すなわち、側腹辺りから腰にかけて、拡がる感じである。
歌う様子を側で見ると、やはり胸だけでブレス、となっている。

自分で腰から側腹にかけてを両手で押さえながら、歌ってみると良いだろう。
ブレスのタイミングから、声の出し始めや、高音をアタックする際に、この部分が拡がる様に出来ること。
今まで違う使い方をしていたので、慣れるまで時間がかかるが、いつも気を付けて、丁寧に対処することを忘れずに
練習に励んで欲しい。

声の出し始めだが、喉は開いていて、アタックは高く、ということ。
そうでないと、喉から出てしまうために、喉の負担が高いだろう。
また、思い切り高音になったら、喉の位置は少し高めくらいに、意識したほうが良い。
その下の領域のまま出そうとすると、叫び声だけになったようになる。
狭母音のイとかウなどは、開いて出しても良いが、逆に開かないで出すためには、声の当てる場所を
前ではなく、うなじとか後頭部など、後ろに意識することも、喉の状態を決めるのに役立つだろう。

TK

声の調子はすこぶる良く、滑らかで綺麗な中高音~高音の声であった。
声に関して言うと、今はほとんどいじる気がしない。
それよりも、歌詞の発音と声の関係で、例えばドイツ語なら、ドイツ語らしさと発声の関係が更に洗練されると素晴らしいと思う。
例えば、狭母音とか、子音の発音などである。

バッハのカンタータ5番~7番の3曲を練習。
いずれも、何度か通して、細部の発音や発声を見ていった。
概ね言うことは、狭母音の口を突き出す方向の母音、そして、子音である。
特に5線の中に関しては、なるべく子音をきちっと処理したい。
出せば良いってものではないのだが、例えばVとか、Dとか、あるべき所から出せるようになること、であろう。

それでも、今まで私が教えたことを、忠実に守ってくれているので、確実に進歩があるから、嬉しい。
今後もこの方向で、精進して行けば素晴らしいことだと思う。

TT

発声から元気の良い声で、健康的。
ただ、中高音域で、元気良すぎてむせていた。
少し中高音で、喉を開けられるために、力強いのだが、やや深くてこもる傾向はある。
中低音は高く明るく発声して、高音の特に2点G~過ぎたら少し喉を開いて行く方向が良いだろう。

ベッリーニQui la voceは、前半はもう少ししとやかに、強さよりも声の程よい抑制によって得られるレガートを大切に。
綺麗なメロディなので、歌いたくなるものだが、そこを一歩冷静に歌うことで、メロディの本来持っている美しさが更に倍化されるだろう。
逆に後半のAllegrettoは、もう少し元気が出ると良い。
伴奏が表している楽しさ、活発さを一緒になって歌でも表現出来ると良い。
細かいことも楽譜を見ると書いてあると思う。

ただ、半音階のメリスマはとてもうまく対処出来るようになった。
最後のカデンツは、3点Esに果敢に挑戦して欲しい。
出ないものは仕方ないが、出るのだから挑戦することで、更に良くなることを期待できるだろう。

ホフマン物語のオランピアのシャンソンを聞かせてもらう。
これが、思いのほか良くて、彼女の声にぴったりである。雰囲気も良い。
これから、練習してレパートリーにすると良いだろう。

最後にシュトラウスの歌曲をざっと歌った。
こちらも、出すべきところと落ち着いて、出し過ぎないで歌うところを分けて考えよう。
全体に歌いすぎないで、ドイツ語の抑揚を良く感じて(朗読など練習して)旋律に活かすことがこれからの課題となるだろう。

SM

今日の発声は、2点G以上の音域で、口先をあまり開けないで出す練習。
指をくわえることで、口を開きすぎてしまうことを我慢。
そうすることで、中、特に軟口蓋から上を開くことが開発されるだろう。

中低音は、いい感じになってきたが、まだ舌が引っ込み勝ちなので、こもる。
エの母音で練習した感じの喉でアの母音も対処すると、高く明るい中低音が出来てくる。

今日は新しいグノーを持ってきたが、前回までのLe soirも、まだ練習の必要はあった。
こちらのピアノ伴奏のせいもあるが、テンポをゆったりさせて、落ち着いてリズムを中心に譜読みをして欲しい。

また、シンプルなリズム構造だけに勘違いが目立つ。
8分音譜2つのところを、付点8分+16分になっていたり、アウフタクトが長すぎたりなど。
基本的なところで、書いてあるものを書いてある通りに、という基本を徹底することを大切に。
そういう面白くない練習をやればやるほど、最終的に品格のある良い演奏に繋がることがある。

フランス語の発音自体は、随分と明快に判るものになってきている。
後は子音の処理や狭母音の特徴など、大切に。
特にSiの発音は難しいと思うが、くれぐれも出来るだけのことは努力して欲しい。

ミカエラのアリアは、特に最後のページのメッザヴォーチェによる音楽は美しい。
気をつけるのは、ダイナミック的にもリズム的にも激しくなる所。
感情表現よりも、怜悧な観察で丁寧に、大切に対処することで、自然に音楽の良さが出ると思う。
演劇的な要素で歌わないで、音楽の丁寧な処理を大切にして欲しい。

MM

今日は、今までになく中高音から発声を始めた。
どうも喉を深くすると、こもるし、中高音もかえってスカスカになるようである。
喉の高さをあまり深くせず、むしろ高いくらいでも安定していれば、良いソプラノのポジションが得られるだろうし、
どうも、彼女の声は意外と高い軽やかなソプラノが本質的なのかもしれない、と少々迷っているが、もう少し模索したい。

いずれにしても、今日の発声の方向で調子が良かったので、しばらくこの方向でやって行こう。

プッチーニのオペラ「ヴィッリ」のアリアが、5線を越える高音が、しばしば喉から上になってしまうのだが、
高音域ほど、きちんと身体を使おう!
FTさんと同じく、しっかりと腰から側腹にかけての斜腹筋を活用して、横隔膜が上がらないように。
逆に出しやすい中低音は、むしろ高めに、横隔膜が下がり過ぎないように。
全体に高めの喉になっても良いので、それよりも、お腹、腰を使った身体を使った声に留意して欲しい。

今日は、新曲を持ってきた。
まずはグリークのIch liebe dichから。
これは5線の中の音楽で、下顎の動きに注意。
唇を良く使ったアーティキュレーションを覚えて欲しい。
そして、ドイツ語の抑揚を朗読でしっかり掴んでおいて、歌に活かして欲しい。

次のシベリウスのWar es ein traumも同じことである。
甘く気持ちの良い旋律なので、かえって力んで歌いすぎてしまうために、声が硬くなってしまう。
言葉の抑揚と意味を良く理解した上で、旋律の音楽的な要素が理解すれば、自ずと歌い方が決まるだろう。
言葉の持っている抑揚(朗読で活きる)を丁寧に旋律の形にはめて行く作業を大切に練習して欲しい。