はやしださん

今日は新たな伴奏者を連れて、伴奏合わせとなった。
個性のあるピアノを弾く方だが、慣れるに連れきちんとした音楽が表出されとても良いピアノを弾く方であった。
懸案の「魔王」も出だしの3連符からダイナミックだし、上ってくる特徴的な左手低音のフレーズも表情豊かで、追っかけてくる悪魔のようで、リアルである。

はやしださんは、と言えば、発声練習をしなくても良い声が問題なく出せて二重丸である。
1年近くバリトンの練習をしてきて成果が如実に現われて本当に良かったと思った。
低音に力みがなくなり、かすれずに響きが出るようになった。
また、元々持つ明るい声で、鼻腔の開きも自然にあって、高い良い響きである。
強いて言えば最高音部1点E~Fがつぶれてしまうが、これもチェンジを覚えて
慣れれば問題なく出せるようになるだろう。

冬のたび「道しるべ」は、最初テンポが遅かったので直した。
中庸な早さである。
声のこと、表情も言うことは無い。
強いて言えば、最後の伸ばしで拍を間違えること。
ピアニストさんに伴奏を強調してもらって、補助してもらうことくらいか。

「辻音楽師」は、ピアノ出だしの低音の和音を耳に残してそこから自分が出す最初の声のポジションを決めてもらえば、お腹からの声が出せるだろう。
後半はとてもよい声が出ている。

「魔王」ピアノは前述の通り。素晴らしい。
声が少し力んでしまう。
最初から力まないで、お腹らからゆったり出すくらいの気持ちを忘れないように。
ピアノがダイナミックなのでついつい釣られてしまうが、ピアノの音を気にしないで、力む一歩手前で少し冷静に歌うと全編上手く行くだろう。

彼は歌いだしで両手を上げる癖があるが、上げるのであれば低めに意識して、お腹、みぞおちから声が出ることを考えるための
手助けにしたら良いだろう。

本番がとても楽しみである。

たかはしともこさん

発声で記憶に残ったのは、下降形の低音部。
彼女の場合、チェンジから下に下りる際に、やや下側の声がフラットに落ちてしまう傾向がある。
この変わり目の声、太く響く声をそのまま出さないで、なるべく鼻腔に入れるように意識するだけで
チェンジによる段差が付かずに、音程の落ちない滑らかなフレーズになる。
これは大切だから良く覚えておいて欲しい。

伴奏合わせは、ラモーVole zephyreから。
歌はほとんど言うことは無いが、トリルが上手く行かないので、これは外してもらうことにした。
それから、フレーズ八分音符で終わる場合に、その音符の切り方に注意。
きちっと切ることで、次のフレーズへのブレスのタイミングも良くなるはずである。
ややもすると、タイミングが遅くなる傾向がなきにしもあらずだから。

間奏は、歌のテンポよりも早く滑らかに八分音符を弾いて欲しい。

Music for a whileは、とても良い演奏である。
声が伸びるところが、とても気持ちが良いし、予想以上にブレスが伸びるのもGood
このテンポでこのブレスでフレーズ感が出るのは立派だと思う。
All,AllとAllを連呼するところはとても個性的で面白い。遊びがあると思う。
そんな言葉の遊びが歌の中に生かされると、更に素晴らしい演奏だと思う。
Lの子音の処理の正確さはそういう意味で生きてくると思う。

ドニゼッティ「久遠の愛と誠」は、最後の高音に気をつけて。
ピアノのクレッシェンドに負けずに、いきなり張り上げると失敗する可能性あり。
落ち着いて普通に出して、クレッシェンドするくらいが、良いと思う。
一回目の方は力まないでテヌートもあまり必要ないだろう。

後は本番前は落ち着いて、普段の良い高音の声を出すためにも、自分のペースを守れるように集中することに心を砕いて欲しい。
健闘を期待している!