TT

今回も、発声練習から声の勢いと声質、共に素晴らしい喉の状態だった。

1曲目は、バッハのBist du bei mirから。
これも、全体に声が前にしっかり出て美しい声で歌えていた。

練習したことは1つ。
フレーズとブレス、その間合い次第で柔軟に表現すること。
In tempoに無意識で乗らないで、フレーズをもっと自由に歌ってみる意識を持つこと。
あるいは、フレーズを短く切らないで、あと少し余計に伸ばして、短いブレスで対処する、という方法も良い。

この曲は、平らかで静謐な音楽なのだが、シンプルなあまりに、素朴に歌うとビート感が前に出てきてしまう。
そうなると、少し平らかさがなくなってしまう。

フレーズは、ゆったりするフレーズ、少し前のめりになるフレーズ、あるいはフレーズ中でも、ゆったりと微妙に先に進むことの両者が存在することもあるだろう。
それらの微妙な揺れは、歌詞の内容を歌おう、という意識から出てくるから、やはり歌詞の内容をよく吟味して歌うことが、最善の方法になると思う。
それは、声自体は言うことがないくらいなので、後は歌いまわしで、更に表現に工夫をして欲しいという意味である。

次にオランピアのシャンソンを。
歌う身体使いが足りないように感じられた。
良く言えば、ブレスに無理や硬さが無いのだが、逆にブレスによった発声の準備が弱いために、喉があまり開いていないように感じられた。また、特に高音に昇る際に、胸を開く或は背中でも良いのだが、開いて行くようにすることで、なるべく締まらない高音を目指して欲しい。
そのためには、ブレス時から少しで良いので、横隔膜と喉の開きをリンクさせて意識したブレスをすること。
そしてフレーズでは、高音に上るほど背中を開いて、喉が締まらないようにすることをやってみよう。

出足の、高音からマルカートで降りる笑い声は、スタッカートで短過ぎると思う。その後の半音階を正確に。
Jeの発音、音程に注意を。
後は、テンポは軽快に、中間部はゆったりでも良いが、基本は早い軽快なテンポを目指したい。

FT

発声練習は、低音から始めたのだが、どうも低音だと喉で声を作ってしまう感じ。
しばらくは、前回やったことをこちらが忘れてしまっていたが、母音の感じ方のせいであることを思い出した。
いわゆる日本語の母音感覚の話しである。
それで、今日はハミングで練習をした。

で、結論から書くと、やはり高音域をいきなり出した方が声が嫌でも自然にチェンジするため、その声を応用して低音もチェンジした声を出すようにすること、が有効であること。

今日やったことで、恐らく彼も理解出来たことは、チェンジ前の中低音での声のアタック(出し始め)では、声帯を合せて出すのではなく、息が通ってから声が出てくる、一瞬のタイムラグみたいな感覚を覚えることで、喉で無理に合わせた声にならないこと、である。

TostiのMaliaを練習したのだが、低音域の多いこの曲は、彼の喉には逆に注意が必要だった。
低音から始まるフレーズでは、喉で声を作ってしまうのである。
そのため、1点Cから上で、声のチェンジが必要になっても、それが出来ずに、喉で押し上げて歌う傾向がみられた。

これを、徹底的に直す練習となった。
母音だけの練習で、歌っては、直し、直しては歌ってを繰り返して、ようやく分かってくれたことが、冒頭に書いた結論である。
喉でしっかり鳴らす低音ではなく、高音を出すミックスした声のままで、低音を処理出来ることによって、
フレーズで高音に上がっても、喉で押さない高音には入れる理屈である。
最終的には、歌詞でもかなり良い線まで行けたが、もう少し母音練習は続けたい。

最後に練習中のカンツォーネPassioneを練習。
やはり母音だけで声の練習を徹底した。歌詞による歌唱は、最後の最後で良いと思う。
暗譜するなら、歌うよりも机上勉強を徹した方が良いだろう。

MM

彼女も有効だったのが、改めてブレスで横隔膜を開くようにする身体使いと、フレーズを歌う際に横隔膜を開いて行く身体の使い方。
ややもすると、身体を使わずに口先で気軽に声を出してしまう傾向があるためである。
声が温まる温まらないに関わらず、この横隔膜を開くことで喉を開くこと、というように発声する癖を付けてほしい。

Ave verum corpusは、ピアノ伴奏でソロを弾くとややもすると、歌のためにテンポを速くしてしまうがこの曲は、明快にAdagioだ。
声のアタックで、しっかり横隔膜を開くことで、2点Cから上の声もファルセットにならずに、安定するだろう。
特に、最後の長いフレーズは、アタックでファルセットになってしまうと、ブレスが持たないだろう。
その意味では、上に昇る際に、ブレスを節約するために抑えようとすると、共鳴も出ないから、かえってブレスが伸びないことになってしまう。
思い切って最初に当てることで、響きの共鳴を作ること。その結果、フレーズは長く伸びるというやり方が良いと思う。
クレッシェンドする、というよりも、使い切る息を吐ききるために、必然的に声が伸びると思えば良い。

モーツアルト、イドメネオのアリアは、今回は初回から安定した歌であった。
ただ、レシタティーヴォの声と発音がどうも不明瞭なので、練習した。
喉が高すぎると思う。声のアタックのポジションが高過ぎないように、注意を。
それから、やはり発音の口の開け具合で、共鳴効果があるかないか?という点が大きいだろう。
概ね中高音は、口を開けすぎると、響きが抜けてしまうこともある点に注意を。

最後に、平井康三郎「うぬぼれ鏡」は、何度もやるのだが出だしの「ま~!」の発音が不明瞭なのと、音程が微妙に♭に。
あまりうるさく言わないで終わってしまったが、この曲もやはり声のポジションが高いのではないかな。
全体にキーが高いせいもあるのだが、なるべく低音でのアタックを低く意識しておくことと、口の開けすぎに注意、であろう。