GH

発声練習では、こちらが言わないでも、今まで指示してきたことを、自発的に実行出来るレベルになった。
結果的にも、私の指示したことが間違っていなかった、と確信を持てるくらいに、発声が良くなった。

一番良くなったのが、旋律を歌う声の滑らかさ、明るさと音程の安定さである。
Caro mio benでは、高音の声が喉っぽくなくなって、かつ無理のない高音の声になった。
喉が一定になるので、音程の跳躍で不安定になったりしない。

シューベルトの冬の旅から「凍結」伴奏も難しく、弾いていると声のことがおざなりになるので、旋律を歌うだけで進めた。
フレーズ毎に声の課題と、発音の処理など、基本的なことを確認し、訂正していった。
ここでも丁寧に着実に練習をしていくと、前述の声の問題が少しずつ解決していく。

具体的には発音時の下あごの抑制である。
発声で、下あごをなるべく動かさない方法を見つけること。
二つ目は、歌詞発音でも、下あごで発音しないようにすることで、上あご、あるいは上あごの中を上げて、いわゆる上の開いた声を探すこと。
上が開いた声が出せるようになったら、下あごも自由に使うことで、響きに重さをつけたり、深味のある声を作ったり、という具合。
上を開けるという発声がもっとも難しい技術なので、最初になるべく早く覚えて置くべきである。

ドイツ語だが、Von hierをフォニ~ルとしないで、フォン・ヒールと意識を徹底してほしい。

TF

1曲目のバッハの199番のカンタータ、今回最後の伴奏合わせで、どうなるか!と固唾を飲んで聞いたが、とても良い結果にほっ、と胸をなでおろした。
という具合に、古臭い形容詞がずらずら並ぶくらいに良かったのである。
何が良いか、というと、リズムが正確であること。

これまでの彼女は、声の癖を直して、正しい発声で歌おうとするあまりに、テンポから遅れて発声処理をするような歌になっていた。
発声というのは、音楽のためにあるわけで、旋律を歌うのに、発声を重視するあまりに、基本的なリズムを外れてしまうのは本末顛倒と言わざるを得ない。
特に本番が近付いた現在では、発声の正確さよりも、リズム構造の正確さを表現する方が、良いと思う。

ヘンデルのPiangero la sorte miaは、全体像が定まったが、まだ前後のテーマ部分の歌が、生固い。
バロックだから無表情で淡々と、歌う、というのが余裕であればまだ良いが、ブレスが苦しいのにテンポ通り、淡々と歌うといのが、どうにもおかしい。
ということで、一緒に歌ってテンポ設定をした。

ゆったりと、深い悲しみを歌うところと、劇場的に悲しみを吐露するところとでは、進み方が自然に違ってくるであろう。
それらのことは、言葉の意味を考えたところから出てくるはずである。

中間部のテンポ感、切迫感、メリスマの声などはとても良い。

最後の中田喜直の「おやすみなさい」は、とても綺麗に歌えていた。最後のハミングは、くれぐれも気持ち良く音程を歌える状態に。
要はブレスだろう。