OM

モーツアルトのCrudele non mi dir と、Zeffiretti lusinghieri
現状の彼女の発声としては、良く歌えている。
音域は高くはないが、以前の歌唱レベルに比べ、一段ステップアップしたことは間違いないだろう。
中音低音~中高音の声量が増したのと、高音発声がそれなりに安定したことが大きい。

ただ、発声は基礎的な課題が残っているので、徐々にで良いので解決を目指してほしい。

それは、軟口蓋を使う発声の会得と高音域への換声の方法とお腹を使うブレスの会得、この3つになる。
後は、発音の知識と方法論の会得。

換声点は2点Eだが、どうしたら声帯を開いてしまわないでここから上に持って行けるか?
勿論、喉に大きな負担を与えずに、という発想を常に持ち続けて練習してほしい。
顔の姿勢と、軟口蓋発声による、鼻腔での響き、そしてフレーズをきれいに形作るお腹のブレスによる、呼気のコントロール能力。

発声についていえば、今日は上顎を徹底して意識する方法を指摘した。
発音に関しても、下顎を使う意識ではなく、上顎である。特にA.E.Oの広い母音の3種類。
下顎を下げるのではなく、上顎を上げるように発音・発声することを徹底してほしい。
上顎の中に丸いドームがあり、その天井に声が響くイメージを持つこと。

下顎を使わないで上顎で母音発声をしようとすると、必然的に舌を柔軟に良く使わないと、子音発音が出来ないことに気づくはずである。
逆に見れば、われわれ日本人は舌をあまり使わない発音をしているはずである。
舌を使わない代用品として、下顎を良く使うことになっているはずである。
これが声楽的には、喉のフォームに悪い影響を与えやすいのである。

発音については、声楽の場合、基本は何語であっても、言語のアクセント位置を知ることが大事。
覚えておくとよいのは、文節の中のアクセント位置の響きを確立できれば、その後の響きはそれに従属しているように発音すれば良いこと。
例えば、イタリア語ならDesioだとIのアクセントの響きのまま、口の形を変えないで語尾のOを発音すれば良い。
これをデジーオと歌うから、日本語のカタカナイタリア語になるわけである。

イタリア語でも、例えばDesioは、理論上は3音節だが、実際はアクセントの音節が勝って、前後の音節はおまけみたいに発音される。
日本語だと、デジーオ3音節をはっきり出してしまい勝ちなのだ。
この違いが分かると、イタリア語の発音は日本語に似ていると言われる事がおかしなもの、と分かる。

これは、イタリア語に限らず、少なくともドイツ語もフランス語もまったく同じである。
フランス語はしゃべり言葉は、基本的にはアクセントがないように感じられるが、文節の流れの中で自然に抑揚がつくところがある。
特に鼻母音は、ほとんど長母音化するのである。

また、単語にアクセントを付けるとフレーズとして美しくなる場所に、あたかもアクセントがあるように発音するのは、朗読の場合は当り前に行われるし、
作曲家はそのことを意識して、言葉のどこの音節に強拍を置くか?と良く考えて作曲するわけである。

ドビュッシー「花」を復習。
この曲は、高音はそれほど高くないが、鋭さのある響きが必要になる。
換声点の発声を覚えないと、特に冒頭に出て来る上向形のクレッシェンドするフレーズの美しさと感動が表現出来ない。
Les fleurs enlacent mon coeurの最後のcoeurが2点Eだが、これがどうしても奥に引っ込んでしまうこと。
母音でいうと、日本語のアを発声してしまうからだろう。
これは舌の形をEに意識しておいて、口は縦に開ける感じだと上手く行くのではないか?と後で思った。

それから、途中のSi majeur(ロ調)になってからのVenezのVeが聞こえない。
短い16分音符をしっかり歌うこと。
これなども、言葉を判っていれば、音符の形に依存しないで歌えるはず。
音符で歌うから語尾の2分音符を伸ばすだけで終わってしまうのではないだろうか?

高音のロングトーンである、Les mainsの2点Gと、Les vitresの2点Aは、いずれも出来る限りスピンとな声を出したい。
特にVitresは、激しい感情的な表現なので、口から物を吐きだすような感じ、喉が口から出てしまうように発声を促した。

「夕べ」は、フランス語の読みを再確認。全体的にみると、言葉をレガートではなく、シラブルを良く立てて明快に語り口を出すフレーズと、
滑らかに柔らかく歌うフレーズの対比を良く確認しておくことが大事。

2曲ともピアノ伴奏部分が格別に美しい。それだけでも、歌が自然に映えて来るように出来ている。
特に強弱のニュアンスと和音の響きはくれぐれも大切にしてほしい。
ドビュッシーのピアノ音楽はタッチの柔らかさと響きの重厚さをどう出すか?という事だけで音楽の骨格が成立するくらい。

林光の4つの夕暮れの歌から、3番と4番。
3番は、自然な語り口が音符で表現されているので、彼女には自然に歌えるものである。
どちらかというと、ドビュッシーの歌曲に近い音楽である。

4番が難しいのが、古典的なスタイルの音楽で、歌うリズム感がシビアに問われる。
伴奏が短い音符+付点音符のスタイルで、聴いていると自然に2拍子に聞こえるスタイルである。
そして、メロディが3連符だから、ほとんどマエストーゾに歌う曲になる理屈。
そのためには、3連符や8分音符を歌詞を交えて正確に歌えないと、表現にならない。
また、最後の2点Gで伸ばす「うた~」の声は、しっかりフォルテで伸ばす必要がある。
こういう発声の際に、舌が奥に入りこんでいないだろうか?
[wb_fb_f name=”Mai oniki” id=””]