OM

コンコーネ33番から。
良い声の素質が感じられて、良く響いていたが、発声としてはまだ喉頼りな面があるのではないか?
と感じた。
この曲に限らないが、まだ息を当てて声を出し始めている、という感じである。

良い発声の状態は、ブレスをすると自然に喉が決まって、まったく自由にいつでも声を出し始められる状態になるものである。
そのために、ブレスがあり、喉のフォームを決めるための、いわゆる「あくび」のフォームがある。

プーランクの「ホテル」を練習。
中低音の発声で、ものを飲み込みかけた時の喉、というイメージを伝えた。
喉を開けた、という感覚ではなく、むしろ喉を閉じた感じにならないだろうか?

このフォームが上手く行くと、声の出し始めたまったく自由になる。
また、良く響く。

俗に言う喉仏の転回というのか?
これを喉を下げる、という人もいるが、私の見解では下げるというよりも、前に少し倒すというイメージ。
このためにこそ、姿勢が大切になる。
首の後ろをまっすぐに立てる姿勢は、この喉仏の状態を規定する。
また、呼吸で胸の下部を開くためにも大切だ。

彼女の歌声を聴いていると、持ち声の良さと音楽的センスでかなり進歩していると思う。
ただ、基本的なフォームが未完成と感じられる。

夜の女王のアリアZum Leiden bin ich auseroren
基本的に良く歌えている。
高音も良く出ている。
ただ、全体的な声の品位とか、女王のアリアを歌う声の基本が未完成。

クラシック音楽の声、発声は、上記したような、中低音のフォームと高音発声が組み合わさらないと、本当とは言えないから。

現在は、発声を少しずつ基本を覚えていくことと、この曲では、発声の前に、レシタティーヴォでは威厳を以て歌うこと、あるいは夜の女王の強さ、冷淡さ、激しさを、意識すること、と話した。
いつものOMさんではなく、である。

発声としては、特に中低音では、喉のフォームもあるが、発音時の下あごのがくがく動かす発声を改善してほしい。
これは、ドイツ語に限らず、フランス語もイタリア語も同じ意味がある。

最後にラクメを練習。
これも中低音は良く響いている。
前半は高音も楽で力みがないが、徐々に力んできて、最後はやはりかなり力んだ超高音発声になる。

2つ感じることがある。
ブレスの際に重心を低く感じるだけだと、息が高く上がらない。
胸を楽に開くようにブレスをすること。

それから、やはり上記の発声である「あくび」をするためには、彼女の場合はもっと下あごを下ろして、いわゆる口の開いたフォームにしたほうが良い。
高音が出にくいのは、そのまま上がろうとするからである。
フレーズの中で切り替える意識を持つことで、上手く行くと、むしろ高音区は喉の安定した、きれいにチェンジした声になるはずである。

下あごを下ろすと喉前面は下に傾いたままなので、全体に喉を引き上げて高音を出すために、上唇を持ち上げることで、喉の上がらない(締まらない)頭声の響きが出せるようになると考えている。