YY

プーランクの「偽りの婚約者」1番、2番、そして5番、6番を練習した。
この曲集は、彼女の雰囲気にぴったりだ。
中田喜直と金子みすゞの曲集も、実に良く似合っている。

プーランクを歌ってもらって感じたことだが、やはり発声に息を関与させ過ぎだと思う。
つまり、なるべく喉を使わないように発声している意識なのではないか?
良い意味で、喉を使った発声という方向転換が出来ると、劇的に歌が変わると思う。

方法はブレスの方法と声の出し始めの意識を変えること。
特に声の出し始めは喉そのものに意識を集中して、呼気を節約して出し始めることを、思いきってトライしてみることから始まると思う。

金子みすゞの曲集は、もっと歌詞の内容を直截に歌声で表現するほうが良いだろう。
声楽家です、という見本のような演奏よりも、朗読や演劇のセリフのようなリアルな感じを少しだけまじえてみると良いだろう。

TH

ヴェルディのErnaniは、曲の短さと音域からサロンでも良い歌だと思う。
また華やかさがあって良い。
ベッリーニのIl puritaniからQui la voceも、音域はクリアできているが、高音のメリスマがやや苦しい感じ。
高音になると力みが出て、あたかもリリックなソプラノという感じになる。
彼女の発声は、中低音の柔らかさ、その優しい歌声から見て、高音域もメッザヴォーチェの柔らかい高音発声が得られると良いと思う。
このやり方の糸口が見つかってないが、恐らく彼女も呼気ではなく喉そのものへの意識を集中と、呼気の節約がきっかけになるのではないか?
その為には、中低音から息もれの少ないMezza voceを練習すると良いのではないだろうか?

KM

モーツアルトのケルビーノのアリア「恋とはどんなものかしら?」を譜読み練習した。
母音発声とイタリア語の読みから入ったが、驚くべきは歌詞をつけると、とたんに歌声に力がみなぎること。
今までたくさんのアマチュアを教えてきたが、歌詞をつけると歌声が伸びた人は初めてである。

その原因は、彼女の子音発音の良さにある。
子音を明快に意識して発語しているため、結果的に母音発声に良い感覚が生じるのだと思う。
Vaga lunaをやってみたが、たとえばDilleという単語のDの出方や、Duolもそう。
一般にDがほとんど出ない女性が多い中、珍しい。
かといって、喉を押さずに、声帯の細い合わさりに耳が集中しているのが良く判る歌声である。
太くなると地声になるのだが、太く当たらずに細く、しかし良く合わさった声である。

歌声の核になるセンスが良いので、将来がとても楽しみである。