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トスティ「朝の歌」レオンカヴァッロ「朝の歌」トスティ「朝の歌2」

3曲ともにレッスン内容は、以下のような点に絞られた。

声の出し初め、特に中音域でピッチが甘い傾向があったので修正。
4点h~Dくらいだろうか。
中音域も小換声点という理屈があるので、特にフレーズの入りでは要注意。

フレーズとフレーズの間のブレスは、特に前フレーズの状態の喉を変えないで、腹筋だけブレスを入れるように。
また高音域から中低音域に降りる下降形フレーズの場合は、低音側の響きを落とさないように、高音の響きの状態を保つことが大事。
つまりフレーズ内では、声の響きを落とさないように注意すべき事。

レオンカヴァッロの「朝の歌」
彼の場合は、特に最高音域である4点h~5点Cの声が秀逸である。
この高音のキャラクターからすれば、中高音~中音域の声のキャラクターとしては自ずと軽く高い響きを目指すべきではないだろうか?

トスティ「朝の歌2」

これも発声上の課題は、前2曲と全く同じである。
ただ、トスティの歌曲はどちらかというと繊細で優美な表現だと思うので、弱声は弱声として特に高めの声はファルセットに近い声は合っていると思う。

TNT
TNTさんの歌う姿
以前に比べると共鳴のついた中低音の声が良く響いて効果的な声になった、と感じた。
今回の歌曲を勉強した結果であろうか?弱声が少し使えるようになった点も大きく評価できる。

今回の課題としては、響きの高さやピッチの高さを意識し過ぎていたということだろうか。

フォーレ「9月の森」で、それが目立った。

ピッチも良いし声が適度にスリムになるが、低音系の本来の歌曲系歌声の良さは、太さや柔らかさが加味された声の表現にある。
特にこの曲は深みのある声が作品の良さを発揮させるので、声を細くピッチを高く意識すると曲の良さが半減する。
太く柔らかく落ち着いた声が相応しい。
みぞおち辺りから楽に出る声と、口を開けた方が低い共鳴が出やすいだろう。

それに比べると同じくフォーレの「秋」は、彼の鋭く強い声が合っていると言えるだろう。
羨ましいくらいのブレスの長さが発揮されるのは、声帯がしっかり合った息漏れのない声によって可能になっているのだろう。
大事なのはPPで入る最後のフレーズの冒頭である。
ここは、恐ろしさとか孤独感を良く感じて、相応しい声で対応してもらいたい。

「静けさに」

これも「9月の森で」と歌声の課題は似ていると感じた。
特に出だしのCalmeの声は大事である。

後は良く歌えているが、フォルテの声は響きの鋭さよりも響きの厚みとビブラートがつくと良いだろうな、と想像させられた。
特にNos coeurの声。
またその後にParimi les vagues langueurは、弱声が欲しいところであった。

あと難しいと思ったのは、最後のChanteraのやはり弱声の出し方。
鼻腔共鳴に傾き過ぎのため、声質の柔らかさを担保する息の混ざりが出来ないのではないだろうか?
喉を開けて声帯を開くということもフランス系の歌では必要な要素だと思う。
Hを使って胸に小さく軽く当てるようにして、喉の感覚を養うと良いだろう。

TM
TMさん歌うの図
フォーレ「蝶と花」

テンポ感が遅いと感じたので、TMさんも歌い馴れてきたようだったので伴奏者には速くしてもらった。
その方が若々しく、この曲の調子に合っていると感じた。
何か内面的な要素を表現するというよりも、曲調を素直に明るく張りのある声で歌う方が、単純に好印象を残すからである。
特に各節最後のFleurs touts deuxやAh mes piedsなどは、張った声にしてもらった。
弱声のテクニックはまだ難しい面が残っている。
基本テンポが速すぎると3番のAnimeが効かないので、ほどほどの速さを大切に。

フォーレ「幻想の水平線」

「海は果てしなく」

テンポが遅いと感じたのは、ピアノ伴奏が拍節的に小節単位の音楽になるから。
本来は延々と続く波の動きのようになると良いのだが。
そのため、テンポを速くして解決した。
この方が結果的に海への若々しい情熱を感じるようになった。

「私は船に乗った」

リエゾンの問題は解決していた。
16分音符をていねいに処理するように歌ってもらった。
細かい音符の発音のせいで、16分音符の形が崩れるのが表現に影響を与えるからである。
テンポは少し遅めが良いと思った。

「ディアーヌよ、セレネーよ」

これも伴奏のテンポ設定を調整。
遅すぎず速すぎずの微妙なところ。
Le regret d’un solei dont nous pleurons la perteのクレッシェンドを良く尊重して。
その次のパートは、声の弱声が難しい。
いまは弱声よりも、音程良くきちっと歌うことを優先してほしい。

「船たちよ、私たちはお前たちを愛したことになろう」

テンポと声はバランスが良かった。
転調とディミニュエンド、クレッシェンドは良く意識すると良い。

フォーレ 二重唱「この世界のすべての魂は・・・」

声のバランスの問題という面で、TMさんの歌声が中心課題であった。
私感では、この曲を男性が歌うなら弱声で繊細に歌うよりも、声の色気を発揮した方が良い、という意味でTMさんには声を張って歌うことを指摘した。

もちろんフレーズのディミニュエンドは必要であるが、全体的にはイタリア系の歌い上げるスタイルが相応しいと感じた。
テンポ感、伴奏とのバランスなど特に問題を感じなかった。