たかせさん

2回目のレッスンということで、声の様子から復習したが、高音が良く伸びそうな喉という印象。
彼女の良いところは、下顎に無駄な力みがまったくないこと。
裏返せば、やや口の開きが弱い傾向にある。
だが、どっちが良いか?といえば、力みのない方が良いと思う。

2点Fくらいから明快に声の切り替えが効いて、それさえ上手く行けばそのまま3点Cくらいの高音まで行ける。
更に高く出そうとするともう一段切り替えの意識が必要だが今は未だそこまで覚える必要はないだろう。
そこまでの発声のこつを覚えれば後は自力で自然に出来ると思う。

中音域は元々Jazzで勉強していたので声を出すのに(歌うのに)苦労はないのだが、やや地声成分の多い出し方であり、喉を鳴らそうとする傾向があるため、更に高い音域に行くのに段差がついてしまうし、そこに行く手前でも、喉が苦しくなるはずである。

ということで、中音域に気をつけて練習してみた。
口を開けたハミングでピッチを高めに取って、そのハミングの状態から母音に変えるのだが、ピッチは悪くないのだが、どうも喉のどこかに力が入ってしまう。
難しいことは言わずに、上顎に響かせるように、上顎を上げるようにして、中音域は発声して、ということでやってみた。

恐らく大切なことは、姿勢ではないだろうか。
微妙に下顎から舌根にかけて力みを入れて出すために、顎をきちんと引いた状態で、顎を前に出さずに、中低音から頭に響かせる意識で歌うと、一見スカスカしているが、無理のない声が響くのが分かると思う。
姿勢は、レッスン室の扉に背中と首の後ろから腰、かかとなど全部つけて、練習してみた。
ドミソ、など音域を広めに取るアルペジョで歌うと、高音まで滑らかに上り下りできるのが判ったはずである。
顎を適度に引いて、首筋、すなわちうなじを真っ直ぐにして歌うことで、下顎や舌根によりかからない発声が出来る。

今日はコンコーネを練習した。
3番までスイスイと調子よく練習できたのが何よりの収穫。
ブレスポイントや高音に昇る時に注意すること、声の出し具合などなどを、母音だけやJaなどで歌いながら勉強した。
とはいえ、あまり細かいうるさいことは言わずに、中低音域の喉声にだけ気をつけてみた。
彼女は譜面が結構読めるので、とにかくこの練習曲をドンドン理屈抜きで歌っていくことで、声楽の基礎のスタイルを
身体で覚えてもらえると思う。

コンコーネは50番まであるので、恐らく1年あれば、確実に全部出来るだろう。
ともかくこれを遣り通せば、一山昇れると思う。

最後にグノーのAve Maria
前回徹底できなかった、音程の移動で声をずり上げる癖、声の出し始めでコブシが付く癖などを直した。
これは今のところは徹底して注意して欲しい。
付けないで歌えることが普通になったら、そこからもう一度付けて歌えることが出来るだろう。
今日はあまり出来なかったが、徹底して母音だけで歌って、中音域や高音の響きをきちっとさせて歌うことを徹底して欲しい。
そこから、その響きを大切にした歌詞の発音で歌えるように、という順番を守って欲しい。
歌詞だけにいきなり集中すると、発声がないがしろになるからである。
今日のレッスンで、発声の大事な所の感覚がある程度判ったと思うので、次回からこれを定着していきたい。

彼女はクラシックは初めてだが、やる気があるので真剣だし声を出すのが楽しいことが良く伝わってくる。
未知数だけれども、それだけにどれだけ伸びるか?ということは教える立場としての大きな楽しみである。

あだちさん

鳥取から遠い所をウエブを見て来てくださった。
こうなると、こちらも責任重大である。

早速声を聴いてみて、第一印象は、下顎の力みが大きいこと。
発声で身体を構える癖があること。

声自体は合唱で歌うには過不足のない声である。
ただ、オケ付き合唱で大人数の合唱団であることと、ソロでの発声を身に付けたい、ということなので合唱ということを無視して教えた。

結論から言えば、今まで指導の中で胸郭を高く開くことに重点をおくあまり、上半身、とくに腰から側腹にかけての大事なところが
ほとんど使えない状態で歌っている、と思った。
下腹部を締め上げて、腰をきっちり入れて胸郭を上げているので、逆に腰も斜腹筋も全く働いてないか、使えていないようである。

それから喉を開くことを意識するあまり、下あごを使ってやるために、今度は下顎がとても力んで使ってしまうことである。

ともかく身体をリラックスさせて、どっしりと立つことである。
姿勢の確認は例によって扉に背中を付けて歌ってみた。
尾てい骨から背骨の腰にかけては、中に入れないで自然に真っ直ぐに立っているような立ち方が理想である。
そのことで、重心が低くなるし、腰が使えるからである。
硬い板の上に寝て、腰の部分がどすんと板に付いているような感じである。

ブレスも胸を開くのは悪くないが、ややそれのみに偏っているので、横隔膜自体を少しだけ広げるようにしてみると良いだろう。
そのことで、側腹から腰を使った発声が可能になる。
そうすると、喉がリラックスした状態で、あたかも横隔膜の上に声がぼとんと乗ったようなイメージで声を出し始めることが出来ると思う。
この開く感覚もやり過ぎないこと。ほんの少しで良いのである。
何事もやり過ぎると、筋肉は緊張が過度になって、そこから先に進めなくなる。
ブレスも最初は息が足りなくても良いから、入れすぎないことである。

すくなくとも中低音域でそういう声の出し方を工夫してみて欲しい。
これは、下あごを降ろして喉で下げるのではなく、あくまでブレスとそのことによる声の出し始めの位置の感覚である。

ちょっと歌いだすと、特にちょっと音域が上がると、顎がどんどん前に出てくる。
これが多分一番強い癖なので、なかなか大変だが、意識してみて欲しい。
常にそのことに意識を持たせていると、自然と力みが取れて、不必要な下顎の使い方は軽減されると思う。

後は声自体をもう少し当てた、声帯の伸びたしっかりと合った響きを覚えること。
特に前述の舌根や下顎の影響で、アの母音が奥まってしまい、スカスカで暗い響きになってしまう。

まずはイの母音の響きが良いので、イからエそしてア、と響きを変えないようにして移行する練習。
最終的にアの母音は、もっとずっと前に響かせる意識を持って欲しい。
彼女の場合、2点Fくらいから上のチェンジする領域に入っても、チェンジを意識しないで、そのまま前に出すように発声すれば
2点F~でもしっかりとした良い意味で太さと力強さのある高音域が出せる。

ただし、彼女の場合今度はこのチェンジ領域から上で、下あごを前に出して、強制的に喉を開こうとする発声があるために
今度は細いスカスカとした高音になってしまう。
これも頑強に癖になっているので、大変だが

これらの今日の練習を分かりやすくするために、上半身を少しだけ前に倒して歌ってみると、身体の使い方が分かりやすいだろう。
腰が使いやすいし、顎を出す癖も軽減するはずである。

最後にヴィヴァルディのGloriaからDomine Deusを練習してみた。
声がスカスカしてどうも喉が落ち着かないので、イの母音で練習してから、今度はアにして声の響きを前に出すように注意して練習。
その後、歌詞をつけて練習した。
この方法は効果があると思う。
惜しむらくは、2点F前後の響きがやや細すぎてしまうこと。
彼女の声は軽い高いソプラノというよりも、やや重めの声ではないだろうか?
もっとしっかりしたソプラノの声になる可能性がある。

わきくろまるさん

今日は発声では中低音域で特に舌が力んで、喉に引っ込んだくぐもった発声になることを注意。
声の響きを深くするわけだけれども、それを下顎や舌根だけによる代償行為としてしまう。
身体をゆったりさせて、喉もリラックスさせ、声の出始めをみぞおち辺りから出始めるように意識するだけで良いだろう。
下あごを下げ過ぎたり、舌根を力ませて喉に引っ込ませて出すのは後々癖になると困るので注意してほしい。

試みに母音をエにすると、舌を引っ込められないので、前に出る声になるだろう。
その響きをアの母音にも応用して中低音域のアの母音を作って欲しい。
喉の深さは、作るものではなくもっと自然な姿勢やブレスそのものから出来上がるものだと思って欲しい。

中低音は胸郭を上げすぎないで、むしろ胸郭は上げないで、横隔膜だけを意識すれば良いと思う。
みぞおち辺りである。
そこから声を出し始める。そのためにブレスもそこで軽くすればそこから出せるきっかけになるだろう。
胸郭は高音を動くフレーズになった際に、初めて胸郭を意識するくらいで良いと思う。
いつも意識すると、身体の力みが出て、喉も緊張してしまうだろう。

2点F以上の高音域は、相変わらず元気の良いしっかりした高音が出せているが、これから注意したいのは
えいや!っと出すだけではなく、一歩抑制した状態でも出せるようになることだろう。
“せーの”で気合一発出せば、良い喉をしているので比較的良い声で高音を出せるのだが、これではコントローラブルにならない。
メッザボーチェというのはそういう意味で大切である、と言いたい。

一番気をつけて欲しいのは、声をコントロールしようとすると、喉が上がってしまう点である。
喉が上がってしまうと、今度は息をコントロールできないので、逆に痩せた声で使えなくなる。
これは声の出し具合と、喉の状態をどう持つか?という難しいところがある。

概ね声量は抑えすぎると喉は上がるので、勢いは必要なのだが、勢いが強すぎると、喉も力んでしまう。
良くノートで比喩として書くように、ピッチャーが遠投するように、思い切り投げるのではなく、手首のスナップを効かせて
キャッチボールするくらいの強さである。
力を入れないのではなく、適度に入れるのである。

そしてそのためには、顎が上がらない姿勢と、唇の使い方に注意。
彼女は高音域になると、口を横に引く癖が強く、これはこれで声帯を合わせようとするためだが、コントロールするためには
声帯が合い過ぎるとコントロールできないのである。
要するに声帯には微妙な間隙があるからこそ、息を声の響きにミックスさせる、ということが出来ると思う。
そのためには、口を丸く突き出すように、あるいは口を縦に開けるように使えると声帯に開きが生まれ易い。

ただし、喉で力んで出してしまうと何をやっても無理なので、出し始める瞬間の声を当てる場所の意識と、口などの状態と特に顔の角度を中心にした姿勢に気をつけて。
高音の場合、前に意識するよりも、うなじや後頭部に向けて口を丸くして吸い込むように後ろに当てると、開いたメッザボーチェになりやすいだろう。

この練習は高音でやると、喉が詰まったり逆に上がってしまったりするから、最初は息だけで練習してみると良い。
要するにビール瓶の口に息を吹きつけると、その唇のポイントと息の強さがうまくかみ合うと、ぼ~んと響きが出るだろう。
そういうポイントをつかむわけである。

曲は以前にやったことのある、ベッリーニのAh non credea mirarti
練習したいこと、目標は、2点F前後を動くフレーズをメッザボーチェで歌えること。
難しい理屈抜きで、言葉で歌うのではなく響きをみっちりとつないで、ゆったりと美しく歌うこと。
勢いで喉で押して強く歌うのではなく、である。
後は、最後のカデンツの2点Aの高音。

特に最後のフレーズはブレスが長く、1度2点Aに上ってから再度2点AsでPPで出す、という難しいもの。
2回目のPPは口を開けすぎると、声が開きすぎるし、当たらないし、難しい。
口を開けないポジションで、かつPPで出す必要が出てくる。
ウの母音で、再三練習したが、まだ確率は低い。
声を出すポイントが低いため、どうしても喉を絞めてしまうようである。
ウの口の形をしておいて、息を頭に素早くしっかり送る練習が出来たら、頭の中で声が出始めるようにしてみると、良いポイントが見つかると思う。
次回も練習してみたい。

さわださん

今日はレッスン前にフォーレの歌曲の歌詞の解釈の話になった。
詩は論理的な意味と、直感的なイメージと二つの要素がある。
恋愛の歌の中に、初恋、というイメージがあれば、それは直接そのことが書いてなくても、そういうイメージが出たらそれは大切にすべきだろう。
ないものを無理に作る必要はないと思う。

それから、詩は男性が書いている場合が多く、歌い手が男でない場合は、ジェンダーを取り替えてイメージすればなんら不思議はない。
今回勉強している中で一番難しいのは「アルペジョ」だろう。
これは恐らく夜の風景の中に浮かぶイマジネーションを歌っているわけで、

本当に良い声になった。
フォーレの中声用あるいはオリジナルキーで、少し重めに音楽を作ると、彼女のメゾソプラノの声が本物になってきた、と実感できる。
今日は調子も良かったのだろう。
後は2点Eくらいから上の領域で喉が上がった、締まった発声にならないようなポイントを定着したい。
特に下降形の発声で、最初の声を出す際に、少し下あごを意識するくらいで丁度良いだろう。
出す瞬間に上がってしまうポイントになりやすいのである。
中低音と違って、逆に低いポイントを意識して出すことだけである。
当面の課題はこれだろう。

曲はフォーレの歌曲「ネル」から。
気をつけるのは、適度に音程を上げる上の声の響き。
SoleilのSoとか、Mon coeur a ta rose et のroとか、Sous le mol abri de la feuille ombreuse monteのMonとか En mon coeurのMonとか、などなど。
最後のNe fleurisseの高音はしっかり良い響きが出ている。
ソプラノが歌うこの曲とは全く違う、力強さのある女性であっても、男性的な魅力のある色気が出ているのが好ましい。

Les presentsもとてもよかった。
これはピアノの伴奏の弾き方で大きく変わる。
軽く流して弾いてしまうと、まったく良さが出ない。
声もモルトレガートで母音の響きをみっちりとつなげるように歌って欲しい。

「夕べ」
これも冒頭から、力強くしっかりと歌うべきだろう。
今は、ニュアンスをあまり考えすぎずに、言葉と譜読みが確実になってから、ニュアンスを考えれば良い。
後半のLe raconte tes yeuxの所のConteの高音は素晴らしく良い声が出ていた。
その代わり、その後のLeves au cielのエの母音の高音は、出し過ぎないことと、喉が上がらないポイントを出すための
口の使い方に注意。

「アルペジョ」は初めてだったので、譜読みを確実に歌ったが、これも良い声が出ていて、なかなか良い雰囲気である。
Sylava,sylvie et sylvanireと途中伴奏形が八分音符だけになるところは、テンポ自体を取り違えないように注意。
L’etoile au fontaine se mire allez par les sentier d’argentのAllezのHナチュラルをピアノに引っ張られて♭にならないよう注意!
最後のParmi vos cheveuxは一息で。