どうにか本番に間に合う段階までこぎつけた。
のっけから失礼だが、心配だったのだ。
今日は伴奏あわせだったが、懸案のリズムの乗り。
音程も声もクリアできたのだが、最後の最後までこのリズムで苦労する。

特に彼女は8分音符系のリズムが苦手のようだ。
ただ練習の甲斐あって、何とか苦手な所を克服できた。
特に心配だったシューマンの「くるみの木」クリア出来た。
声のことは良い。

発声でもちょっとしたコツを教えると、かなり良い感じの声が出ている。
もともと良い声の持ち主だが、使い方を知らないでいた。
中低音はたっぷりあるし、高音も間違わなければ綺麗に出せる。
ただ、ブレス、息の使い方がもう一歩であった。

今日はドレミファソ~を一音一音歌うのではなく、一塊にして息を流して滑らかに、というのが出来て良かった良かった。
そして、速くしても遅くしても自由に出来た。
これが分かると、実際の歌でも自分の力で歌い進むことが出来るはずだし、
歌う上でのリズム感の何たるか?が分かるはずなのだけど。

そして「ハスの花」は元々リズムは問題ない。
こちらはむしろ声の強弱だろう。
そしてリズムは、弱い時ほど遅くなるし、強くしていくに従って自然に少し前に進んで行くものだ。
まったく同じだとすると、強くすると重たく聞こえる。
それも一つの効果としてあるけど、この曲の場合は少し前に進んで行く必要があるだろう。

出だしのピアノの和音が抜けてしまって、おや!と思ったが、家のピアノは鍵盤が
重いことを思い出した。この曲は和音が命だから、和音感のバランスと、後は歌と同じでクレッシェンドに従って
前に進んで行く進行性と推進力みたいなものを出して欲しいと思った。

最後に「献呈」
実はこれが一番難しかった。
リズムは難しくないはずなのだが、ブレスがきちんとしないために、肝心のところで声がぽしゃってしまう。
これではいけない!
ブレスをちゃんとして、声を張るべきところはちゃんと出して欲しい。

彼女はテンポが気になったらしいが、あまりにおんぶに抱っこである。
もうかなり速いテンポにしているのであった。

さっさと自分が歌い進めば良いのと、ブレスをちゃんと入れれば良いのだ。
歌い進むのは発声練習で出来たではないか!
リズムが分からなくなることを怖がらないで、必ずブレスを入れて対処すること。

今日のレッスンではっきりしたことは、やはりブレス、である。
どの曲もブレスを決めること、あるいは実際に歌う場合にも、決めたことは必ず守ること、である。
そのことは、本番で上がって息が足りなくなっても対処できる最低限のブレス感覚を守ることである。
それがきっちりしていないで、何となくでやると、リズム全体に及ぼす影響があるから大切なのだ。

シューマンのこの種の歌曲に合った良い声を少しでも生かしたいので、今のうちに徹底してリズムを確実にして欲しい。
そのためのブレスポイントである。

ふじいさん

レッスンに来て歌う様子がとても一途で、中学生くらいの女の子がそのまま、という感じで好印象。
まあ、彼女に限らず皆さんそうなのだが。

そういえば中学校時代にいたな~合唱部で歌の好きだった女の子が、と思い出した。
その彼女は若くして?もう孫がいて、今でも地元の女声合唱団に属して歌っている。

女性を歌に駆り立てるものは何だろう?
いや男だって同じなのだが、女性の歌う姿を見るとなぜか女性固有のように感じてしまうのはこちらが男だからなのだろう。
ただそれだけのことだ、と無理に納得。

さて、それくらい歌が音楽が好きで真摯な気持ちがある彼女なので、後は発声である。
母音だけでやる発声練習の声は驚くほど息のほとばしる強さを感じる声になり、ピッコロのように細かった高音域も、太さを増してしっかりしてきた。
これなら大丈夫、と思うのだが、実際の歌になると難しさがたくさん残っている。

それを感じるのがドビュッシーの「忘れられし小唄」SpleenとGreen
特に前者は低音から高音まで幅が広い。
また、重い曲なので高音域を軽いソプラノで歌ってそのまま中低音を歌うと、重たい和音との声の整合性に欠けてしまってどうも聞きづらいし、表現とちょっとそぐわなくなる。
声に合わない、ということは言えるかもしれないが、それにしても中音域の声はもうちょっとしっかり欲しい所。

結局、声区のチェンジの処理が一番大きな問題になるようである。
2点F以上の声区と、2点C以下の声区に分けると、ちょうど2点C~Fの間がポイントになる。
この領域の声をかなり気をつけて出すこと、要するになるべく2点Cから下の声の出し方をこの領域で維持することである。
また、フレーズの音域の関係で完全に上の領域に変わった声になっていても、下がる場合はなるべく下の声区に変えるようにすると良いだろう。

また中音域もまだ完全に声質が決まっているわけではなく、ハミングなどで鼻腔共鳴を付ける練習は必要だろう。
これが出来ると、喉で押さないではっきり前に響く中音域が出せるから、上の声区とのつながりも更に良くなるだろう。
これは練習の積み重ねと時が解決してくれるのは間違いない。

最後に、前回と同じく林光のソプラノとフルートのための歌曲から「道」「子供と線路」
声は前回よりも中音域が力強くなり、聞きやすいものになって表現が見えてきた。
高音もこの曲にぴったりなので、なかなか感じが良い。

「道」はなかなかロマンティックな曲だ。
「子供と線路」は社会性がある。
と、私は思う。
前者は、詩人の個人的な思い出が詰まっているし、後者は新聞の一面を見るようだし、自分の子供時代を思い出させてくれる。

いずれにしても、ふじいさんが自分の持っている引き出しの中にあるものに、この詩のイメージを持ってきて納得するべきである。
そうやって、イメージを確実にして歌って欲しい。
随所に見られる特徴的な言葉と旋律は、そういう言葉のイマジネーションの作業を経て更に活き活きとした個性的な輝きを放つだろう。
イメージだけでなく、実際に朗読を良くして欲しい。
しっかりした声で、自分のイメージをその語り口に添えて、朗読出来れば、それで完成といっても過言ではない。
それくらいこの手の曲は言葉のイメージをはっきり持っていることが大切である。

Jiulius Benedictという近代イタリアの作家によるLa capineraを持ってきてくれた。
可愛らしい明るいイタリアらしい素敵な曲である。楽しみだ。