HA

秋口には風邪で絶不調に陥ったが、このところめきめきと調子を取り戻して、今日のレッスンの声はとても良かった。
発声もコツを飲み込みだし、こちらの指示することが分かるようになり、良い声の基本が出来つるある。

身体感覚、声に関するセンスは元来ある方だが、今はそれが良い方に働いている。
何もしなくても、お腹に降りたリラックスした声が良く出せている。
特に母音をイにするととても良い。
これをきっかけに、イからアに変換する際に、響きを変えないようにすると、アでも喉の開いたとても良い響きが中低音から出せる。
中低音の声は、芯があるけど、開いた空間を感じられる声の響き、という理想的な状態。
高音に入っても、喉を締めないで(上がらない)奥行きのある声になりたい。

高音域は、2点Eくらいからの声のチェンジをどう対処するか?を大切に考えて欲しい。
そのまま喉を詰めて出さないようにくれぐれも注意。
更に喉を開くように、ということは例えば口を少し縦に、オのようにすると、喉が自然に上がらないだろう。
あるいは声を少し深く入れるように音程を上げていくような感覚。

いずれにしても、喉が上がるから上げないで開く感覚を高音に行くほど大切にすることをイメージしていれば、自ずと分かるだろうと思う。

イタリア古典歌曲集3巻から、Lungi dal caro bene
彼女の声はこの優雅な曲に良く合っている。
前半は発生練習通りの開いた良い声だったが、徐々に締まってきた。
それはブレスで上がってしまった息を深く入れなおすことが難しくなるからだろう。

そしてStar vivcinoは、前回よりも良いがなぜか?力みが感じられる。
何か息が吐ききれないような、苦しさの名残がフレーズの終わりに感じられる。
これは息をため過ぎて、ということは入れすぎていて、吐ききれていないのではないか?
そのため、お腹が硬くなっているためかもしれないが、いずれにしても不自然なので課題である。

最後にBist du bei mirを復習。
前回本番で取り上げた時よりもはるかに良い開いた声になっているが、やはり高さは否めない。
高音のDuなど、喉で押さないで、むしろ顎を良く引いて喉が上がらないように注意!
口の使い方には細心の注意を。横開きにしたくなる音域だが、絶対に横開きにしないように。
口先を開けないことで、中を開かせること、そのためには顎が前に出ないように、首をしっかりさせて置くこと。
など、高音発声上の注意を練習するのには最適な曲だろう。

TK

発声練習は地声からチェンジした声を中心に2点bくらいまで。
喉が冷えていて、しばらく歌うまで少し調子が出るのが遅かったくらい。
声は基本的に良い調子である。

いつものようにバッハのカンターターの1番から。
この曲に関しては非常に良い。
元々音楽が器楽的な味わいで、媚びない歌を歌う彼女にはピッタリの楽想である。
声質も合っているし、良い響きが聞かれるようになった。

後は全体の構成、立体感を出すために、レガートに歌うメリスマと、言葉を立てる場所とをはっきり意識すると良いだろう。
単語単位で、バッハ先生がその単語を音符の形(リズム)で修飾している様子を、はっきりその通り修飾して遊んでます、という感じを
歌で出すこと。そうすると、母音の響きも活きてくるし、リズムとしても面白さ陽気さが伝わって来る。

2曲目のBwv21のNo3のアリアは、逆に悲劇的な音楽だ。
こちらはこちらで、少しロマンティックに言葉を扱ってはいかがか?
少し子音から強調して立てる歌い方や、書いていないがマルカート気味に扱う音符を作ったりすると、悲劇的な調子が出るだろう。
しかし、何より本人がそのことを感じて歌うべきであるが。
子音は語尾の子音をもっとしっかり出すべきである。

やはり難しいのがBWV57のNo3のアリア。
単純に中低音の発声が難しい課題になっている。
響き方を少し違うイメージで捉えたほうが良さそうである。
彼女は響きを思ったよりも、口先の倍音の多い当った響きに重きを置いている感じがある。
それだと、ちょっと力むと響きが壊れて出せなくなるだろう。

逆にもっと喉を開いて、口の中を大きくして息の力を強くして太く出せるのではないか?
色々やってみたが、最後の最後にこれが上手く行きそうな感じが出ていた。
次回、もう少しこの辺をしっかり見て見たいと思う。

TT

今日は伴奏合わせ、ということで発声もやらずに始めた。
ドニゼッティのルクレツイオ・ボルジヤのロマンスから。
譜読みは出来ているが、全体的に旋律の歌い回し(フレージング)が未だ生硬い。

ドニゼッティらしいベルカントな歌唱は、CDなどでもいくらでも聴けると思うので、もっと真似てもらって良い。
煎じ詰めて言えば、歌っていることが快感になるように歌うべきであるし、音符にそのように書いてある。
例えばそれは、息が持たなくても無理やり歌ってしまいたくなるくらい、本能的に、

順番は違うが、ベッリーニのSon vergin vezzosaなどもそうである。
この曲は伴奏が大事で、カルメン風、スペイン風の勇壮さがないと、どうも乗り難い音楽である。
歌もそれに合わせて強さや、潔さみたいな感じをフレーズやリズム感で強調してほしい。

モーツアルトのIl re pastoreは、良いラインに立っている。
後は、最高音域に至るフレーズで力まないことを心がけたらしいが、力まなさ過ぎるために、結果的に喉から上だけの声になった。
喉や胸、肩などコチコチにならないように歌って欲しいが、腰やお腹周りはしっかり使うように。
ところで腰は良く使えているが、上半身が硬いと思う。
特に肩から首にかけてコチコチみたいに見える。
姿勢は大事だが、コチコチにならないように、特に肩とか胸はゆったり、を心がけると良いだろう。

練習時は、少しゆったり目のテンポにして、口をもう少し開けることで喉を開いた高音の発声にじっくり取り組んで見るというスタンスは取っているだろうか?
歌い急がないで、短いフレーズだけでも、身体を使って喉を開いて良い発声を探しているだろうか?

一番感じるのは、顎が硬く、口の開き方がゆったりしていないこと。
確かに顎が出ないように歌っているのだが、首や肩からコチコチにしているように見える。
下あごをもっと楽に大きく降ろせること、そのことで喉ももっと良く開くことが出来ると、声の違う展開が出てくるような気がする。
それは、下あごを使わないでアーティキュレーションすることにも通じる。
最後にSpring songをせっかくの伴奏者にお願いして、通した。10分以上の長丁場だが、声は歌うほど調子が出ていて、良かった。