CN

フォーレの「蝶と花」は、歌はほぼ出来上がってきたので、伴奏とテンポの確立となった。
前奏は、右手の16分音符が花開くところがルバートが勝っているので、普通にIn tempoに近い感じにしてもらった。
彼女の歌が前奏よりも重くゆったりしているのが良かったので、歌に合せて整合性があるようにお願いした。
その方が、ちょっとメランコリーで良い感じだと思ったからである。
この辺り理解しがたいか!?
明るく活発であるべき音形を、敢えてアンニュイに弾くところに、19世紀末風が出せると思う。

また、その分、3番のテンポが余計に速く感じられれて対比的であろう。
ピアノは、3番前の間奏までは、2番までのテンポで、3番の伴奏形になってから、スピードを上げたほうが良いと思う。
暗譜だが、有節歌曲なので、意味で覚えないと1~2~3で同じメロディ、リズムだから間違えやすいので歌詞の扱いにはくれぐれも注意を。

ミカエラのアリアは、レシタティーヴォは、声も充実して、言うべきことは無かった。
アリアは、前回よりゆったりしたテンポが良かった。ただ、その分歌手のブレスが所々心配であった。
これは、無理をしないで、きちっと入れるようにした。
ブレスをしないことよりも、たとえブレスが入っても、声がきちっとしている方を取ったのである。

そして、懸案だった最高音の処理は、上手い具合に間合いを取ってくれたので安心して聞ける発声になった。
楽譜どおりではないが、私の判断として良いと思う。何より間合いを取ったことが逆に表現になったので、良かったと思った。
また、他の場所の高音の声も充実したしっかりした声が上手く決まってきて、安心して聞くことが出来、音楽に集中できたから大丈夫だろう。

FA

発声練習では、いつも気になる2点C~Fの間の声のチェンジがとても滑らかに、無理なく出来ていた。喉を無理に掘らずに、また胸声区の響きのままで、喉で締めて力まない、自然なチェンジが出来ていた。

プーランクTu vois le feu du soir qui sort de sa coquilleから。
出だしの声は、喉が浅くならないように、適度に深さを保てば息の支えがしっかりして長いフレーズも苦労にならないであろう。

そして、中低音は、逆に喉を深くしないために、下顎を降ろしすぎないように。
そのことで、声が当たって芯が出てきて、声がピアノの和音の音の厚みから見えてくるようになる。
高音で前に出したければ、これも後ろに引かないで前に集めるようにすれば良いであろう。
全体に声のことさえ上手く処理できれば、問題なく歌えていると思う。
声の扱いは、一定ではないので、フレーズの中でも1点hを中心に上へのチェンジと、下の中低音の声の扱いに区別をつけておくと良いであろう。

曲はドビュッシーの「ビリティスの3つの唄」から。
1曲目「パンの笛」は、出だしの明朗で平坦な朗唱風旋律は気をつけないとピッチが低くなるので、高めに意識することと
ビブラートがあまり出ないように、軟口蓋を良く上げるように発音すると良いだろう。
概ね、綺麗に歌えているし、声に無理が無く、曲調が声にとても合っていると思う。
最後のMa mere ne croira jamais si je suis restee si longtemps a chercher ma ceinture perdue….のくだりは、不用に声が揺れないように、カンニングブレスを上手く利用して欲しい。慣れたらもっと速く語れば良いと思う。
2曲目「髪」は、低音が上手く処理出来ている。これも必然なのだろうか。
3曲目「ナイヤードの墓」譜読みは進んだ。
Le long du bois couvert de givreのフレーズ、特にLeの響きが♭にならないように注意!
この曲は後半のFになってくると、和音の響きが分厚いので、ピアノ伴奏との響きと声のバランスが難しいであろう。
声自体は、あまり高くないので、伴奏の作り方がメインになると思う。

MM

発声練習では母音をIにして、上唇を使う練習。
上唇を使うことで、響きに頭声を混ぜるように出来る。あるいは鼻腔共鳴になる、とも言えるであろう。
要するに喉で締めた響きにならないように、といえば解りやすいだろうか?
これが、なかなか効果的でやる価値はあったと思う。

本番前の、初伴奏合わせだった。
Je me souviens から。
テンポは一度通して聞いてから、少し遅めにしてもらった。
彼女の発声の安定を考えると、その方が良いかと判断した。
最初は、どうもポジションが高く、不安定で声も縮こまってしまったからである。

ブレス時、あるい歌い出しの準備で、もっと横隔膜をどんと下ろして、低く構えて出るべきであろう。
勿論、軟口蓋はよく上がって、喉は開いているべきだが。

そのためにも、少しゆったり目のテンポで出るようにしてもらった。
伴奏はついているが、いわゆるアカペラによるモチーフを歌う印象が出るのである。
そして、2回目の同じモチーフの時は、意識してルバートにして先へ先へと進むように歌うことで、
そこから初めて音楽が動き出す感じがして良いと思う。
フレーズの中で音程が下がるところは、響きの質が変わらないように、充分に注意を。

Suleikaは、絶妙なテンポだが、何度か通してポイントはつかめたと思う。
後節の音楽は、AccelとCrescを通って、Vivaceへと音楽が変わって行くが、その辺りが
こなれていない印象だった。これをどう歌いたいのか?明確に出来れば更に良いと思う。
声はこなれていて、とても良かった。

リストのO liebは、これもテンポは微妙だったが、概ね良く歌えていた。
高音も、以前のようにひっくり返ってしまわずに、保てていた。
長丁場の曲なので、一様に固定的にならずに、良い意味で抜くところ、しっかり出すところ、
発音をはっきりさせるところ、など、ポイントをつかんで、歌いこむと良いであろう。