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フォーレの「夢のあとに」「イスパーンのバラ」「月の光」
どの曲も、ソルフェージュは問題ありません。

課題は喉を開けること、あるいは開けた状態を保って歌えることです。
また、換声点を過ぎてからも、なるべく喉を上げないで、声質を保って歌えることが理想です。

喉を良く開いて歌う方法を教えました。
舌先が思ったように動かないのは、発声のせいもあるでしょう。
また、舌自体が短い傾向もあるかもしれません。

今は、なるべく口を開けて発声、発音できるようになってください。
また、口を開けるときに舌が奥に引っ込まないことが条件です。

特に換声点を超す発声では、あごを良く降ろして喉の奥が狭くないように、発音できるように。
たとえば、イスパーンのバラのサビの部分であれば、Les rosesを歌う場合に、Lesの発音で、すでにしっかり開いていなければならないことと、
その開いた状態のまま、Rosesを発音することです。

高等テクニックとしては、このRosesの場合は、口奥を開けておいて、唇で前をかぶせるように発音することで、フランス語の狭いRosesの発音になりまs。
O blancheの時のBlの二重子音発音のBの時点で音程を担保しておくことも、何度も練習しました。
子音発音じに、音程を担保しておくことで、喉がしっかりつなぎとめられる、という効果が大きいのです。

「夢のあとに」では、Dans un sommeilのSoの時点でしっかり開いていなければなりません。

ISS

7月のプログラムは、フォーレの歌曲3曲を練習しました。
「夢のあとに」「ゆりかご」「秘密」3曲とも、歌声をきれいにまとめたのには感心しました。
まだ学生さんですが、その歌唱能力とセンスはなかなかなものです。

その中、発声的に強いて言えば、高音のチェンジを少し遅らせて、高音はテノーラルに発声しても良いのではないか?ということです。
バリトンだから、1点Esでデックングしなければならない、のではなく、音楽に応じて必要な声を使う、というセンスを優先させるべきと思いました。

実際、そうやって歌ってもらった「ゆりかご」の高音は、表現に相応しいものだと思いました。

「夢のあとに」でも、1点Esにかかる冒頭のテーマのフレーズも、素直にこのEsの声を吐き出すほうが、自然な音楽になります。
少しデックングすると、重みを感じますが、どうも作り物ぽくて、好きではないです。

特に歌曲の場合は、自然さとか素直さが、大事なのではないでしょうか。

最後に練習した「秘密」では、メッザヴォーチェの出し方に言及しました。
彼の安定した中音域の発声は、声が前に出てピッチが良いものですが、それがあまりに、表現を殺いでします面があります。
この「秘密」は、誰に公言するのではなく、独り言のように歌われる、非常にナイーブな歌ですから、PやPPで歌うフレーズは、
前に出さないことと、フランス語らしい開母音の明るさが求められるのです。

たとえば、普段の生活でも、秘密めいたことを話すときにどんな声を出すでしょうか?
そういう声のイメージを、声楽の発声にも応用することが、声の表現力を高めるのではないでしょうか。

そのためには、アペルトな発声であることと、響きを前に出さないで、後ろを回すような、それこそデックングした響きが必要になります。
このためには、狭母音であっても、広めに発音することと、

曲中の楽譜に指示がない、声の強弱は必要です。
根拠は、和声進行の形に依拠します。
すなわち、緊張→弛緩という和音の使い方の箇所において、声の微妙な強弱を感じて表現できると、歌声がかなり立体的なものになるでしょう。

SNM

安定度の高い歌声で、3曲とも良く歌えてレベルが高い演奏能です。
その中で、強いて言えば、という部分を指摘して終わりました。

フォーレの「ネル」が本人は歌うのが苦しいようでした。
テンポの取り方と、歌詞の把握、いわば歌いこみが外から感じるより、難しい面があるようでした。
相当数歌いこんで、歌詞が体にしみこまないと、歌声が本当に決まらない、ブレスも決まらないということは、良くわかります。

その意味では、この曲のテンポは66は遅すぎるとしても、80前後で歌うことで、落ち着いた歌声になりそうです。

「ゆりかご」は、とても良く歌えていて、ほぼ言うことがないです。
強いていえば、子音の発音が弱いので、はっきりさせることです。
このことも、おそらくメロディの性格に依拠することではないか?と思います。
すなわち、メロディの性格が子音発音を弱めているということです。

矛盾するようですが、演奏行為の目的の少なくとも半分は、他人の耳に達して音楽が完成されるわけですから、聞こえないとすると、完成しない、と考えられないでしょうか?
そう考えると、自分のイメージとは違う行為も歌声の中でバランスしなければなりません。

その例は、たとえばアントニアのアリアでもそうですが、テーマのメロディは決して暗いメロディはありません。
むしろ、明るい歌であればこそ、悲劇的な意味が強調されて人の耳に到達するでしょう。

ST

前回に比べると、今回はチェンジ前近辺の領域の発声が、もう一つ決まりませんでした。
後で思い返してみると、口を開ける発声法を取り入れた練習が混乱を招いたかもしれません。

ドナウディのCome l’allodolettaの中間部、2点Gの発声のアタックで、喉を痛めてしまうのは、声を当てる場あるいは声を出だす場所が低いのではないでしょうか?
息を吐く意識で、声を出していないことも関係あるでしょう。

音高を意識して、息を吐く練習をしてから声を出すと、この癖が直るでしょう。
音を当てようとするために、高音発声は喉を痛めてしまうのです。
この点が、分かると簡単なことなのですが、なかなか伝えにくい面です。

発声する際に、息を吐くと自然に音程が決まる、というイメージを強く持ってください。
それだけで、喉を締めなくなるでしょう。

逆に言えば、音程を頭で意識して、息を吐く練習をしてみてください。
この曲の場合は、Passa ogniを歌詞をささやき声で息を軟口蓋にぶつけて下さい。
ただし、必ずOgniのOで、下あごをしっかり降ろすことです。

この練習をしっかりやってから、声で実際にやってみることが良いでしょう。
次回やってみたいと思います。

イタリア古典の、Intorno all’idol mioそして、Se tu della mia morteの2曲は、ほぼ問題ないと思います。